社会のDX化を促進するスーパーシティ法

1. スーパーシティが必要とされる背景

ビッグデータ、AI技術の発展により、都市設計の根本を変える動きが起きている。中国の杭州市はアリババ系列会社と、そしてカナダのトロント市はGoogle系列会社とそれぞれ連携している。

そんな中、日本が第4次産業革命を先行し、新しい最先端のやり方で課題を解決するために「スーパーシティ」が必要とされている。

「スーパーシティ」の実装技術のイメージ(官邸サイトより:編集部)

スーパーシティという言う以上、具体像については、①移動、②物流、③支払い、④行政、⑤医療・介護、⑥教育、⑦エネルギー・水、⑧環境・ゴミ、⑨防犯、⑩防災・安全、以上のような領域を少なくとも5つ以上カバーし、生活全般にまたがることが想定されている。

2. スーパーシティの種類・法案概要

スーパーシティは、白地から未来都市を一から構築し、新たな住民を集めるグリーンフィールド型(新規開発型)、既存の都市を住民の合意を形成しながら造り変えるブラウンフィールド型(既存都市型)の2種類の取り組みがある。スーパーシティ構想については、自治体からのアイディアを募集しているが、令和2年1月14日現在だと、グリーンフィールド型が7件、ブラウンフィールド型が44件のアイディア提出を受けている。

端的に言えば、日本には技術は揃っているが実践する場がない。そこでスーパーシティ法案が必要になる。法案が目指すのは「まるごと未来都市」だ。複数分野にわたり、技術を実装することによって、社会課題の解決を試みる。

スーパーシティ法案は、従来の国家戦略特区の枠組みを基礎にし、そこにスーパーシティ用の枠組みを設定する。その特徴的なものが「住民合意」だ。また迅速かつ柔軟に域内の規制に対応できるように、規制特例を条例で設定することを可能にする。さらに、条例で対応できない規制については、特区諮問会議での議論を経て、規制を所管する省庁に勧告する措置を設けることにしている。

スーパーシティを具体化する上で避けても通れないのが、必要なインフラ整備だ。インフラ整備に対しては、国が主導し、予算、官民連携のファイナンスの手法を検討し、スーパーシティを円滑に実現できるように、必要な支援策を検討することになっている。

3. TOYOTAによる裾野市での取り組みについて

国の「スーパーシティ」法案が検討される中、トヨタは「CES2020」で静岡県裾野市に「コネクティッド・シティ」の建設計画を発表した。現在、裾野市にあるトヨタ自動車東日本株式会社の東富士工場が、2020年末に封鎖される予定だ。その跡地に、「街」を建設する。つまり、グリーンフィールド型のスーパーシティの「トヨタ版」ということになる。

このコネクティッド・シティは「ウーブンシティ」と呼ばれ、ロボット、AI、自動運転等の最先端技術を生活の中に、取り込み、検証・実証する都市となる。このトヨタの「ウーブンシティ」はトヨタが単独で建設するのではなく、他の企業や研究者の幅広い参加を期待している。

「ウーブンシティ」では、街の中の道を3つに分類している。スピードが速い車両専用の道、スピードが遅い車両と歩行者が共存する道、そして歩行者専用の道だ。

もちろん、道を走る車は完全自動運転だ。街をつくるにあたって、街に必要なインフラ(燃料電池発電等)は、全て地下に設置する。上記は、ウーブンシティの極一部に過ぎない。しかし、一部を見ただけでも、トヨタが本気で、未来都市の実証実験を行なおうとしていることが分かる。

4. 民間のおこなう実験的都市とスーパーシティの違い

民間が行う実験的都市とスーパーシティの大きな違いとして、2点挙げることが出来る。1つは「住民合意」、もう一つは政府・自治体の関与の有無だ。

民間が行う場合の実験的都市の場合、私有地で実証実験を行っていることから、法規制が大幅に外れる。そこには、スーパーシティの重要な要素の1つである「住民合意」の形成は必要とされない。

とは言え、民間が行う実験的都市のうち、カナダ・トロントではGoogle系列の会社が実験的都市の建設に取り組んでいるが、政府・自治体の関与がないことと住民の反対によって中々進展しない状況下にある。トロントの一例をみると、いかに私有地とは言え「住民合意」は重要な要素と言える。

また、政府・州政府が関与していない民間の実験的都市と政府・自治体・民間で強力な推進機関を設けるスーパーシティとでは推進力が異なる。当然ながら住民合意は迅速に得られる可能性が高い。スーパーシティにとって重要なインフラ構築においても、政府からの支援が期待できる。

スーパーシティ構想についての最終報告書では、政府・自治体が関与することによって、規制根拠等となる法令や条例を速やかに改正することが可能とある。技術の社会的実装には必要不可欠だ。

5. 社会のDX化を促進するスーパーシティ法

新技術の社会的実装によって課題解決を行っていくことは課題を抱える当事者にとって必要不可欠だが、新技術同士の連携をかつてないほど深化させることでしか抜本的な課題解決につながらなくなっている。

かつてないほどに深化させるためには、デジタルデバイドの解消と言っている暇はなく、速やかにDX化することが大前提となる。

民間企業の取り組みは確かに迅速だし、エッジの効いたアイディアによって実際の問題解決のモデルとなることもあろうが、やはり国、自治体と民間との連携によって、より包括的、抜本的な社会問題の解決につなげていきたい。前回の記事にも記載したが、その際問題となるのは都市や地方といったことではなく、問題を解決しようとする熱量であると思う。

問題解決へのひたむきさ、本気さが問われているように思う。


編集部より:この記事は、衆議院議員の鷲尾英一郎氏(新潟2区、自由民主党)の公式ブログ 2020年2月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は鷲尾英一郎の日記をご覧ください。