なぜ京都は貧乏?② 国が自治体に押しつける「禁断」の借金制度

2020年07月20日 06:01
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makoto.h/写真AC

コロナ禍で見えてきた自治体の財政の脆弱性。

7月に入り、国から2兆円に上る財源が地方に支給されたため、突如自治体のコロナ対策が前進し始めているが、当初4月、5月は金のある自治体とない自治体の取り組みにかなりの差が出た。

以前、私の地元京都市が貧乏なのは、行政自身の問題の先送り体質にあることを書いてたくさんの方にお読みいただいたが、

なぜ京都は貧乏?観光で潤ってる説の嘘

実はもうひとつ貧乏から脱却できない大きな問題がある。

先日、「東京は諸悪の根源」と発言し、その後撤回した知事がいたが、地方財政難についていえば、「国に諸悪の根源」だと断言できる。一体、国と地方はどういった関係で、どうしたやり取りが行われているのか、知られざる地方と国の金の話を明らかにしていきたい。

国が始めた臨時の暴挙、臨時財政対策債

今、国は自治体に対して信じられないほど無責任な言動を繰り返している。

自治体の予算の柱は、国庫支出金、市税収入、地方交付税の3つだ。

国庫支出金は、国が指示する事業を国のお金で行うための金、つまり国の代理で業務を遂行すタイプのもので、義務教育や生活保護費の支給などがこれにあたる。

それに対して、比較的自由に使える予算が市税収入と地方交付税にあたる。市税収入は個人・法人の市民税、固定資産税が主力だ。京都市は観光客が来て潤っていると思われているがその効果はほとんどない。

市民税は所得税などと違い、収入や利益が増えてもそれ程大きく税収が増えないからだ。最も大きな収入源である固定資産税も、面積の多くを占める寺社仏閣、大学は非課税で、一般家屋も評価額が低い木造住宅が多いため他都市より少ない。そのためよく財政基盤が弱いと言われるのだが、問題はそこではない。最後の地方交付税というやつだ。

地方交付税は、市税などの独自の収入が少ない自治体に補填する制度で、これを貰わない自治体は不交付団体といい、自立した豊かな自治体と言われている。東京などがその代表選手だ。ほとんどの自治体は、この地方交付税を貰わないとやっていけないのだが、この交付税の配分が2001年(平成13年)からおかしなことになっている。

国も財政が逼迫し、地方交付税の支払いが苦しくなった。そこで、国は一計を講じた。

「国の財政も厳しい。できれば交付税は全額払いとこだが、今年は1割減にする」

地方「ちょっと待ってくれ。それじゃ、予算が組めないじゃないか」

「そうだよな。じゃあ、いったん足らない分を借り入れしておいてくれないか。あとで必ず払うから。本来なら国で借りて払うべきなのだろうが、国の借金も多いのでそうして欲しい」

地方「借金してもいいんですか?」

「これは国のせいだから、もちろん認める。我々の手で必ず残りは払う。これは臨時の財政対策なので、臨時財政対策債と名付けよう」

地方「必ず払って下さいね。あくまで臨時ですよね?」

「もちろんです」

こうして、地方交付税9、臨時財政対策債1という割合で、実質的地方交付税が減額され、謎の借金が始まった。この臨時財政対策債(以下、臨財債)が「超クセモノ」で、臨時は終わるどころか、2001年(平成13年)以降ずっと増え続け、9:1どころか、6:4ぐらいの比率にまで拡大を続けている。

国からの支払いに明細なし?

京都市役所(Facebookより)

京都市の場合でいうと、2000年(平成12年)に1148億円交付されていた地方交付税は、今や534億円(平成29年度)と半分以下、それに臨財債が372億円という半分近くが謎の借り入れという構図になっている。臨財債の比率が増えてるのみならず、じわじわと総額が減り続けている。

確かに後になって返済分を国が支給してくれるのだが、本当に返済分が支払われているかはもはっきりしない。実は国からのお金には明細というものがなく、したがって、国が払ったと言えば払ってもらったことになるし、ほかの予算を減らして返済分に回すことも国の裁量なので何とでもなってしまうのだ。国ぐるみの自転車操業をいつまで続けるのかと理解に苦しむ。

しかも、最近ではこの臨財債もしっかり予算書に計上するようになっているが、以前は「あくまで国の立て替え的借金だから」といって自治体は自らの借金として計上すらしていなかった。

どこの地方自治体も借金を減らすことに躍起になっているが、このせいで永遠に借金は減らず、交付税は年々減らされ、行政改革をやってもやっても、一向に好転しないという悪循環に悩まされている。

しかも、地方交付税は、あくまで市税収入の補填の側面が強いので、都市が頑張って市税収入をアップさせても、アップさせた分の地方交付税が減らされる(厳密には1増えると4分の3減額)。これは、働くと減らされる生活保護費の支給によく似ている

だからといって自治体が「バカげてる!」と歯を食いしばり、「臨財債などという借金はやめる!」宣言することは可能だが、将来的に返済分が国から貰えなくなるだけなので、結局損をするということになる。

こうした状況の危機感から地方自治体は自らの借金を減らす努力を続けており、京都市でも少しずつ自らの借金は減らしているが、臨財債がどんどん膨れ上がり、トータルの借金は増え続けている。ちなみに臨時財政対策債が始まった2001年(平成13年)1兆円弱の借金が2017年度(平成29年度)には8600億円に減ったが、臨財債が4400億円増え、トータルで1兆3000億円を突破している。

国は払うべきものを払うべき

年々国からの交付金は減らさせる。借金は押し付けられる。根源的に地方に払われるべき予算が確保されない状況が十数年続いているわけで、この構造的課題は全国の知事会や市長会などからも毎年是正の要望をしているが、悪化の一途を辿っているのが現状だ。

一方でなんとかしようと自治体が努力し収入を増やしたら、これまた交付金が減らされる。それでいて、社会福祉経費は右肩上がりに増え続け財政を圧迫する。京都市は遂に市税収入で福祉経費すらも補いきれないというどうしようもない状態にまで来ている。

構造的な課題解決に向け、国への働きかけを強化することと、それでもなお、しっかり自立できる財政構造の確立を急がない限り京都市は、また全国の自治体はじわじわ沈み続ける。

詳細は、村山祥栄解説動画、または『京都が観光で滅びる日』(ワニブックス)を参照頂きたい。

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村山 祥栄
前京都市会議員、大正大学客員教授

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