小・中学校におけるオンライン授業の現状とその後の展望

2020年05月27日 06:00

コロナ禍で休校が余儀なくされる中、オンライン授業が注目されている。

4月7日に萩生田文部科学大臣は、全国一律でICT環境整備を行う「GIGAスクール構想」を早期実現するための支援などを積極的に推進すると表明した。

記者会見する萩生田光一文部科学大臣(4月7日、文科省YouTubeより)

しかし各自治体のオンライン授業の環境整備の進捗は芳しくない。

まずは学校・家庭の現場における現状について、まとめる。

現状(ハード)

小・中学生の各個人がランドセル、体育着のようにICT環境を所持することが望ましいが、簡単にはいかない。

ゲーム依存、SNSによるいじめなどICTに触れさせたくない家庭もあれば、日常的に活用する家庭もあり、ICT環境は家庭によって全く異なる。

自治体としてはオンライン授業を始めたいものの、各児童・生徒のICT環境を一定以上にする必要があるが、予算的にも容易に提供できるわけではない。

また家庭にICT環境があったとしても、テレワークが当たり前になる時代において、家族共有の端末1台では親が仕事、兄弟が他のクラスの授業のために使うとなれば、端末が足りないため、1人1台とする必要がある。

※画像はイメージです(Hades/写真AC)

オンライン授業のスタート地点に立つためにはまず各児童・生徒・先生に半強制的に「端末」「通信環境」を提供する必要である。

現状(ソフト)

オンライン授業ができる環境が整ったとしても、学校サイドに授業をするためのコンテンツがあるのかという課題が出てくる。

教科書・教材のデジタル化は進んでいるもの、すべてを今年度中に間に合わせることはできないため、オンライン化できたとしても紙の教科書・教材を使った授業という形にならざるを得ない。

AIを活用した生徒個人に適応したドリルの開発が進められているが、まだ実証段階である。

教育指導要領およびそれに伴う予算がなければ、教員の努力次第となり、クラスおよび学校単位で差が生まれる。

学校の先生は生徒を目の前で指導することには長けているが、オンライン授業については別のプロフェッショナルが存在する。

オンライン授業においてはこれまで大学受験予備校のサテライト授業などがあるが、人気講師は受講者数が多く、そうでなければ最悪、講座はなくなる。

オンライン授業においても人気講師が現れ、担任の先生の仕事はオンライン授業のサポート、メンタルケアくらいになる可能性さえある。

これまでの学校の概念を考え直さなければならない。

今後の展望としては前述したGIGAスクール構想とオンライン授業を並行して考えていくことが必要である。

GIGAスクール構想

政府は「GIGAスクール構想」を打ち出している。(GIGA:Global and Innovation Gateway for All)

GIGAスクール構想は2023年度までに義務教育段階にある小学1年生から中学3年生の児童生徒向け学習用端末を1人1台導入することを目標にしていたが、前述の通り、4月7日、文部科学大臣は新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言を受け、GIGAスクール構想の早期実現について言及した。

児童生徒1人1台コンピュータの実現に向けて、各自治体に1台あたり4.5万円の補助、通信ネットワークについても整備する予定である。

後述するがプログラミング、プレゼンテーションを可能とするためにはタブレットだけではなくキーボードが必要になる。

Bluetoothキーボードではクラスで混線する可能性があるため、有線もしくはタブレットPCでなければならない。

しかし全国的に端末が必要となり、その生産は追いつかず、年度内の全児童生徒への提供は困難だと見込まれている。

GIGAスクール構想の前倒しは、コロナ禍で必要とされるオンライン授業を実施することも可能であるが、目的はさらに先にある。

その目的を説明する前に今後、子どもたちが晒される世界について触れる。

ICT化による恐怖の未来

シンギュラリティ(技術的特異点)という言葉が流行し久しいがその考えは浸透している。

シンギュラリティとは、AIなどのICTが、人間より賢い知能を生み出す時点を指し、2045年と予測されている。

米国の数学者ヴァーナー・ヴィンジにより提唱され、人工知能研究の権威レイ・カーツワイル博士によって広められた概念である。

AI、ロボットなどのICTの進展に伴い、機械ができることは人間からその仕事を奪い取ってく。

駅の自動改札機は代表的なものであり、当時、有人改札にいた切符を切る駅員は仕事を失った。

当時は自動改札機の導入に対して、大きな反発があったということだが、新宿駅などのターミナル駅ではあまりの処理量のために15分間で駅員が交代をするほど集中力が必要な業務で、自動改札機の登場で地獄から解放されたという声も少なくなかったということである。

