安倍政権はリベラルな「弱い内閣」だった

2020年08月29日 06:05

安倍首相が辞任を表明した。外交・防衛の分野では、安保法制で集団的自衛権を認めて日米同盟を正常化したことが最大の業績だと思うが、経済政策ではこれといった成果がない。アベノミクスの結果はみじめなものだ。

この図はIMFの集計したG7諸国の一人当たりGDPだが、日本はビリから2番目という不名誉な状態から脱却できなかった。「やってる感」とは裏腹に、アベノミクスがもたらしたのは長期停滞の延長だったのだ。

もちろん民主党政権よりはましだし、株価は上がったが、これも日銀がETFを買う異常な政策で演出された資産バブルで、これからの出口戦略が大変だ。世界的に金利上昇への警戒感が強まる中、政権の後ろ盾を失った日銀がバブルを支えきれるのだろうか。

憲法改正の手段だった景気刺激が自己目的化した

結果が出せなかった原因は、はっきりしている。アベノミクスは金融政策に依存し、「デフレ脱却すれば景気もよくなる」と想定して景気刺激を繰り返す超短期の経済政策だった。量的緩和が不発に終わっても、消費税の増税先送りなどの財政政策で景気を刺激しようとした。

だが景気刺激をいくら繰り返しても生産性は上がらず、潜在成長率は下がった。ドーピングを何回やっても、体力がつかないのと同じだ。安倍首相は政治的に容易なマクロ経済政策のドーピングにはまり、体力を強化しなくなった。「働き方改革」は規制強化になり、エネルギー政策では原発から逃げ続けた。

この逃げの姿勢は、彼がモデルとした祖父、岸信介が安保条約を改正して政治生命を縮めたのとは対照的である。第1次安倍内閣で「戦後レジームからの脱却」などの理念を掲げて挫折したことを教訓にし、景気をよくして政権の求心力を高め、憲法改正を実現しようと考えたのだろう。

しかし安保国会で憲法改正はつまずき、景気刺激が自己目的化してしまった。アベノミクスは、世界的にみると「大きな政府」のリベラルな政策である。「安倍一強」といわれたが、利害対立に配慮して思い切った政策を打ち出せない「弱い内閣」だった。新型コロナ対策では、政権内部が混乱して方針が定まらなかった。

念願だった憲法改正も、安倍首相の辞任で挫折した。誰が後任になっても改正はできないだろうが、実害はない。皮肉なことに彼の実現した集団的自衛権によって、憲法改正は必要なくなったからである。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長(学術博士)

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