新型コロナ:BCG仮説と個体免疫 --- サトウ・ジュン

2020年04月18日 06:01

前の記事の補足的な分析です。補足ですが、同じ国でBCGワクチン接種を受けた人と受けていない人の差を数値で表した世界初の分析なので重要です。

さとう310/写真AC:編集部

イタリア、スペイン、ポルトガルでは、BCGワクチン政策は異なるが同じBCG デンマーク株を使用しているので、この3か国の年代別比較は面白いはずです。各国のBCGワクチン政策を振り返り、掘り下げてみましょう。

  • イタリア:一度もBCG義務化なし
  • スペイン:BCGアトラスによれば、1965年から1981年まで、新生児にBCG接種を義務化していた。しかしBCGアトラスの記述は不十分で、1965年から1976年まで、6歳から14歳までの学童もワクチン接種を受けていた*。また1956年から1965年まで、5歳から14歳までの学童の80%がワクチン接種を受けていた**
    -> 39歳から78歳までのスペイン人はBCGワクチン接種を受けている。
  • ポルトガル:BCGアトラスによれば、1965年から2017年まで、新生児にBCG接種を義務化していた。また、ポルトガルもスペインと同様の学童ワクチン接種を行なっていたと推測する***
    -> 3歳から78歳までのポルトガル人はBCGワクチン接種を受けている。

* スペイン・ムルシア州の報告書より。
The Effect of BCG Vaccination on Tuberculin Reactivity and the Booster Effect Among Hospital Employees

** Vacuna contra la tuberculosis. Su historia y controversia
ツイッター(@UNIXX)
ツイッター(@UNIXX)

*** ソースを探しています。

まず、下のグラフは人口100万人あたりの死亡者数を年代別に示したものです。すべての年代でイタリアが最も高く、ポルトガルが最も低いことがわかります。

ウイルスの到達時期による差かもしれませんが、それだけではスペインとポルトガルの違いは説明できません。BCGワクチンが効いているのかもしれません。

個体免疫への効果を分析する

私は今回の新型コロナの世界的流行を通して初めて免疫学を学んでいますが、免疫系の働き方には集団免疫と個体免疫の2つがあることを知りました。BCGワクチンはこの2つの方法で機能することができます。

ポルトガルは100万人あたりの死亡者数(BCGワクチンを接種していない80歳以上を含む)が最も少ないことがすぐにわかります。これは集団免疫効果によるものです。専門家たちはいま、BCGワクチン接種による個体免疫よりも集団免疫の効果の方が大きいのではないかと議論しているところです。

しかし私がこの年代別分析を行った目的は、ワクチン接種を受けた人と受けていない人の差、つまり個体免疫の違いを明らかにすることでした。

そこで、上のグラフを以下のように変えてみましょう。これら3つのどの国でも80歳以上のほとんどはワクチン接種を受けていないと仮定して、80歳以上の死亡者数を100とし(80+=100)、年代別の相対的な死亡者数(人口100万人あたり)を示しました。

いかがでしょう、スペインとポルトガルでは79歳以下で下がっているのがわかりますか?若い年代での違いをもっと拡大して見るために、この3か国について80+=100とし、さらにイタリアの全年代=100としてみましょう。これが3つ目のグラフです。

なんと、ワクチン接種を受けている人と受けていない人の相対的な差が見えて興味深いですね!ワクチンを接種しているのは、スペインは39歳から78歳までのほとんどの人で、ポルトガルは3歳から78歳までのほとんどの人でした。これは個体免疫の大きな証拠となり得ます!

* この分析を行った時点では、39歳以下の死亡者数はイタリア47人、スペイン37人、ポルトガル0人。これは私のビジネス分析の経験からすると統計的に有意だと思います。

でも、最初のグラフの80歳以上に注目することで、集団免疫効果の大きさがよりよく見えることは覚えておいてください。おそらく専門家なら、この分析から数値化できるのではと思います。

以上は弱毒株のBCG デンマークの場合です。強毒株のBCG 東京であれば、より大きく長く効果がみられるものと推測します。カナダは、1960年代から1970年代までBCG 東京株を使用していたとされるので、カナダとアメリカを比較するのも良いでしょう。

カナダの50歳代から70歳代までの相対的な死亡者数(100万人あたり)が少ないことは既にわかっています。しかし、アメリカは現在のところ最新の年代別データを公開していません。データが入手できて時間のあるときに、また比較を行ってみたいと思います。