自動改札機などのオートメーション化によって得られた余力で他事業に手を広げ、国鉄債務の返済の一助になっていった。

ICTが仕事を人間から奪っていくことは必ずしも悪いことではない。

しかし現実として未来においてICTによって半分くらいの仕事が人から奪われるその事実は無視できない。

政府が目指す世界

ICTによって仕事が奪われることは事実であるが、機械は人間によって論理的に命令されたことを実行することに他ならない。

論理的に命令するためには過去のデータからパターン分析をしなければならない。

自動改札はわかりやすい事例であるが、出発駅と到着駅の間の料金を分析して、その料金が支払われているかどうかを判定する機械である。

そこには感情的なものはなく、論理的な思考しかなく、プログラミング化が可能である。

仕事は奪われるものではなく、ICTを活用して、効率化させるというイメージを持つ必要がある。

政府はSociety5.0、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)の創造を目指している。

「これまでの社会では、経済や組織といったシステムが優先され、個々の能力などに応じて個人が受けるモノやサービスに格差が生じている面がありました。Society 5.0では、ビッグデータを踏まえたAIやロボットが今まで人間が行っていた作業や調整を代行・支援するため、日々の煩雑で不得手な作業などから解放され、誰もが快適で活力に満ちた質の高い生活を送ることができるようになります。」

と説明している。

そのような世の中になったときにAI、ロボットに仕事を奪われるのは必至である。

AI、ロボットではできない仕事を創りだす必要がある。

もしくは個人がAI、ロボットを創る側になることが肝要である。

未来において必要な力1:論理性

GIGAスクール構想は、現在から未来における社会情勢で生き抜くための力を育むものである。

コンピュータを使えることは基本的に大前提となる。

小学校プログラミング教育の手引(第三版、令和2年2月)によると

「コンピュータをより適切、効果的に活用していくためには、その仕組みを知ることが重要です。コンピュータは人が命令を与えることによって動作します。端的に言えば、この命令が「プログラム」であり、命令を与えることが「プログラミング」です。プログラミングによって、コンピュータに自分が求める動作をさせることができるとともに、コンピュータの仕組みの一端をうかがい知ることができるので、コンピュータが「魔法の箱」ではなくなり、より主体的に活用することにつながります。

(中略)

こうしたことから、このたびの学習指導要領改訂において、小・中・高等学校を通じてプログラミング教育を充実することとし、2020 年度から小学校においてもプログラミング教育を導入することとなりました。」

と説明している。

感情的・感覚的に物事を進めるのではなく論理的に物事を考えることができます。

手前味噌ながら私が研究者時代にはプログラミングを行い、数値シミュレーションを行ってきた。

物事の良し悪しを論理的に考えられることから、例えば行政が行う政策判断の良し悪しもコストパフォーマンス、メリット・デメリットのバランスなどがより理解できる方々増えることも期待できる。

福島原発からの放射汚染、豊洲の水質指標、今般のコロナ対策はゼロリスクを求める国民性を利用したマスコミによるあおり過ぎないと考える。

感覚を抜きにした科学的視点を持った理性が必要と考えるために、論理性を高めるプログラミング教育は将来において必要不可欠である。

未来において必要な力2:プレゼンテーション能力

コンピュータを活用したプレゼンテーション能力を育む必要がある。

現在、スマートフォン、タブレットで情報を得ることはたやすい。

しかし上述のゼロリスクに関する事例のように、情報の真偽に対して見定める能力に乏しい事例が散見される。

情報を見極める情報リテラシーが必要である。

この能力を身に付けることは簡単で、自分自身が情報発信者になることである。

情報工学の大学教授から聞いた話であるが、Twitterで匿名アカウント、いわゆる裏アカで、あることないことを頻繁につぶやいている生徒は、自分自身が情報発信をしているため、その行為の是非は別として、情報の真偽を見極める情報リテラシーが磨かれているということである。

情報発信、すなわち言い換えればプレゼンテーション能力が磨かれれば、情報リテラシーが向上する。

今後さらに情報があふれる社会になっていく中で、その情報の不確実性を見極める能力は必要不可欠である。

他人に何かを伝えようとするには、自分がそれ以上に学ばないといけない。

最後に

コロナ禍においてオンライン授業が急がれるが、GIGAスクール構想と並行して、事業を進めていかなければ、二度手間となり、予算と労力を無駄にしてしまう。

各自治体においては、児童生徒たちの論理的思考、プレゼンテーション能力の向上、オンライン授業、AIドリルなどの導入を目指した中長期的な戦略・計画を練った上で、ハード、ソフト、コンテンツを選択されることを期待する。

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加藤 拓磨
中野区議会議員、元国交省研究官(工学博士)

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