マルチメディア放送が遺すもの

2020年03月02日 14:00

東京マルチメディア放送、(たぶん)最後の番組審議会が麹町で開かれました。

マルチメディア放送とは、地デジが整備されてテレビ局が引っ越したアナログ周波数の跡地のうち、1~3チャンネルで使っていたVHFの低い(Low)ほうを使った新しい放送サービスで、FM東京グループが展開するものです。

放送の電波をスマホやサイネージなどマルチなデバイスに向け発射するとともに、通信用のインターネットプロトコルIPを乗せた通信・放送融合のIoTメディアです。
特定のクルマ向けの配信や自治体の防災対策など、楽しいエンタメというより「役立つ」放送の位置づけでした。

2016年のサービス開始から3年にして、事業性の判断から、サービス停止・撤退の判断となりました。
2020年3月末で終了とのこと。
番組審議会なので、経営や技術じゃなく、番組を審議する集まりなのですが、番組がなくなっちゃいます、という会議でした。

5年前に、このチャレンジに関するレポートを記しました。
「V-Lowマルチメディア放送」
http://ichiyanakamura.blogspot.com/2014/09/v-low.html

昨年、政府・規制改革会議でも、放送側からの挑戦として頭出ししました。
「通信・放送融合2.0」
http://ichiyanakamura.blogspot.com/2018/06/20.html

マルチメディア放送には高い期待を寄せてきました。
放送の電波に通信プロトコルIPを乗せて世界でも初モデルのメディアを作るという挑戦。
「情報通信法」が目指したメディア融合を初めて実装するモデルです。
それはビジネスというより、インフラを整備するもので、政府がやってもいい仕事です。

なので、長期的な視点から取り組むべきものと考えてきました。
お家の事情などでストップするのは公益の面からも残念です。
一資本が切り開くには海が広すぎたかもしれません。
とはいえ、マルチメディアの挑戦は大きな2つのレガシーを遺します。

1つは技術。
IPDCによるマルチメディア放送はIoT向けメディアを作るもので、これから花が開く技術です。
ぼくらが竹芝で特区を整備するCiPは、この方式でIoT放送局を実装する計画を立て、先月、NOTTVが使っていたV-High周波数帯の実験免許を取得しました。
V-Lowの仕組を受け継いで、進めていきたい。

2つめは、チャレンジという精神。
放送業界がネットに怯えたままで、ネットフリックスやアマゾンという黒船が大砲まで打っているのに、NHKと民放が同時配信でまだ折り合わない、海外から見れば10年遅れの状況。
新メディアを作る、という姿勢をTFMが見せたのは賞賛に値します。

今回の事業停止は残念ですが、レガシーを活かして、未来につなげていただきたい。
同じくぼくが番組審議委員を務めるBS放送Dlifeも3月末で放送停止です。
親のディズニーがFOXを買収し、世界戦略を変更、無料チャンネルを閉めることにしたものです。

一方、吉本興業はBSに進出することとし、先ごろ総務省から認定をいただいたところです。
こちらも従来にないメディア作りを目論んでおり、ぼくも協力します。
メディアの地殻変動が続きます。


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2020年3月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。

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