新型コロナが怖い方々と怖くない人達との違い、共存方法

藤川 賢治

本稿は、どちらかというと新型コロナが怖くない人たちに向けた記事で、どうやって新型コロナが怖い方々と共存していくかを考察しています。当面は、学校再開や自粛全面解除が目的であり、また遅くとも秋か冬には来る第二波に、再度の学校閉鎖や自粛を防ぐことも目的としています。

筆者は趣味でパワーリフティング(詳細後述)というバーベルを挙げる競技をやっています。自身の知る限り、競技をやっている人、パワーリフターと呼びますが、にコロナを怖がっている人は皆無です。

決して、体を鍛えていて健康に自信があるから、ではありません。ジムが開かないとバーベルを使ったトレーニングができなくて、パワーリフターにとって一番困ることだから、コロナを怖いと思わないようです。

新型コロナに感染するとか死ぬとか考える以前に、他に心配事や困る事がある人達は、新型コロナを怖いと感じないのでは無いでしょうか。

自身が今年3月7日に入会した東京の個人経営のジムは、経済的な問題から 5月7日に再開しました。テレビ取材もいくつか受け自粛要請に従わないジムとして有名になり、問い合せが殺到し、パワーリフター達、フィットネス好きの人達が集まってきています(ただし感染防止のため同時利用人数に制限あり)。

‪フジテレビ生中継に出演。‬ ‪都内で自粛要請しないジム代表としてインタビューを受けました。‬ ‪1月開業したばかりで曖昧な休業補償による資金難もありますが、健康のためにフィットネスは生活必須産業です。‬ ‪若者と高齢者/既往歴のある方と分断、十分な感染防止策して営業開始‬。... | By Hirotaka Yoshida | Facebook
‪フジテレビ生中継に出演。‬ ‪都内で自粛要請しないジム代表としてインタビューを受けました。‬ ‪1月開業したばかりで曖昧な休業補償による資金難もありますが、健康のためにフィットネスは生活必須産業です。‬ ‪若者と高齢者/既往歴のある方と分断、十分な感染防止策して営業開始‬。...

筆者の場合は、2月末に学校が閉じられたときにまず子供達の教育が心配になり、更にその後、バーベルでの筋トレできる場が無くなっていくことで困り、 Facebookで3月10日には、

コロナによる渡航制限や会合の自粛は初期には仕方無いと思ったけど、これだけ世界に広まって、他のウイルスより特別感染率や致死率が高いわけでも無いと分ったのに、今だに経済活動を止めるのは合理的だと思えない。 インフルエンザでも人は死んでるし、経済が止まったって人は死ぬ。 マスコミは毎日、コロナに併せて、インフルエンザや自殺による死者数も同時に報道しては? (後略)

と書きました。

実際、日本でのコロナ死者は800人超え、世界でのコロナ死者は30万人超えなのですが、 厚労省のインフルエンザ資料のQ&Aにはこう書かれています。

Q10. 通常の季節性インフルエンザでは、感染者数と死亡者数はどのくらいですか。

例年のインフルエンザの感染者数は、国内で推定約1000万人いると言われています。 国内の2000年以降の死因別死亡者数では、年間でインフルエンザによる死亡数は214(2001年)~1818(2005年)人です。 また、直接的及び間接的にインフルエンザの流行によって生じた死亡を推計する超過死亡概念というものがあり、この推計によりインフルエンザによる年間死亡者数は、世界で約25~50万人、日本で約1万人と推計されています。

つまり、死者数だけでいえば、大した被害の違いは無いと思えます。

しかし新型コロナが怖い方々は、筆者が新型コロナのリスクを過少評価しているように見えるようです。確かに、超過死亡とは違うとか、短期間に大量に亡くなった、数倍の被害が出ている地域もある、ロックダウンしたから被害が少なくなった、将来的なリスクは分らない、など色々違いはあると思います。それを大した違いは無いと思うか、大きな違いだと思うか、この違いはどこから生まれるのでしょうか?

