マイナンバー:行政を信頼できないというメディアは国民を信頼していない

2020年06月11日 06:00

朝日と毎日のマイナンバー社説:行政への信頼を求めるだけでは信頼できない」と題する記事を書いた。マイナンバーと口座番号を紐づけする法案に対して、毎日新聞や朝日新聞が「資産把握やプライバシー保護」の観点から心配というが、行政は保守的に法律を解釈する組織だから心配は無用という内容だった。

繰り返しになるが、6月4日の朝日新聞社説には次のように書かれていた。

全口座を政府が把握する仕組みの導入は、過去に何度も議論されたが、プライバシーが侵されるのではないかという国民の根強い不安から、頓挫してきた。コロナ禍に乗じるようなやり方は許されない。

執筆後もう一度考えて、毎日新聞や朝日新聞の主張の致命的な問題点に気付いた。

写真AC

マイナンバーと口座番号が紐づけされるだけでは、その口座への入出金記録などの口座情報は把握できない。行政がそれを把握するには、金融機関が口座情報を提供しなければならない。ここが問題なのだ。

今でも口座情報を金融機関が行政に提供する場合がある。警察が捜査関係事項照会書を送付してきた場合がその一例である。

しかし、捜査関係事項照会は刑事訴訟法第197条第2項に基づいて送付されるものだが、同法は「捜査については、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。」と規定するだけで、受け取った民間側の回答は義務ではない。それどころか、漫然と捜査関係事項照会に回答することが不法行為となり、照会に応じた回答者が法的責任を負う可能性がある、とさえ言われているのだ。

捜査関係事項照会には照会する理由が書かれる。マイナンバーと口座番号を紐づけした後、行政機関が口座情報を照会する際にも理由が必要になる。金融機関はそれを吟味して回答するかどうか決める。

吟味することもなく、金融機関は全預金者の口座情報を提供するに違いないと、オールドメディアは考えているのだろうか。もしそのような事態が発生しても、金融機関の職員は口をつぐみ、誰も告発しないと考えているのだろうか。

「行政が信頼できないから」というオールドメディアは、「金融機関を意気地なし」と言っているのに等しい。

つまりは、国民を信頼していないのだ。

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山田 肇
ICPF理事長、東洋大学名誉教授

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