不安政策より希望を!新型コロナ、増殖力100分の1、真の重症化率0.4%?すでに抗体も?

2020年04月24日 06:00

新型コロナウィルスの猛威、一部の国では収束の方向も…という希望を与える報道もあります。ただ、日本では「新たに○○人の感染拡大、死者○○○人を超える」という不安を煽る報道が連日続いています。

写真AC

脅威アピールの効果と限界

これは心理学的には脅威アピール(フィア・アピール)と呼ばれる行動変容を促す技法と言えるでしょう。行政が国民に自粛を求めるには、その根拠として危機感のアピールが必要です。この技法は「家族のために」と添えられると効果が高いことも知られており(Powell,1965)、概ね効果的なプロパガンダが行われていると言えるでしょう。

ただし、脅威アピールが効果を持つのは、行動の変容で危機と不安を軽く出来るからです。いつまでも危機感と不安を煽り続けると、行動を変えたことの意義に疑問を持ちます。脅威アピールだけで、無理な行動をいつまでも続けられるわけではありません。

脅威アピールの功罪:免疫力の低下や社会不安の増長も危惧される

また、危機感と不安は大きなストレスです。ストレスホルモンも分泌され続けています。このホルモンは合理的な思考能力を阻害するばかりか、免疫力を押し下げる働きもします。新型コロナも怖いわけですが、人々の非合理的な行動が増えたり、免疫力が下がることで他の病気で亡くなる方が増えることを心理学者としては危惧しています。

実際、社会不安の予兆も見えてきました。ストレスホルモンは攻撃性を高めるホルモンでもあるのですが、「コロナ自警団」「コロナ八分」と言われる穏やかでないトラブルも報じられています(参照:プレジデントオンライン)。誰もがストレスのはけ口を求めているのかもしれません。

「程よい不安」に向けて

新型コロナウィルスのような脅威には「正しく知って、正しく怖がる」ことが必要不可欠です。現状では国民のストレスに配慮した不安の調整が必要なのかもしれません。

未知なるものはそれだけも怖いもの。とにかく「正しく知る」ことから「程よく怖がる」をはじめましょう。

実は現代的な心理療法では「不安の取説」とも言える「不安の方程式」が使われています(P.Salkovskis他)。実は不安とは情報とその解釈の関数なのです。そこで、この方程式に基づいて不安を程よく調整できそうな情報をいくつか集めてみました。脅威アピール以外に行動変容を促す施策の参考にしてもらえたら幸いです。

(なお情報は執筆現在のものです。)

安心してはいけないが、真の重症化率0.4%?増殖力インフルエンザの100分の1?

まず、重要な情報は「最強最悪な事態の可能性」です。感染症では死亡率も重要ですが、重症化率も気になるところです。誰だって苦しい思いは嫌なのですから。「軽症でも相当苦しい」という報道も多く、明確な基準や統計もないところですが、今の所は「感染すると2割くらいは重症化」と考えられているようです(参照:神奈川県衛生研究所)。

ただ、真の重症化率はずっと低い可能性を示唆する情報もあります。カリフォルニア州ロサンゼルス郡で行われた調査では実際の感染者はすでに確認された人数の28-55倍と報告されています(参照:Los Angeles County Department of Public Health)。

速報値のようなものなので誤差が大きい概算値に過ぎませんが、仮に真の感染者が50倍としたら単純計算で重症化率は0.4%の可能性もあります(高齢者のリスクはもっと高いと推定されるので過度に安心しないでほしいのですが…)。

この数字に安心しすぎてはいけません。むしろ、無症状でも感染している可能性が高いデータでもあります。「重症化リスクは“0%”ではない」ので、「自分が無症状でも他者に感染させるリスク」は心配する必要があります。

ただ、これらの情報は低ストレスで安全を確保する行動指針を検討する手がかりになるでしょう。当局が検討してくれることを願います。

なお、SARSコロナウィルスから得た知見に基づけば、ウィルスの増殖力はインフルエンザウィルスの100分の1程度と推定されています(参照:日本医事新報社)。やはり安心しすぎてはいけませんが、インフルエンザほどの感染能力はないと推定されているようです。

希望は、集団免疫と特効薬

また、次に重要な情報は「最強最悪を防ぐ手立ての有効性」、言い換えれば「希望」です。希望は不安の調整だけでなく、合理的な行動に導く原動力でもあります。

感染症に対しては「免疫力」と「(特効薬のような)有効な手立て」を持つことが希望になると言われています。後者については、期待されていたファビピラビル(商品名アビガン)の効果が報告されました(第94回日本感染症学会特別シンポジウム)。軽症・中等症では8-9割の改善が見込めるものの、重症では6割程度に留まっているとされています。今のところは特効薬…とまでは言えないようです。ただ、その薬理は概ね判明しているようです。より効果の高い薬品が開発されることでしょう。

また、「免疫力」についても期待できる情報があります。先のロサンゼルスの調査では、すでに2.8~5.6%の市民が抗体を持っていることも示唆されています。

人口の大多数が免疫を持つ状態(集団免疫)では感染症の脅威は激減します。抗体は免疫の重要な柱です(参照:中外製薬)。

今回、調査された抗体がどの程度の効力があるのかはまだ不明ですが、抗体を持つ人が密かに増えていた可能性が示唆されています。つまり、集団免疫に近づいている可能性があるのです。

実は、英国政府は当初は集団免疫の獲得を目指した施策を取りました。ただ、重症患者が一期に増えることで医療崩壊が起こるリスクを減らすために政策を転換した経緯があります。

医療崩壊なし、重症化および死亡事例なしで集団免疫を獲得できれば理想的です。なかなか理想通りには行かないものですが、多くの痛みの中で密かに人類は集団免疫に近づいているのかもしれません。

「有効な治療薬はきっとできる」、「集団免疫にきっとたどり着く」…。これらが私たちに希望を与え、ストレスを減らし、合理的な行動に導きます。脅威アピールもいいのですが、当局はこのような情報も発信して、長引く不安というストレスからも国民を守る政策を執っていただきたいと思います。

不安、ストレスとの戦いは情報戦

私たちは感染症との戦いだけでなく、不安やストレスとの戦いにも勝たなければなりません。不安やストレスとの戦いは、ある意味で情報戦です。行政やマスコミの影響力も大きいものですが、私たち個人もこのことを理解して、不安のマネジメントにつながる正しい情報を求めるべきなのかもしれません。

杉山崇

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杉山 崇
神奈川大学人間科学部教授

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