渋谷健司氏が賛同する54兆円全国民PCR検査に反対する

2020年05月11日 19:00

すごいものを見た。鹿島平和研究所「国力研究会/安全保障外交政策研究会+有志」というグループが出した、54兆円の費用が見込まれる全国民対象のPCR検査をする「国民運動」の提唱だ。

緊急提言 新型コロナ・V字回復プロジェクト「全国民に検査」を次なるフェーズの一丁目一番地に

渋谷氏(FCCJ公式YouTubeより)

「+有志」としていち早く賛同者に名を連ねている人物の中に、あの渋谷健司氏がいるのは、注目点である(WHO事務局長上級顧問の肩書はここでは使っていないが)。

この渋谷氏が賛同する「国民運動」は、「一日1000万件検査により、全国民が2週間に1回の検査を、半年後までに達成」することを目指すという壮大なものである。

これを実現するのに、54兆3850億円の費用と、3兆円の事務局経費がかかるという。キットが安くなれば費用は下がるといったよくわからない当たり前のことが書いてあるが、勝手に国民の自己負担は36~12万円で国庫負担を下げる、といった試算も書かれている。

厳しい国家財政のために補償も十分に受けられない国民の努力によって、現在の日本の新規感染者数は大きく減少してきている。なぜここで検査のために数十兆円を投入しなければならないのか。理解に苦しむ。その予算は、他のことに振り向けるべきだろう。

今ですら医療崩壊が叫ばれているのに、陽性反応を示した者全員を隔離できないこと火を見るより明らかである。しかも仮に全員隔離が済んだとしても、全世界には400万人以上の新型コロナウイルス感染者がいるのである。どれだけ検査を繰り返しても、感染者が再び現れることは必至である。したがって、54兆円を要する全国民検査を、毎年やらないと安心できない、という状況が生まれるだけだ。

「長期戦」に入っていることを繰り返し説明している日本政府、専門家会議、大阪府、そして緊急事態宣言下で苦闘し続けている国民の努力を真っ向から否定し、毎年毎年54兆円を使えば解決できる、という対案を出すのは、非現実的であるばかりでなく、有害であると思う。

渋谷健司氏が、テレビ・雑誌その他の様々な媒体を通じて、様々な肩書を用いて、日本では数週間前から感染爆発が起こっている、といったことを主張し続けてきたことは知っている。だが、そうだとすれば、渋谷氏は、自ら率先して54兆円プロジェクトにかかわることを画策する前に、自分の主張を学術的に裏付ける根拠を示すべきだ。

「専門家」が根拠不明な主張であっても、巧みに肩書とマスコミを使い分けて、日本国民を恐怖のどん底に落とし込む国民運動を展開しようとしてきた挙句に、自ら率先して巨額予算のプロジェクトの立ち上げを推進するという仕組みは、非常に怪しい雰囲気をもたらす。非常に良くない。これでは国民は不信感しか持てない。

少なくとも、渋谷健司氏が、このプロジェクトに限らず、PCR検査拡大に関わる一切のアドバイザー契約その他の報酬や研究費を伴う資金活動に関わらないことを、一人の納税者として、強く関係各省庁団体に要請する。

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篠田 英朗
東京外国語大学総合国際学研究院教授

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