今週のつぶやき:なんだか変なレナウンの倒産劇

岡本 裕明

緊急事態宣言が39の県で解除になりました。一方、世界では国境封鎖の解除への議論が水面下で進んでいますが、世の動きからは第一弾としてビジネスなど目的を絞った移動に限り、渡航前のPCR検査などで陰性である証明をもって入国するという流れになる気がします。その場合、どうやってそれに対応するか、とてつもない数の即時検査対応が必要になります。しかもそれだって一時的対応でいつかは不必要になるものでしょうが、過渡期というのはいつの時代でもどんな問題でもなかなか難しい判断と作業を求められます。

では今週のつぶやきをお送りします。

決算悲喜こもごも

日米の1-3月の決算発表の山場もほぼ過ぎました。うまくしのいだ会社もあれば大きな不安と今期業績予定を未定とするところも数多く出る等様々でした。これを受けての日米株式市場も日本は日経平均2万円を、ダウは24000ドルを挟んだ小動きとなりました。決算材料が終わるのでこの後もしばらく材料待ちになるかと思います。

写真AC

基本的には緩和策とその流れに乗った緩やかな上向きを予想していますが、一部では第二波への恐怖も見られます。世の中、常に最良と最悪の世界を見ながら予想しうるシナリオを自分なりに組み立てるわけですが、概ね、悪いニュースに強く反応し、良いニュースには感性が鈍くなるのは人間の性であります。

ただ、ビジネスをやる人間は悪いといわれて引きこもっているわけにはいかないのであらゆる生き残りの対策と戦略を立て続けています。悪いニュースがあるならそのように悪くならないようにするのが賢い経営者であり、特に欧米企業にはパブリックや株主、従業員とのコミュニケーションを通じて鍛錬された操縦術を持っているところも多いように感じます。

2-3カ月間、マグマのように溜まっていた経済活動に対する期待は通常は巨大な潜在需要になるはずで、初めは疑心暗鬼でそろそろとスタートし、その後、一気に加勢します。どこにそんな金があるのだ、と言われるかもしれませんが、アメリカの失業率は14.7%、今後これが更に悪化してもせいぜい17-20%程度と考えれば5人に1人が失業者とするのか、5人に4人は失業していないと考えるのか、見える絵図は全く違うと思います。

雇用統計の平均賃金が前月に比べ急上昇しているのは安い賃金の人がレイオフされているからで高い給与の人は雇用されていると考えれば仮にコロナ前の70%レベルの消費でもインパクトは大きいとみています。

なんだか変なレナウンの倒産劇

アパレルの名門、レナウンは90年代には世界でも有数のアウターファッション会社として知らぬ者はなかったのですが、中国の山東如意科技集団に過半数の株式を所有され、近年はその名を耳にすることもあまりありませんでした。そんな中での倒産ですが、私が何か変だ、と思うのは親会社の山東如意がわざと潰したのではないか、という気がするのです。

レナウン本社が入る江東区の東京ファッションタウンビル(Wikipedia)

レナウンには北畑稔氏が会長として長く君臨、山東如意の邱亜夫董事長とのコミュニケーションは問題ないとされていたのに今年3月26日の株主総会で北畑氏と当時の社長の神保佳幸氏を突然、解任します。多分、山東如意側はある計画を考え、その実行をするには北畑氏が邪魔だったのではないでしょうか?倒産はその株主総会からひと月半後、コロナという理由を背景に見事なタイミングでした。

もともとは山東如意のグループ会社からの売り掛け金が回収できなかったことがレナウンの倒産の引き金です。そして今回、倒産に導いたのはレナウン エージェンシーという子会社が親会社に対する債権者として東京地裁に申請しています。非常に異例だと思います。

もう一つ不思議だと思うのは倒産を受けて「今後1カ月をめどにスポンサーを見つける」という発言です。コロナのこの時期に普通で考えれば1カ月で最良条件のスポンサーが集まるという自信は倒産した会社の口から出るものではありません。山東如意側の都合だったような気がしてなりません。だとすれば恐ろしや。

検察官定年延長問題

個人的に、なぜこの問題が今これほど熱い戦いになるのかいまだによくわかりません。公正な意味でわかる方がいればむしろ教えてもらいたいと思います。もともとは一人のツィッターからスタートしたものが芸能人を含む多くの人がリツィートし、朝日新聞がそれを大々的に報じ話題になったのが直接的引き金。一方、伏線は1月の黒川弘務 東京高検検事長の定年延長を閣議決定し、氏の検事総長への就任が可能になるようにしたことへの不満が各方面から噴出したことではないかと思います。

安倍首相(官邸HP)黒川検事長(東京高検HP)

もともと国家公務員の定年については65歳になることで決定しており、今回の検察官定年延長もその枠組みだと理解しています。しかしながら「63歳に達した幹部が役職を外れる役職定年制には特例を設け、内閣・法相の判断で役職を最長3年延長できるとする」という部分につき人事が恣意的になるのではないかということが多くの反対意見ではないかと思います。

正直に伺いますが、恣意的な人事とは何でしょうか?世の中、恣意のない人事などあり得ないわけで時の政権が評価する方を任用するのは世の当たり前であります。アメリカのFRB議長だって前任のイエレン氏は非常に有能でしたが民主党時代に選出されたのでパウエル氏に切り替えました。日銀総裁だって白川氏から黒田氏に代わっているのも同じことです。

一方、FRBにしろ日銀にしろ政権からは独立していることになっています。そこには阿吽の呼吸があるのですが、それを忖度という言葉で片づけるのか、一体感というのかでもずいぶん違うと思います。そもそも、どこか外から採用するわけではなく内部にいた方の評価の問題であって私には今更何を?であってこれほど騒ぐイシューには思えないのです。

後記

ウェビナーという言葉はコロナで一気に知られるようになった新語でしょう。ウェブとセミナーの組み合わせ造語ですが、逆に企業などが無料ウェビナーを様々なところでやっているので普段入り込めないようなセミナーにも行けるという圧倒的お得感があります。そんな私は金曜日だけでウェビナーが3つ。最後は大阪のセミナーで当地時間夜の9時から10時半までと長丁場ですが、新しい時間の過ごし方発見です。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年5月16日の記事より転載させていただきました。