本分析の出典(4月13日にアクセス):
Coronavirus Update (Live)
Population of WORLD 2019
2020 coronavirus pandemic in Italy – Wikipedia
2020 coronavirus pandemic in Spain – Wikipedia
2020 coronavirus pandemic in Portugal – Wikipedia

(4月14日追記)

アメリカが4月13日現在の年代別データを更新しました。
Provisional Death Counts for Coronavirus Disease (COVID-19) – CDC

ということで、4月13日現在のカナダの年代別データと比較してみましょう。
Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) DAILY EPIDEMIOLOGY UPDATE – Canada.ca

まずは、それぞれのBCGワクチン政策を確認してみましょう。カナダのBCGワクチン政策はかなり複雑です。そして、これは悪い情報ですが、BCGアトラスにはBCG 東京株と書かれているにもかかわらず、カナダはおそらくBCG コンノート株という弱毒株を使っていたのではないかということです。

  • アメリカ:一度もBCG義務化なし
  • カナダ:カナダのBCG政策は複雑で、おそらく州ごとに異なっている。
    • BCGアトラスからは、カナダには1960年代から1970年代まで「定期接種」のBCGワクチンプログラムがあり、またカナダはBCG 東京172株を使っていると読めた。
    • ダワールらの論文には、「カナダでのワクチン使用は1925年にまで遡るが、公的資金によるプログラムで普及したのは1948年」で「BCGワクチン(コンノート株、1948)」とある。
    • ルソーらの論文は、「カナダのケベック州では、1950年代から1970年代半ばまで、新生児と学童期の子どもにBCGワクチンが提供された」と書いている。
    • 2011年秋には、サノフィ社のBCG コンノート株の製造工場が洪水で供給不足を起こした
    • -> カナダでは、1948年から1960年代・1970年代まで定期接種のBCGワクチンプログラムが行われており、40歳から79歳までの多くのカナダ人が接種を受けていると考えられる。
    • -> カナダはサノフィ社工場の問題が起きるまではBCG コンノート株を使っていたが、その後BCG 東京株を使い始めるようになったのではないか。

この分析では、年齢別のグループに分ける際に問題が生じました。アメリカが「45歳から54歳」などの年齢グループを使うのに対し、カナダは「40歳から59歳」などを使っているからです。通常、この手の問題は単純に死亡者数を年齢別に割り振ることで解決するのですが、今回の新型コロナの場合は、死亡率は年代が上がるにつれて指数関数的に増加しています。

そこで私は年齢別人口を調べて*、5歳ごとのグループの各死亡率を推定し、各死亡数を推定してみました。これには手間がかかりました。

* Population of the U.S. by sex and age 2018 | Statista 

今回もイタリア・スペイン・ポルトガルの時と同じグラフを3つ作りました。

最初のグラフは、人口100万人あたりの死亡者数を年代別に示したものです。

2つ目のグラフは、アメリカやカナダでは80歳以上のほとんどがワクチン接種を受けていないと仮定して、80歳以上の死亡者数を100とし (80+=100)、年代別の相対的な死亡者数(人口100万人あたり)を示しています。

そして3つ目のグラフは、両国について80+=100とし、さらにアメリカの全年代=100にしたものです。カナダ人の40歳から79歳が大きく下がっているのがわかりますね!

カナダは39歳以下の死亡者数が統計的に十分ではなく、4月13日現在で4人しか死亡していません。 もしここに1人か2人死亡者が増えると、3つ目のグラフの形は大きく変わります。そうなることを決して望みませんが、確率の観点からすると、カナダの39歳以下の死亡者数は少し増えるでしょう。

* この分析を行った時点では、アメリカの39歳以下の死亡者数は139人と推定されています。

イタリアとスペインの3つ目のグラフと比較すると、BCG デンマーク株よりもBCG コンノート株の方が少し効果が大きいように見えます。この2つの株を比較できる生化学データを持っていませんが、これは私が今回の分析から得た推測です。

しかし、BCG コンノート株はBCG 東京株ほど効果があるようには見えません。私はBCGアトラスを見てカナダはBCG 東京株を使っているものと思い、カナダについて楽観していたのですが、そうではありませんでした。カナダ人は予防策を講じるべきだと思います。


編集部より:この記事はサトウ・ジュン氏のブログ「JSatoNotes」2020年4月13日の記事より和訳して転載させていただきました。快く転載を許可してくださったサトウ氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はJSatoNotesをご覧ください。

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