コロナ禍でも回復基調:スシロー・くら寿司の対コロナ戦略

2020年08月10日 06:00

コロナによる飲食業の低迷が続く中、回転ずしチェーン店が速い回復をみせています。

6月の前年同月売上比はスシロー103.1%、くら寿司102.1%と好調です。

一方、都が営業時間短縮を要請するなど、状況はさらに悪化しつつあります。今後、回転ずしチェーン店は、どのようにしてコロナを乗り切ろうとしているのか。スシローとくら寿司の2社をモデルに、考察してみたいと思います。

くら寿司の対コロナ戦略

撮影:パリカール(Wikipedia)

くら寿司は、衛生対策の徹底という「地味(地道)」な対コロナ戦略を展開しています。

コロナ以前から衛生対策として取り組んでいた、すし皿カバー「鮮度くん」もそのひとつです。コロナ対策として「鮮度くん」の抗菌化、表面を殺菌する紫外線灯の設置など、さらに衛生面を強化しました。

こういった、テクノロジーを駆使した衛生対策による「安心感」がくら寿司の強みです。

安心感は、顧客層を広げることにもつながります。どの程度の衛生対策で安心を得られるかは、人それぞれ。くら寿司の強力な衛生対策は、コロナを気にしない人はもちろん、神経質な人まで安心させることができます。結果、顧客層の拡大につながるのです。

また強靭な財務体質もくら寿司の強みです。自己資本比率は実に63%。有利子負債はほとんどありません。つまり「無借金経営」なのです。くら寿司は、極めて財務安全性が高く、売上低迷でも長期間耐えうる「持久力」がある、と言えます。

くら寿司の、対コロナ戦略はシンプルです。「安心感」の提供による幅広い顧客層の取り込み、そして強靭な「財務体質」で、このコロナ禍を乗り切ろうとしています。

スシローの対コロナ戦略

撮影:Hanasakijijii(Wikipedia)

スシローは、「派手」な広告・演出といった対コロナ戦略を展開しています。

緊急事態宣言下、渋谷で行った大規模広告は記憶に新しいところです。スクランブルビジョンや地下通路などのスポットを、スシローの動画で埋め尽くした広告は「渋谷ジャック」と呼ばれ、SNSで大きな話題となりました。こういった大規模演出に加え、月2回の販促キャンペーンも実施しています。

このような「演出力」がスシローの強みです。

また、スシローの水留浩一社長は、現在の回転ずしの業態を「夢の空間」と表現し、強いこだわりを持っています。そのため、コロナ以降も、すしにカバーをせず、そのまま回転レーンに乗せるスタイルを変えていません。これも、すしを美味しく見せるための、演出と言えるでしょう。

ただし、このカバーなしのスタイルに、不安を感じる消費者も多いようです。水留社長は、「回転ずしは続く。”空いた場所”を取りに行く」(週刊東洋経済プラス)にて、以下のように述べています。

──(記者)店内の回転レーンで、すしが外気にさらされ続けることを気にする人もいます。

食品が感染経路となったという報告は一切ない(*1)。そのリスクは基本的にないと思っている。
そのうえで気にされる方はもちろんいる。最後は消費者の方が選ぶということだ。今の(回転ずしという)形で楽しみたいというお客様がいる限りは、われわれはそこにミートしていきたい。

この発言から読み取れるのは、顧客層の絞り込みです。「今の回転ずしを楽しみたい人」に(のみ)注力する、ということになります。コロナ禍中であっても、以前と同様のスタイルで外食を楽しみたい。そういった消費者が、スシローにとっての顧客層なのです。

ただし、顧客層を絞り込むと、当然、店内利用客が減少します。

その対策として、持ち帰り用の「自動土産ロッカー」を導入しています。自動土産ロッカーは、ネットで注文・決済し、指定した時間に、店舗併設ロッカーで商品を受け取るサービスです。店員と接触することなく、持ち帰ることができるため、安心感重視の顧客ニーズを満たすことができます。顧客層絞り込みで取り逃した消費者を、持ち帰り対策で再度捉える。「二段構え」の施策と言えるでしょう。

このように、スシローは、

  • 大規模広告や販促キャンペーンなどの「演出」
  • 店内利用客向けの、外食を楽しめるスタイルの維持
  • 持ち帰り顧客向けの、「安心感」の高い持ち帰り方式の提供

といった、複合的な戦略で、コロナ禍を乗り切ろうとしています。

消費者の不安感の変質

以下の記事によると「(新型コロナ感染に対して)周りの人の気が緩んできている」と感じている人が56%、「自分の気が緩んできている」と感じている人が15.7%を占めています。

新型コロナ懸念、半数強の人が「周囲の人の気の緩み」実感――アンケートで判明(ITmedia ビジネスオンライン)

このことから推測できるのは、多くの人が「それほど気にしなくなっている」または「コロナ疲れで、気にできなくなっている」ということです。不安材料が多いにもかかわらず、「不安感の減少」と同様の現象が起こっているのです。

その影響もあってか、7月の売上前年同月比は、「安心感」の訴求で劣る(*2)スシローが101.8% と増加し、「安心感」の訴求で優れるくら寿司が98.1% と減少しました。

飲食業界にとって、スシローの2か月連続のプラス成長は、明るい兆しと言って良いでしょう。

しかし、8月に入り、東京都による営業時間短縮要請や、各地の感染者数増加など、不安材料が増えつつあります。飲食業の苦境は当面続きそうです。このコロナ禍をなんとか乗り切り、飲食業回復のモデルになっていただきたい、と思います。

[参考]
*1 「新型コロナウイルスに関するQ&A(関連業種の方向け)」
*2 安全ではなく「安心感」訴求がくら寿司に比べ劣るということ。スシローは万全の対策を実施している

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