『トヨトミの逆襲』自動車業界の激しい変化を痛感

井上 貴至

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『トヨトミの逆襲』、午前3時過ぎまで一気呵成に読んだ。

小説の形をとっているが、99%実話。
トヨタ自動車をベースにしていることは、すぐにわかる。

トヨトミ自動車(トヨタ自動車)が、なぜ、この時期にワールドビジョン(ソフトバンク)と業務提携したのか?なぜ、ワールドビジョン(ソフトバンク)の方が出資比率が高かったのか?なぜ、グーゴル(グーグル)ではなかったのか?

ということについても、老人ホームにいる武田剛平(奥田碩 元トヨタ自動車社長)の分析が秀逸。

デジュール・スタンダード(工業製品などにおいて公的機関が製造方法などを定めた規格)の実態を説明しながら、米中貿易戦争の間で板挟みになることを避けるために、双方にパイプを持つ宋(孫正義)に頼ったのではないかという。

また、90歳を過ぎた豊臣新太郎(豊田章一郎)が、息子・豊臣統一(豊田章男)に語る言葉も迫力満点。

おまえには人を見る目がない。徹底的に、ない。」「すべて自分でやるか。もしくはすべて任せるかだ。中途半端に口を出すから部下が勝手に気を回す。忖度人事が横行すれば組織は傾くぞ。」

「リーダーシップ、いや、あえて言う、独裁には技量と才覚がいる。おまえにはそれはない。耳に痛い意見を受け入れろ。本当に重用すべきはそういう人間だ。

トヨトミのことが頭を離れたことは一日としてない。豊臣家に生まれた以上、人生はトヨトミ自動車とともにある。それ以外の人生はありえん。

前作、『トヨトミの野望』は数十年の内容をまとめているが、CASE(Connected(コネクティッド)、Autonomous/Automated(自動化)、Shared(シェアリング)、Electric(電動化))を取り上げた本作はわずか数年。自動車業界の変化の激しさを感じる。

本作の出版後わずか数か月の間にも、裾野市のウーブン・シティ、NTTグループとの業務資本提携、新型コロナウイルス感染症など大きな変化がある。

本作は、2022年に、トヨトミ自動車が、十分な走行距離を持ち、安価な電気自動車を発売し、豊臣社長が技術端の照市副社長に社長職を譲るという予想(希望)で終わっているが、どうなるだろうか。