首相と芸能人の接近は悪いことか?北海道新聞の「偏向」に失笑

2020年01月12日 16:00

けさのヤフートピックスにも取り上げられていた北海道新聞の「首相、芸能人と急接近 ジャニーズ、吉本 頻繁に写真投稿 若者支持拡大狙う/距離感に疑問の声」にツイッターで言及したところ、ちょっとした反響があった。

記事の内容はタイトルの通りで、「安倍晋三首相が、大手芸能事務所のジャニーズ事務所、吉本興業と急接近している」ことを話題にし、SNSを活用したイメージ戦略を論評している。そして、「権力者と芸能人の距離感を問題視する」専門家として上智大の碓井広義教授(メディア文化論)のコメントを紹介して結んでいるという構成だ。

首相公邸でTOKIOと懇談した際の安倍首相(2018年12月、官邸サイトより)

時の政権が、大手芸能事務所の社会的影響力を利用することを批判的にとらえることは、権力ウォッチの一つの切り口としてあっても良いと思う。たとえば、吉本興業については一連の不祥事が続いた時に、クールジャパン事業との関係性が注目されたこともあった。

関連記事:「吉本が国費100億で教育進出」4月の記事に「ありえない」と急炎上(アゴラ)

しかし、道新の記事は、決定的な視点が欠落している。野党議員との距離はどうなのか?

昨年の森ゆうこ氏による院内発言を巡る免責でクローズアップされたように、野党議員とて相応の特権をもった「権力者」だ。そして、野党側のお先棒を担ぐような発信をしている芸能人もいるし、その人たちを利用する野党政治家もいるのは事実だ。

加えて実際、立憲民主党は去年の参院選で芸能人・著名人を複数名、比例区で擁立した。そのうち格闘家出身の須藤元気氏は当選し、アイドル出身の市井紗耶香氏、お笑いタレントのおしどりマコ氏は落選した。ちなみのそのおしどりマコ氏は選挙の少し前まで、道新が槍玉にあげている吉本興業に所属していた。

蓮舫氏と街頭に立つ市井紗耶香氏(ツイッターより)

そもそも、政権与党であろうが、野党であろうが、どの政治勢力を支持し、接近しようが、芸能人にとってはそれぞれの思想信条の自由だ。芸能事務所はそれぞれの経営判断の自由がある。逆にかなり多くの芸能人や芸能事務所は「政治色」をつくのを嫌って、基本的には一定の距離を置く場合が多い。

実際、私も選挙の現場で経験してきたことだが、NHKなどは選挙期間に入る前でも、その年の国政選挙に立候補する予定の現職議員とネット動画で対談した著名人を、自社の番組出演から排除する。芸能人からすれば、もともと政治マターは非常にデリケートなことなのだ。道新の記事はそうした実情についても完全に見落としている。

関連拙稿「「政治的公平性」撤廃で、著名人の党大会参加が普通の社会を

薄井教授の出てくるくだりも、随分と一方的だ。

上智大の碓井広義教授(メディア文化論)によると、芸能には歴史的に、権力者を庶民に代わって批判したり、風刺したりする機能があった。碓井教授は、その機能が失われつつあるとし(以下有識者談話)

批判や風刺は一側面にしか過ぎない。ならば戦前の李香蘭(山口淑子)はどうなのか。彼女が活躍したのは満洲の国策映画だったのではないのか。

ことさら一つの機能だけを強調する有識者と、ほかの側面を全くスルーする北海道新聞。結局は安倍政権が嫌いで嫌いで仕方なく気に食わないからというだけの「ポジション報道」ではないのか。これがもし民主党政権で、鳩山首相や左派色の強い菅首相の時代に芸能人と接近した場合も同じような報道をするのか。

私は「しなかっただろう」という疑いを持つ。いかにも「ためにする」記事、つまり「安倍政権を批判したいためだけに載せた」記事にしか見えないからだ。だから説得力を欠くのだ。

この手の「偏向」記事を書いたところでネット時代は、書いた新聞社の魂胆などあっけなく見透かされるのだ。道新は左翼紙として有名だが、沖縄の地元紙ほどではないにせよ、田舎感覚×紙媒体感覚で書かれた記事の偏向ぶりは、もはや失笑ものでしかない。

新田 哲史   アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長
読売新聞記者、PR会社を経て2013年独立。大手から中小企業、政党、政治家の広報PRプロジェクトに参画。2015年秋、アゴラ編集長に就任。著書に『蓮舫VS小池百合子、どうしてこんなに差がついた?』(ワニブックス)など。Twitter「@TetsuNitta」

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