日本政治久々の奇跡?飲食店家賃問題、与野党&民間“共闘”の行方

2020年04月29日 06:01

緊急事態宣言で休業中の飲食店(編集部撮影)

数あるコロナ経済危機のなかでも、観光業と並んですでに瀬戸際を超えつつあるのが外食産業だ。3月の店舗売り上げは前年同月比で90%以上のダウンという事業者も珍しくなく、4月には緊急事態宣言発令で店舗営業が難しくなり、資金繰りなどで未曾有の苦境に陥っている。国内の外食市場は30兆円、約480万人が働く一大産業。昔から「不況に強い」とされたが、今回は未曾有の危機。壊滅すると日本経済の受けるダメージは甚大だ。

その中でこの半月あまり焦点となっているのが家賃問題だ。テナントの外食事業者にとって急場を凌ぐために家賃の減免を悲痛に訴え、政治側も緊急対策に奔走してきた。そして、きのう(4月28日)は「節目」となる新たな動きがあった。(アゴラ編集長  新田哲史)

競争から共闘へ

まず午前中に国会で、立憲民主、国民民主、社民などの野党会派と共産、維新が共同で家賃猶予法案を提出した(※国民民主HPに概要要綱法案の各PDFが掲載)。

共同法案を提出する野党各党(立憲民主サイトより)

法案では、

  • 前年比で20%以上減収した中小企業、個人事業主の家賃支払いを1年を念頭に猶予
  • オーナーが賃料を減額した場合は、国が一部を補助する

ことなどを盛り込んでいる。

目を引いたのは、日頃は対立することが多いリベラル系野党と維新の歩み寄りだ。同じ野党でも前者は政権と対決路線で選挙でも共闘、後者は政権に是々非々の第3極路線。両者が法案を共同提出するのは極めて異例だ。

リベラル系では国民民主がいち早く法案検討に動き、維新も同時期に始動。この間、ツイッターで発信力のある国民・玉木代表、維新・足立幹事長代理らが意見交換する動きもあるなど政策競争が活発化した。ただ当初は、テナントの救済案に力点が置かれがちだった。

これに「深み」を与えるきっかけとなったのが当事者である外食産業の経営者側だった。タリーズコーヒージャパン創業者の松田公太氏らの経営者が、ローンを抱えるオーナー側も家賃減免に応じやすいようにする必要を指摘(参照:松田氏アゴラ記事)。ここから「貸主側にも減税等のインセンティブを持たせないと実効性がなくなる」(維新所属議員)との問題意識が強まり、法案の中身を詰めていったようだ。

岸田氏(28日予算委、衆院ネット中継より)

他方、野党側の動きは政権与党側も刺激した。急転直下の10万一律給付決定にみられるように、安倍政権下の「政高党低」に変化の兆しもある中で、官邸や岸田政調会長が具体案の検討を本格化させている。岸田氏はこの日、予算委員会で質問に立ち、先に政府が発表した緊急経済対策の無利子・無担保融資と国による助成をハイブリッドする案を表明した。

関係者によると、政権与党側は、時間のかかる法案よりも既存の仕組みをフル活用することで、支援のスピードを最優先する思惑のようだ。先日、ひっくり返された条件付き30万円給付案を取りまとめた岸田氏としては「失地回復」にむけたリベンジの意欲もあるようだ。

民間主催の討論会に党幹部も参加

また、国会の外でも興味深い動きもあった。先述した松田公太氏らが仲間の経営者と立ち上げた「外食産業の声」委員会が自民、公明、立憲民主、国民民主、維新、共産6党の政策責任者を招いてパネルディスカッションを開催。松田氏やゴーゴーカレーグループ代表の宮森宏和氏ら経営者側も意見交換を行い、その模様はネットでライブ配信もされた。

「外食産業の声」委員会中継より

経営陣からは現下の窮状が改めて訴えられた。売り上げゼロで、人件費、店舗家賃などの固定費は継続。資金繰りのために借り入れをするにも、中小零細の事業者が大半を占める中にあっては、経営者の個人保証もつけて借り入れを継続。債務が雪だるま式に膨れる可能性もある中で、従業員の雇用を守る責任感と破産リスクを背負った状態が続く。

ゴーゴーカレーグループの宮森氏(「外食産業の声」委員会中継より)

政党側は、自民が「新型コロナ対策本部」本部長の田村憲久元厚労相、国民が玉木代表、立憲は福山幹事長など、執行部も含めた錚々たるメンバーが顔を揃えた。

党利党略を超えた一体感

田村氏は「我々も早く打開したいが、薬もワクチンもない。治療法もない」と悩ましさを吐露する一方で、「コロナが無かりせば健全運営されていたはず」(田村氏)の事業者が終息までに抱える膨大な債務の取り扱いの問題を指摘。政府系ファンドによる買取策などの打開策についても新たに示唆した。

左から:公明・岡本氏、自民・田村氏=「外食産業の声」委員会中継より

これに対して野党側は、政府側への注文はあるにはあったが、印象的だったのが、異口同音にスピードとともに「結果」重視でも一致したことだった。福山氏が「野党のメンツはどうでもいい」とまで言えば、玉木氏も「法案にこだわりはない。ギタギタに変えてもらってもいい」と強調。日頃の党利党略を超えた一体感が生まれつつある。

着席順に左から:共産・笠井氏、維新・足立氏、国民・玉木氏、立憲・福山氏=「外食産業の声」委員会中継より

それは、民間側から政治と世論を動かそうとアプローチした動きも見逃せない。参加したベンチャー系の経営者界隈では政治との接点も少ない人が多いところ、今回は、議員経験のある松田氏が「架け橋」となった。

「外食産業の声」委員会中継より

超党派プラス民間で政策づくりを進めるという奇跡の“コラボレーション”。政府与党が今後どういうスキームを取りまとめ、最終的なカタチにするのか注目される。

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