西浦モデルの検証⑫ いつまで当たらない予言を出し続けるのか?

2020年05月21日 06:01

西浦氏(FCCJ公式YouTubeより)

5月19日は、4月7日に緊急事態宣言が発出されてから、6週間がたったところだった。そこでこれまでの大きなトレンドをまとめてみたい。全国の各週の1週間の新規感染者数と、それを前の週の新規感染者数と比較したときの増加率である。

5月13~19日:          358人: 0.54倍

5月6~12日:            662人: 0.44倍

4月29日~5月5日: 1,497人: 0.63倍

4月22日~28日:    2,345人: 0.69倍

4月15日~21日:      3,386人: 0.89倍

4月8日~14日:        3,796人: 1.84倍

4月1日~7日:       2.061人: 2.17倍

3月25日~31日:     947人: 3.08倍

国際的な水準にてらして、劇的な減少だと言っていい。1週間の新規感染者数は、3月中旬の水準になった。次に東京都を見てみよう。

5月13~19日:          83人: 0.41倍

5月6~12日:          200人: 0.30倍

4月29日~5月5日: 648人: 0.85倍

4月22日~28日:    760人: 0.76倍

4月15日~21日:    996人: 0.85倍

4月8日~14日:    1,167人: 1.69倍

4月1日~7日:     688人: 1.93倍

3月25日~31日:  355人: 1.95倍

これもやはり劇的な減少である。東京都は緊急事態宣言の効果が全国平均よりも4月中は鈍かったが、5月に入ってから巻き返した。東京では、平日よりもゴールデンウィーク連休中により大きな移動の減少が図られたのだと思われる。1週間の新規感染者数が83名というのは、小池都知事が最初の自粛要請を行う前の3月中旬の水準である。

「大阪モデル」で「日本モデル」を牽引している大阪府も見てみよう。

5月13~19日:       24人: 0.37倍

5月6~12日:         64人: 0.48倍

4月29日~5月5日: 133人: 0.65倍

4月22日~28日:   204人: 0.44倍

4月15日~21日:     455人: 1.10倍

4月8日~14日:       413人: 1.74倍

4月1日~7日:       237人: 2.32倍

3月25日~31日:   102人: 3.4倍

劇的な減少であり、1週間の新規感染者数は、やはり3月中旬の水準になっている。

世界的にも劇的。新規感染者減少、3つの背景?

これまでずっと指摘しているように、増加率のピークは3月下旬で、4月に入ってからは増加率の鈍化が始まり、4月中旬以降は減少に転じた。そして今も減少率は加速する一方である。この結果、新規感染者数は、大幅増加が見られる前の3月中旬の水準に戻った。3月下旬から4月中旬にかけての増加率の高まりを、その後の1か月の減少で元に戻したのである。欧米の「厳しいロックダウン」でも、これだけの劇的な減少を示した事例は珍しい。

4月に入ってすぐに増加率の鈍化が始まっている背景として考えられるのは、第一に、3月中旬以降に段階的に導入されて入国制限措置があるだろう。これによって国外からウイルスが持ち込まれるルートが遮断された。

第二に、3月の三連休の前後で大阪と東京で移動・外出自粛要請が出されたことによって、すでに3月下旬から人の移動の減少が始まっていたことは指摘しておきたい。

加えて第三に、3月下旬以降に、今は常識となった「三密の回避」などの行動変容の意識改革が、本格的に国民に広がったことも、私には看過できない。今は「三密の回避」があまりにも常識化しているので忘れられているが、この一大行動変容原則が、社会に浸透し始めたのは、3月19日の専門家会議「状況分析・提言」以降であった。

「密閉・密集・密接」の回避は、「日本モデル」の成功を導くか

もちろん4月中旬以降の劇的な減少を見れば、4月7日以降の緊急事態宣言にも相当な追加的な効果があったと考えていいだろう。緊急事態宣言の効果は2週間目以降にしか効果が出ないはずだと言う人もいるが、実はほとんどの発症者は、感染から5日程度で発症すると言われている。4月中旬からの新規感染者数の劇的な減少に、緊急事態宣言の効果が含まれていると考えるのが自然だろう。

西浦氏は「確信犯」ではないのか

この素晴らしい国民の努力に対して、「期待したほどではない」と言い放った人物がいる。「8割おじさん」西浦博教授である。

西浦モデルの検証⑧ 西浦教授は専門家会議から撤退せよ

西浦教授は、「42万人死ぬ」で有名だが、「人と人との接触を8割削減して一カ月で収束」命令を国民に発していた人物でもある。その西浦教授からすれば、世界でも類例を見ないような減少でも、期待外れなものでしかない。

西浦教授は、現実の他の事例と日本の事例を比較するなどということは、決してしない。常に自分が作成した抽象的な数理モデルとだけ現実を比較し、現実が数理モデル通りに動いていないと、期待外れだ、と言ってのけるのである。

池田信夫氏は、「『42万人死ぬ』シミュレーションはどこが間違っていたのか」と問いかけた。

他方、私は「西浦教授は国民を騙したのか?」と問い、次のように書いた。

最近になって西浦教授が「間違い」を認めるようになったと言う人もいるが、私はそうは思わない。国際政治学者の私が4月10日の時点ですでに自信を持ってはっきりと「増加率の鈍化が見られる」と書けたのだから、私以上に数字を追いかけていたはずの西浦教授が、そのことに気づいていなかったはずはない。

西浦教授は、全てを知りながら、ただ国民を脅かすという政治的意図を持って「42万人死ぬ!」をやっていた、と考えざるを得ない。徹底した国民の自粛行動を引き出して、収束効果の増加を果たした後、最後の一人をクラスター班で撲滅させる、という願望にもとづいた行動だろう。要は、正義感にもとづいて、あるいは野心にもとづいて、国民を騙したのである。

(出典:西浦モデルの検証⑪ 西浦教授は国民を騙したのか?

