スウェーデンの新型コロナ対策をどう解釈するか --- 藤川 賢治

2020年05月29日 06:00

上のグラフは、スウェーデン1日あたりの死者、週平均推移を 2020年、2015〜2019年平均、2019年、2020年新型コロナ死者、でプロットしたもので、以前のものより1週間分増えています。収束してる、と思う方もいれば、やっぱり大量に死者を出してるじゃないか、と思う方もいるでしょう。どちらにせよ、このグラフ見て頂けるだけで、本稿を書いた甲斐があります。有難うございます。

なお本稿では収束とは横ばいか下降を意味するものとします。

スウェーデンに関しては対策に関する誤解や、むしろ正しい理解から、批難する記事も見受けられます。そこで、以下、筆者の解釈からの擁護を書いていきます。はい、スウェーデンの擁護記事であることは一切否定しません。

なお筆者は今回の対策を、経済や働く世代、子供達を守る対策だと称賛しているだけで、スウェーデンの全ての面がよいだとか日本より好きだとか思っているわけではないと、蛇足ながら記しておきます。

当のスウェーデンの方々はどう思っているのか?

以前の拙稿に書いた通り、スウェーデン在住の久山葉子氏の記事によると、

世界では今「スウェーデンは国民を使って実験をしている」なんていう不穏な見方もされているようですが、住んでいるわたしたち自身は一時に比べるとかなり不安が解消され、気持ちも落ち着いています。大手朝刊紙DNとIpsosが共同で行った 四月半ばの世論調査によれば、今回のコロナ政策の立役者である「国家主席疫学者のアンデシュ・テグネルの能力を信頼している」と答えた人が69%、「信頼できないとした人」はわずか11%でした。

とのことで、これが全てだと思います。スウェーデンの方々は、反対している人も居るが、概ね納得しており、外国から失敗だと批難することに意味はあるのでしょうか?

コロナ流行下の4月末にカフェのテラス席で過ごすスウェーデンの人々(News Oresund/flickr:編集部)

それを揶揄して、自国で経済や自由が破壊する苦しみを愛し始め、スウェーデンの対策を受け入られらなく症状をロックダウン・ストックホルム症候群と名付けた人もいます。

死者が多い?

実際多いです。人口あたりの死者で、世界でも6番目に悪いです。

ただ、スウェーデンが失敗したことを強調する記事、例えば「集団免疫」作戦のスウェーデンに異変、死亡率がアメリカや中国の2倍超に(Newsweek, 5/1)は、米国の2倍とか、他の北欧諸国より悪いことばかり強調していて、ロックダウンしたのにもっと悪い国とは比較しない記事が多いように思います。ですからそれら含めた表を示します。

100万人あたりの死者数 (Coronavirus Update (Live) – Worldometer より 5/27)

ベルギー スペイン イギリス イタリア フランス スウェーデン アメリカ 中国 フィンランド ノルウェー 日本
806 580 546 545 437 409 304 58 56 43 7

 

集団免疫を目指している?

これは正確ではありません。

筆者がスウェーデンの対策のことを知ったのは「日常をできるだけ維持する」スウェーデンのコロナ対策 – 山内正敏 (論座 – 朝日新聞社の言論サイト, 3/31)でした。理想的には思えましたが、この時点では上手くいくという確信は持てませんでした。

スウェーデンが対策を継続し、感染を収束させられることを確信したのは、Swedish expert: why lockdowns are the wrong policy (Unherd, 4/17)を読んだときでした。

戦略の要点は二つ。

  1. 正しい対策は、高齢者と基礎疾患のある人を守ること。
  2. 結果的に副次的産物として集団免疫を得る。

副次的産物でピンと来ました。リスクが高いグループの隔離が目的で集団免疫は目的では無いのです。逆に、ピンときたけど、そんなこと許されるか!、姨捨山か!、と思った方もいるでしょう。

リスクが高いグループを隔離することで、社会集団から居ない状態を作ろうとしています。しかし、隔離に失敗して残念ながら亡くなったとしても(実際に失敗して亡くなっているのですが)、この戦略においては残された社会集団から隔離されたことと違いがありませんので、戦略の変更は不要です。

一度感染し一旦は抗体を持った人が再感染するのかどうかも、第二波が来ようと来まいと、戦略の変更は不要で成否に影響しません。いずれ収束して定常状態になります。(唯一の懸念は、重症者が増え過ぎてICU等が足りなくなるときですが、一時的に制限を厳しくすることはあり得るといっていましたし、結局、今回の波では制限を厳しくすることなく乗り切りました。)