数値を提示して話をすれば、怖い方々も安心できるのでは無いかと、色々話をしたのですが、むしろ怒らせることの方が多く、どうも各種数値データを知っているかどうかの問題では無いと分ってきました。お互いの見解の相違は心理学用語でいうところの認知バイアス(バイアスは偏見、先入観の意)で説明できるのでは無いかと考えています。表にまとめます。

認知バイアス種類 傾向 新型コロナが怖い方々 新型コロナが怖くない人達
ネガティビティバイアス ポジティブな情報より、ネガティブな情報の方が人の意思や行動に影響を与えやすい傾向 短い期間に同じウイルスにより肺炎で大量の死者を出す情報を与えられ、新型コロナに恐怖を感じ、以降は新型コロナからの感染を避けることを第一とした行動を取る 学校閉鎖や自粛で心配事や困る事、例えば教育問題や経済的な問題が発生し、以降それらを回避することを第一とした行動を取る
ゼロリスクバイアス 全体的なリスクの大幅な削減より、特定リスクをゼロにすることを選好する傾向 経済的な問題、教育問題を解決することより、新型コロナ感染とそれによる死をゼロにすることを選好 新型コロナ感染やそれによる死の問題を解決することより、経済的な問題、教育問題を解決することを選好
確証バイアス 自分の信じていることを肯定する情報ばかりを集める傾向 新型コロナが怖いことを肯定する情報ばかりを集める。感染者数、死者数、ワクチンも治療藥も無い、ウイルスが変異して強毒化する可能性、未知のウイルスなので何が起こるか分らない、など 新型コロナが怖くないことを肯定する情報ばかりを集める。感染者数、死者数のインフルとの比較・各国との比較、インフルのワクチンも治療薬も元々限定的、既知のウイルスも変異する可能性あり、既知のウイルスだって分らないことだらけ、など
正常性バイアス 自分にとって都合の悪い情報を無視したり、過小評価したりしてしまう傾向 教育問題は遠隔で対応すればいい、経済問題は補償すればいい 新型コロナの致死率は、高齢者や基礎疾患のある人でインフルより少し高い程度。特に日本人は何らかの要因(清潔? BCG?)で致死率は低いと認識

なお筆者は、心理学の専門家でも何でもなく自宅に「マンガでわかる心療内科」が全巻揃っているだけです(笑) 間違いがあればご指摘下さい。

ともかく、このように方向付けが違うだけで、どちらのグループも、心理学的に名称もつけられている人間の本能的な心の動きに従って行動していると考えるべきだと思うのです。

大阪は東京より先に「青信号」(大阪府ツイッターより)

今後、自分自身に心配事や困る事が生じると、だんだん怖くなくなってくる方が増えてくるとは思います。例えば本格的に仕事に復帰したが、消費マインドが落ち込んでいるので、売上げが伸びない、などなど。

逆に、自分自身に差し迫った困る事が無ければ、新型コロナが怖い方は怖い儘だと思います。そういう方々を怖がらせたく無いのであれば、数値データを提示するのでは無く、「新型コロナにもワクチンと治療薬あるよ」と何より「安心を与える」ことが重要だと思うのです(前回拙稿参照)。

もしくは「そうだね、新型コロナは怖いね。加えてインフルや交通事故のリスクやもあって世の中怖いことばかりだよね。けれども、以前はそういうリスクがある中でも外に出て楽しんでいたのでは無い?見てごらん、皆、外に出て少しずつ以前の生活を取戻してきているよ!」と語りかけることでは無いでしょうか。

何にせよ、当面、また将来的にも、二つのグループが共存することを前提に行動すべきだと思うのです。怖くないグループには、マスクなんて屈辱だ、絶対しない、という方もいらっしゃいます。心情的にはよく分るのですが、筆者は、マスクで安心してもらえるのなら、マスクを付けます。息苦しくも暑くもない環境であることが条件ではありますが。

テレワークの推進もオンライン授業の拡充も元々選択肢としてはあるべきものだから進めるのは賛成です。特に満足な準備期間も無いままオンライン授業を実現して下さっている先生方に大変感謝しております。

とにかく学校は再開して、子供を学校に行かすのが心配なら自主休校でよいと思います。現状は学校に行きたい子供が可哀想です。オンライン授業も進めていけば、不登校の子の対策にもなるし、高齢の先生も遠隔で授業可能になります。授業進行具合がずれるのが問題なら、個人的には 9月始業に変更もありだと思います。それまで予習復習、部活中心でよいでしょう。

このくらいで学校再開に関しては、新型コロナが怖い方々に妥協してもらえると有難いのですが……

おまけ:パワーリフティングについて

パワーリフティングは、バーベルを使った三種目、ベンチプレスとスクワット、デッドリフト(後述)の合計重量を競う競技です。オリンピック種目である重量挙げ(ウエイトリフティング)とはまた別の競技です。ベンチプレスの重量だけを競うカテゴリもあり、特にパラリンピックのベンチプレス競技は、脚に障害のある方が日頃のトレーニングの成果を存分に発揮できる場であり、人気競技です。

デッドリフトは名称だけでは想像できない方々も多いと思うので、以下サンプル動画です。

Kenji Fujikawa | Facebook

藤川 賢治 東京都在住パワーリフター、本職はネットワーク系の研究者・技術者