確信犯として動いている西浦教授は、現状に満足していない。さらに一層の「人と人との削減」を求めて、当たるはずのない予言を出し続けている。全ては、どこまでも人々を脅かすためである。

“追っかけファン”と“カリスマ熟女キラー”の迷コンビ

5月15日、東京都新型コロナウイルス感染症対策最新情報に小池都知事と出演した西浦教授は、6月1日に緊急事態宣言が解除され、「元の生活に戻ったら」、その2週間後から感染者数が激増し始め、7月10日頃には一日200人の新規感染者数を超え、さらに指数関数的に激増し続けると、断言口調で、予言した。

小池都知事は、西浦教授の追っかけファンのようになっている。そのため、西浦教授が、カリスマ熟女キラーのようだ。しかし発言内容に中身がない。小学生のお絵かきのレベルだ。

かつて西浦教授は、何もしないと4月1日に1,000人を超えた東京都の累積感染者数は、一か月後には8万人になる、と予言していた。「期待外れ」とはいえ、緊急事態宣言で、ようやく5,000人まで抑え込んだということのようだが、最初から8万人になるというモデルが奇妙なものだったのは明らかだ。

そもそも西浦教授の予言で、今まで当たったものはない。結局、人を脅かすことが目的で予言者のように熟女の前で振る舞っているだけなので、最初から予測をするつもりなどなかった、というのが真相であるとしか思えない。

西浦教授は、自分の予言がどうして当たらなかったのか、といった分析は、一切しない。脅かすことだけが目的の予言だったからだろう。最初から真面目な予測を試みるつもりなどないので、後で反省したり分析したりすることもない。

さすがに今は、7月半ばに東京都に8万人の感染者が生まれる、と言うのは控えるようだ(なぜなのか理由は説明がないので不明だが)。そこで、「元の生活に戻ったら」3月から4月半ばの新規感染者の動きが再現される、と予言することにしたらしい。しかしこれでは、「同じ形の山をもう一つ書いてみました」と言っているだけの話なので、小学生でもできる作業であり、大学教授の「専門家」がわざわざ東京都知事に講釈してみせるような話ではない。

右側の赤い山が「何もしない場合」、緑が「接触10%減」、紫が「同30%減」(東京動画より)

西浦教授は、東京都知事と都民に対して、「元の生活戻ったら」という表現を、「タイムマシンに乗って3月1日に戻ったら、3月1日以降の生活が繰り返される」といった意味のないことを言うために用いている。

しかし、緊急事態宣言解除日が、「タイムマシンに乗って3月1日に戻る」こととは全然違うことは、自明である。入出国規制が緊急事態宣言とセットで撤廃されるという話は聞こえてこない。「3密の回避」の浸透をはじめとする社会意識の度合いも全然違う。「タイムマシンに乗って3月1日に戻ったら、3月1日以降の生活が繰り返されるので、もう一つ同じ形の山を書いてみました」と、感染症数理モデルの専門家が熟女に講釈して見せることに、いったい何の意味があるのか?意味不明だ。

情緒的かつ煽動的な東京 VS ロジカルな大阪

NHKニュースより

吉村大阪府知事の「大阪モデル」は、西浦教授のモデルと決別し、ロジカルな路線を進んでいる。

西浦モデル検証⑩「大阪モデル」がロジカルなプロセス管理

他方、西浦=小池べったりコンビは、徹底して情緒的かつ扇動的だ。自分たちの意地と感情にもとづいて1,400万人の都民の生活を動かそうとする。ところが、後で責任をとるつもりは、一切ない。研究者でありながら、分析は全くせず、ただひたすら予言、予言、予言、予言、予言と、ひたすら当たらない予言だけを語り続けている。

何度も書いていることだが、安倍首相の感染症対策本部も、尾身茂氏の専門家会議も、「長期戦」を見据えた国民の行動変容を重視している。大阪府が、東京都に先行して移行段階に入ったのは、「長期戦」を見据えた行動変容を訴えているがゆえにだ。

ところが西浦教授は、このような社会の動きに、真っ向から挑戦する。東京都知事とともに、「三密の回避なんて甘すぎる、とにかくさらにいっそうの人と人との接触の削減に努めてください!」と訴え続ける。

5月19、20日の東京都の新規感染者数は5人ずつである。人口約1,400万人の都民がいて、たったの5人ずつである。この状況で、なお西浦教授・小池都知事べったりコンビは、「気を緩めてはいけない!さらにいっそうの人と人との接触の削減に努めてください!」と訴え続け、そうでないと恐ろしいことが起こるのです!と必死で恐怖心を煽り続ける。

本当にそれでいいのか?本当に「専門家」の肩書を与えられた者とは、何を言っても責任を取る必要がなく、しかも後で思い出して検証したりする必要もない特権的地位を持つ者のことなのか?

私は、むしろ一連のコロナ危機における「専門家」の発言と行動は、徹底して継続的に、検証し続けていかなければならないはずだ、と考えている。

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篠田 英朗
東京外国語大学総合国際学研究院教授

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