「コロナ脳」ってホントにある?確証バイアス打開の秘訣は…

2020年05月03日 06:00

新型コロナウィルスへの対策が私たちの暮らしを変えて一月以上経ちました。年末には「自粛」が流行語大賞に入るのではないかと思われるほど、連日、自粛をめぐる混乱の話題が報じられています。

緊急事態宣言下、平日昼とは思えない人気の無い銀座(編集部撮影)

「正しく怖がる」は難しい?

相対的に新型コロナウィルスそのものについての話題が少ないように思います。「正しく知って、正しく怖がる」が感染症との戦いでは重要です。実際、多くの研究や重要な知見が日々報告されています。

しかし、一般の方にはアクセスが難しいことが多いようです。正しく知るための情報が少ない中では、「正しく怖がれない人」が増えないか心配です。

コロナ脳とは?

そんな中、twitterでは「#コロナ脳」が登場しています。また、Agoraの記事でも「コロナ脳」というキーワードを使った論説を展開している執筆者もいます。

コロナ脳とは、私がtwitterで拝見した限りでは「新型コロナウィルスに関する一面的な情報を鵜呑みにしている方々の脳の状態(心理状態)」を指す言葉のようです。特に「怖がりすぎるあまり、人にも同じように怖がるように強要する人」、または「怖がることを正義として、同じように怖がらない人を成敗しようとする人」の心と脳の状態を指すように思えます。

Hades/写真AC

(執筆時点での印象に過ぎませんので、他の解釈があればご示唆ください。)

コロナ脳とは確証バイアスか?

私は、「コロナ脳」と呼ばれる脳が科学的に存在するかは慎重な立場です。ただ、今の世相では的を得た表現ではないかと思います。私が心配していた「正しく怖がれない人」の一部が、このように呼ばれる行いをしているのではないかと考えています。

ただ、「コロナ脳」と呼ばれる状態に陥る心理も理解できます。

人には「確証バイアス」と言われる心の仕組みがあります。私たちの意識は「自分の想定通りに物事が進んでいるか」を確認する仕組みとして獲得されたと脳科学者のA.Damasioは考えています。そして、心理学の知見では、「想定通りだ!」と確証できると脳内で快感をもたらす物質が分泌されます。確証は心地よいので、癖になるのです。

したがって、一面的な情報をひたすら浴び続けていると、脳がその情報を確証したがるのです。その結果、確証を妨げる事柄には拒絶的になり、時に攻撃的にもなるのです。

おそらく、「コロナ脳」と呼ばれているのはこの状態ではないかと考えられます。

子どもへの影響は?

このことがどのような影響を私たちに与えるのかは更なる考察が必要ですが、このことが子どもの心に与える影響が心配です。

緊急事態宣言で学校も幼稚園・保育園も閉鎖されたままです。「子どもがウィルスを媒介する」と心ない言葉をかける大人もいるようです。実は子どもがウィルスを媒介する可能性は相対的に低いことが報告されているのですが(もちろん、可能性はゼロではありませんが)、東京では公園の遊具まで制限されています。

筆者撮影

子どもらしくお友達と仲良くしようとすると怒鳴られ、子どもらしく遊ぶことも禁じられ、ひたすら家で過ごす…。気の毒に思うのは私だけでしょうか?

また、子どもは大人をモデリングします。確証バイアスに囚われて、人に「強要する」、誰かを「成敗する」大人たちをモデリングした子どもたちは大人になった時に同じことをするでしょう。

子どもに科学に基づくカウンセリングを

家庭に閉じ込められている子どもたちへの心の支援も必要だと思います。すでに子どものSOS相談窓口やNHKなど番組としての相談窓口は常設されているようです。

しかし、今の事態では科学的な素養のある方が子どもの感受性を尊重しながら、今の事態をどのように捉えるべきかカウンセリング(助言・提案)できる支援が必要ではないかと思います。

すでに、このような支援を始めた民間事業所(Gakken 家庭学習応援プロジェクト|合同会社メンタルヘルスケア・ネットワーク)もあるようです。

行政における子ども対策は今後の議論になるようですが、子どもは国の未来であり希望です。それを守るための投資も必要です。民間に任せるのではなく、政策として子どもの未来を守っていただければと思います。

「コロナ脳」が本当にあるのか、「コロナ脳」が良いものか悪いものか…、今後の議論や考察が必要ですが、その影響は合理的に考慮しつつ、正しく怖がった行動をしたいですね。私たちの未来、そして子どもたちの未来のために、まずは私たちから始めましょう。

杉山崇 脳心理科学者・神奈川大学教授
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杉山 崇
神奈川大学人間科学部教授

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