このように考え、収束させられると確信しましたし、実際にコロナ死者のグラフを見ても収束しています。念を押しますが、収束とは横ばいか下降を意味します。

また新型コロナによる死者が僅かな下降の横ばいに過ぎないのに、全体の死者は下降して例年並みに近付いているように見えます。これはリスクの高いグループの方々が残念ながら前倒しで亡くなって、コロナ以外の理由で亡くなる方が例年に比べて少なくなっているからではないでしょうか。

日本でもスウェーデンでも、ざっくり人口の 1/100 くらいの人が年間に亡くなります。人口1000万のスウェーデンの場合は年間9万人、毎日 250人くらい亡くなります。リスクの高いグループの閾値をどこに取ったとしても、毎日250人がリスクの高いグループに新たに追加され、250人が亡くなり、うち数十人が新型コロナの死者という形で収束するということです。第二波が来て、それより多くの方が亡くなるでしょうが、それでも収束はします。

スウェーデンは壮大な社会実験?

これに一番の違和感を感じます。

スウェーデンの対策を壮大な社会実験と呼ぶことは、まあ、理解できます。しかしそれならロックダウン前代未聞の社会実験とでもいうべきではないでしょうか。

スペイン風邪が流行ったときに、世界中でロックダウンしたのでしょうか?ロックダウンを何故か皆が正統性のあるものだと認識していることに、筆者はむしろ恐怖を感じます。

対策の失敗で高齢者が沢山亡くなった?

これは本当です。 ロックダウンしないスウェーデンのコロナウイルス対策責任者「死者数の多さは想定外」 (Business Insider, 5/8) によると、

スウェーデンでは、死者の約半分が老人ホームでの発生しているが、施設の訪問は禁止されいた。テグネル氏によると、保健当局は、この病気を高齢者から遠ざけるのは簡単だと考えていた。

同氏は、スウェーデンでは老人ホームへの訪問が禁止されているにもかかわらず、多くの欧州諸国と同様に、老人ホームでの死亡者数が非常に多いことを指摘した。

隔離する戦略は失敗しています。擁護はありません。

スウェーデンは何の対策もしていない?

封鎖なし、独自路線のスウェーデン 死者数は北欧で突出 (朝日新聞デジタル 5/20) によると、日本に近い要請となっています。

スウェーデン政府は国民に、発熱やせきなどがあれば自宅療養する▽他人とは社会的距離をとる▽可能なら在宅勤務する▽70歳以上は出来るだけ他人と接触しない――などと要請している。要請にとどめている点は日本と共通している。50人超の集会は禁止され、店での飲食は席と席の間隔を開けるなどの制約はあるものの、学校も中学以下は休校しないなど、人々の生活は以前とさほど変わっていない。

しかし日本との違いとして、義務教育が開いていることと、自営業者に一律の休業要請が無いことが挙げられ、羨ましい点です。

日本では未解明の理由により、新型コロナが流行りにくいようなので、秋冬の第二波には、各種要請をするにしても、これをベースに、高校大学も開け登校でもオンラインでも可、くらいにしませんかね。

おまけ

否定的なことも少し書いておきます。

対策に対してスウェーデン人の11%は不支持と書きましたが、たまたま息子の高校の同級生にスウェーデンの方が居て、母親はスウェーデンで看護師をしているそうです。余りの忙しさに、「ロックダウンしてくれ」とボヤいているのだとか。

ストックホルム症候群といえば、スウェーデンの中こそがストックホルム症候群という指摘は一理あると思います。政府と保険当局が犯人で、国民が人質というわけですね。筆者の場合はスウェーデンの対策に関して隣の芝生は青いと思う症候群ですかね。

経済に関しては、幾らスウェーデン内でなるべく回すように頑張っても、他の欧州や世界全体の影響を受けるので、結局は厳しいと思います。

どうでもいいおまけ情報

パワーリフターは、自分のトレーニング風景をSNSに挙げるのを趣味としている人達も多いのですが、世界中でロックダウンが行われて、ジムでのトレーニング動画は、スウェーデンの方々しか上げなくなり、皆、羨ましく思っていたそうです。ちなみに米国はガレージなど、ホームジムから上げている方々が多かったとか。

藤川 賢治 東京都在住パワーリフター、本職はネットワーク系の研究者・技術者

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