検察庁法改正が見送られた「最後の一突き」は、週刊文春だった…?

黒川検事長(東京高等検察庁ホームページより)

こんにちは、音喜多駿(参議院議員 / 東京都選出)です。

昨日、週刊文春が渦中の人である黒川検事長の「賭け麻雀疑惑」を報じ、一緒に雀卓を囲んでいた朝日新聞記者が早々に事実を認めた(麻雀部分に関しては)ことから、にわかに大きな事案になっています。

黒川検事長 賭けマージャン報道「事実関係承知せず」官房長官 | NHKニュース

検察庁法改正案も見送りになり、黒川検事長をそのまま残せるのか・残したままで秋に法案が採決できるのかが議論されていた渦中だっただけに、

「政府与党側が『損切り』するために、敢えてリークしたのでは…?」

と一瞬思いましたが、時系列を考えると全然そんなことはなく、むしろなぜ総理・官邸が今週の法案採決を見送ったのかが見えてきました。

私の豊富な文春経験によると(自慢することではない)、週刊文春が記事にする場合は

週末の間に取材をかける(かけられる)

取材に対する返事の締切は、月曜日か火曜日の朝イチまで

火曜日に原稿を執筆・完成

水曜日に早刷りが出回り、ネットニュースに流れる

という流れを辿ります。

それなりの規模のメディアになれば、名誉毀損で訴訟される対策も含めて、必ず対象には取材をして回答や反応をもらってから記事化を進めるので、その時点で「何かが起こる」ことは相手に伝わります。

実際、記事によると黒川検事長に文春記者が突撃取材したのは先週日曜日(17日)のようです。週刊誌の取材を受けた黒川検事長は、さすがにしかるべき関係者にすぐ相談したことでしょう。

そして、政府与党内で法案採決見送りの声が急に大きく聞こえてきたのも同日から。翌18日の朝刊で、読売新聞が「採決見送り」をスクープ。

…もし総理・政府与党が強行採決に突き進んでいたとしたら。

武田大臣不信任案を19日に処理し、委員会での採決は本日20日か21日になっていたはずだと見込まれています。

それはつまり、週刊文春の本スクープが出回るのとドンピシャのタイミングです。

仮にそうなっていたとしたら、とてもじゃないですが押し切れるような雰囲気にはもっていけず、むしろ収拾がつかない最悪の状態に突入していたかもしれません。

確かに世論の高まりはすごかった。しかし、それだけで総理官邸・政府与党が途中まで強気だった採決を突然見送ったことは腑に落ちない。

こうした中で飛び出たスクープを時系列で考えると、なんと週刊文春の取材が最後のトドメになっていたことが推察されるわけです。

もちろん、法に触れる行為をしかるべき立場の人間がしていたとすれば論外ですし、こんな時期にスキを見せた方も悪い。

しかしそれでもなお、一発の週刊誌報道が重要法案の一つと、「余人を持って代えがたい」とまで評価された検事長を葬り去るのだとしたら…背筋がゾッとするような恐怖を感じるのでした。

まずは本日以降、黒川検事長本人としかるべき立場の人々からの説明を待ちたいと思います。

それでは、また明日。


編集部より:この記事は、参議院議員、音喜多駿氏(東京選挙区、日本維新の会)のブログ2020年5月21日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は音喜多駿ブログをご覧ください。