10万円の特別定額給付金の申請書が郵送されてくるのを待っていると、東京のような大都市だと6月中に振り込みがあるかどうかさえ疑わしい。だからすぐに申請ができるオンライン申請をしようと、多くの人がマイナンバーカードの交付申請のために区や市町村の窓口に殺到したそうだ。
新型コロナ感染対策のキーワードの3密がまさに発生する状況が生じたわけで、テレビのニュースを見ながらマイナンバーカードも罪作りなことをすると思ったが、状況を詳しく調べてみると、もっとひどいことになっていることが分かった。
そもそも、3密に耐えて首尾よくマイナンバーカードの交付申請ができたとして、プラスチックのマイナンバーカードが実際に送られてくるまでに概ね1か月かかかる。
そしてやっと手にしたマイナンバーカードを手元に置いて、スマホやタブレットで総務省のマイナポータルというサイトにアクセスし、特別給付金のオンライン申請のためのマイナポータルAPというアプリをインストールしようとすると「お使いのデバイスはこのバージョンに対応していません」という表示が出てきたりする。私の場合もそうだった。
サイトから対応機種がリストアップされている表が参照できるので、それをよく見てみると、比較的新しい型の、しかもメジャーな携帯キャリアの機種中心に対応していることが分かった。楽天モバイルなどは対応機種が少ない。
それではということで、パソコンにICカードリーダーをつないでオンライン申請をしようとすると、こちらでも壁にぶつかった。
マイナポータルにあるマイナンバーカード対応ICカードリーダー一覧表を見てみたら、私が持っているICカードリーダーは少し古いタイプなので、マイナンバーカードには使えないとのこと。一覧表には結構な数の機種がリストアップされているが、法人用のものが多く、個人で使えるタイプはそんなに多くない。
それでもその中でいくつか候補を選んで、すぐに大手家電量販店の通販サイトで買おうとしたのだが、軒並み売り切れで買えなかった。楽天やAmazonでは、あることにはあるが入荷待ちでいつ手に入るか分からなかったり、値段が高い。私はいつ入荷になるか分からないが、とりあえずメーカーの直販サイトで1台注文したが、この段階であきらめる人も多いだろう。
ネットで給付金のオンライン申請を試みた人のコメントを見てみたら、首尾よく申請ができた人もいるものの、結構みなさん苦労をされているようだ。
特に給付金のオンライン申請にはマイナンバーカードに4つある暗証番号のうち6~16桁の署名用電子証明書暗証番号を使うことが必要で、それをスマホなどで打ち間違えないように入力するのに大汗をかいた人もいた。5回以上誤入力するとロックされてしまい、区や市町村の窓口に行ってロック解除をしてもらわねばならなくなるため、現在窓口が超混雑していると聞く。
また、テレビのニュースが報じていたが、マイナンバーカードの発行を受けた後で住所が変わると、暗証番号が使えなくなるため、再度区役所等に行って新たな暗証番号を設定する必要があるそうだ。
マイナンバーカードによるオンライン申請にはさらに不便なことがある。給付金の振込先口座の確認のために口座番号とカナ氏名等がわかる通帳、キャッシュカードまたはネットバンキングの画面をアップロードする必要があるが、スマホ等を使って手続きをしている途中で、キャッシュカード等を撮影してアップロードするのにトラブったりすると焦るので、事前にパソコンに画像ファイルを取り込んでおいた方がよさそうだ。
私はICカードリーダーを入手したあかつきには、キャッシュカードをスマホで撮影し、その画像をパソコンに保存して使おうと思ったのだが、最近のキャッシュカードはクレジットカードやデビットカードと一体型のものが多く、私が持っているものもほとんどがローマ字で名前が書いてあるため、使えないのではないかと心配だ。やっとひとつ、ゆうちょ銀行の口座のキャッシュカードで、クレジット機能などのついていないシンプルなもので名前がカタカナで書いてあるものを見つけた。
こうしてみると、マイナンバーカードを使ってオンライン申請を試みて、カードにロックが掛かったり、申請の誤入力をしてトラブルよりは、時間がかかっても区役所から郵送で申請書が来るのを待つのがよさそうだ。
私はこれまでも折に触れてアゴラ誌上で、マイナポータルを使った各種申請受付やサービス提供システムが極めてユーザーフレンドリーでないことを指摘してきたが、今回のようにいわば国家の非常事態にあっても使い勝手の悪いシステムを国民に使わせて反省がないことに怒りを感じざるを得ない。特にITに不慣れな高齢者のことなどハナから考慮していないことには怒りを通り越して、心底あきれてしまう。
今回の給付金のオンライン申請で、マイナンバーカードに対するアレルギーを持つ人がまた増える気がする。