政府・知財本部のクールジャパンWG、コンテンツWG、構想委員会、3会合が立て続けにウェブで開催されました。
民間の委員で3つとも関与するのはぼくだけで、クローズドな会議ですが、コロナ非常事態下でのエンタメ対策はとても重要につき、可能な範囲で共有します。
このうちコンテンツWGは新たにスタートした組織。
かつて知財委員会はコンテンツと産業財産権を分けて議論していたのですが、AI+データが主要課題となり、現行の構想委員会に一本化。
でもコンテンツは独自領域が存在するのでWGを立てて深堀りします。ぼくが座長を務めます。
3会合でぼくがまず強調したのはライブ・エンタメの支援策です。
緊急経済対策で食・観光と並びコンテンツはコロナの直撃を受けた領域として、寄附金控除などの施策が盛り込まれています。
が、ライブハウスやプロモーターなど中小の事業者はバタバタと倒産していくでしょう。
来年の五輪を見据えても、それまでにかなりライブ文化は壊れると考えます。
平時の経済対策ではこの文化を支えることはムリ。
文化政策として、これまでにない措置を考える必要があります。まず止血せねば。
クールジャパン対策の短期措置としてコロナ対策が書かれています。
コンテンツ政策やクールジャパン政策は当面、この直面するコロナ危機に集中すべき。
その他の全ての政策はアフターコロナとして後で考えればよい。
コロナを乗り越えられなければアフターコロナもありません。
危機感を持つ有志が外食・エンタメ・ホテルの3分野に関し緊急のステイトメントをまとめています。
1.優良コンテンツの再生・再成長支援、2.新しいビジネスモデルの創造、3.デジタルシフトの加速、4.ラグジュアリートラベル開発の準備の4提言です。追って公表されるでしょう。
その提言でぼくはテクノロジーのことを強調しました。
コロナ後のエンタメはこれまでのエンタメとは違う形になるでしょう。インバウンドへの期待も限界があるかもしれません。
ただ、テクノロジーはこれまで以上に使われるでしょう。
5GやVRでのライブ、ブロックチェーンでの著作権管理などテクノロジーを利用する環境・基盤の整備が急がれます。
その点、コンテンツ業界は中小が多く財政基盤が弱い。テクノロジーの導入を促進する支援措置が求められます。
ただ、国の施策に頼るのも限界があるでしょう。民ができることも並行して動かねば。
例えば民間の資金を募って基金を作り、この分野に使う、国はその税制措置を施す、といった知恵が必要だと考えます。
知財計画のフォローアップについて3点補足します。
1)海賊版対策・著作権法
リーチサイト対策・侵害コンテンツダウンロード違法化を内容とする著作権法改正が国会提出に至りました。成立を期す。海賊版対策のボールは民間に投げられます。
2)教育情報化
教育の情報化は教材コンテンツのデジタル化を含め、知財計画2010に方針が記載されて以来10年、長年の課題でした。それが昨年末の補正予算と、今回のコロナ対策で一気に解決します。政府・与党関係者の大変な努力によるもので、高く評価します。
オンライン授業の著作権処理も無許諾とする措置が始動します。これは権利者団体SARTRASが本年度の補償金をタダで認可申請という驚きの対応をするため実現するもの。権利者の姿勢も称賛したい。ただ、来年度以降の補償金をどう処理するかは政策問題として残る。早期に解決を図ってもらいたい。
3) eスポーツ
経産省+JeSUの検討会、座長を務めました。
現在の市場を5年後に16倍にする目標を立てました。
それに向け産官学それぞれに対する施策を提言しました。
特に、大学、高校などのコミュニティを作って教育研究を進めろという学に対する宿題も頂いたので、アクションを起こしています。
この方向で知財計画2020のとりまとめに向かうのですが、今回は緊急事態下での策定となります。
短期的な止血を目指す処置と、長期的なアフターコロナの戦略とを両にらみする。そして後者は2020計画策定後もしばし議論を続けることになりそうです。
編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2020年5月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。