「桜」の再燃、実は官邸の“シナリオ”通り?

2020年11月26日 06:01

2019年4月の桜を見る会(官邸サイトより)

桜を見る会の前夜祭疑惑が3連休終わりに再燃した。安倍政権下の「モリカケ桜」の3大騒動のうち、「桜」だけは役所が関与しておらず、防御が最弱というのは以前から指摘されており、アンチ安倍の人たちも「突破口」に見立てていた。安倍シンパにとっては杞憂が的中したような構図だ。

疑惑を巡ってはアゴラでも昨年から郷原信郎氏が厳しく指摘してきた。将棋の盤面解説という趣向は、将棋を知らない私は正直面食らっているが、富山県知事選の公選法疑惑でもコメントを依頼したように、政治資金や公選法の捜査を手がけてきた郷原氏の見識は信頼している。

アゴラの一部寄稿者や保守志向の愛読者の中には、「郷原氏は野党に近い」などと敵視する人がいるが、本件については公平に見て、実務経験に裏付けられた氏の論考より説得性のある反論コメントは見かけない。

また、郷原氏のほかにも捜査のポイントを指摘した元特捜検事の前田恒彦氏のヤフーニュース論考にもほぼ同意だ。すなわち特捜部が「本気」なのかを示すバロメーターとして、安倍氏本人への事情聴取や家宅捜索を行うかどうか、といったところになっている。

しかし昨日までの動きでは、前田氏の言うように「秘書による独断専行で、安倍氏をもだましていた」という防衛ストーリーが透けて見えており、この方向で進みそうな情勢だ

事件の本筋についてこれ以上の論評は専門家に任せたいが、「政治とメディア」を生業としている者として、いくつか私見を補足したいと思う。

朝日新聞が特ダネ合戦で出遅れた意味

今回の疑惑「再燃」、私は当初から特捜部の本気度には半信半疑だった。というのもメディアの動きをみてそう思ったからだ。騒ぎの発端は3連休最終日(11/23)の読売新聞朝刊の一面スクープだった。ここからの流れを駆け足で振り返ると、

事件報道の「特ダネ合戦」としては、読売が先陣を切り、NHKも独自情報を一部交えて対抗。緒戦はこの2社が主導したといってよい。

ここで注目したいのは、アンチ安倍政権の急先鋒だった朝日新聞の反応だ。モリカケで安倍政権追及の主翼を担ってきた同紙特報部の野沢哲也部長の24日朝のツイッターのコメントが興味深い。

読売とNHKに敬意を表し、「私たちも引き続き真相に迫る努力をしていかなくてはいけません」と述べているが、特ダネ合戦の初報では負けたことを潔く認めている。朝日の特捜担当記者が今回の動きを全く把握してなかったのかはわからないが、出遅れたのは事実だ。

そして、これが報道観点で注目したいポイントだ。読売もNHKもソースの「関係者」はこれまでの検察報道の慣例から、十中八九、検察幹部と思われるが、もし特捜部が安倍首相の立件を仕掛け、あるいは検察首脳人事を巡って、官房長官時代から因縁があったとされる菅首相に打撃を与えようと、世論形成をやろうとしているのであれば、リーク先は、安倍政権の関係者が忌み嫌う朝日新聞が順当のはずだ。

2018年3月、森友学園への国有地売却を巡り、財務省の決裁文書を書き換えた疑惑を特報したのは朝日新聞だった。このとき、大阪地検特捜部の捜査資料の流出が疑われたが、検事総長人事を巡り、安倍官邸と暗闘していた検察側が朝日を使って倒閣を仕掛けたとの見方が強かった。

朝日新聞 2018年3月2日朝刊

ところが今回、検察がリーク先に選んだとみられるのは読売新聞だ。もちろん、検察担当の現場記者は連日、夜討ち朝駆けで命を削って取材している。その積み上げた成果が特ダネにつながっているのは間違いない。

しかし、リークする側の視点に立つと、どのメディアにするか影響力や媒体特性もトータルで勘案するのが当たり前だ。安倍前首相が絡む事件である以上、特捜によるリークの動きを、官邸中枢が把握していないと考えるのはウブすぎる。官邸「黙認」のリークであれば、朝日と読売、どちらが許容されるか、取材される側として想定外の動きをする可能性はどちらが少ないか、答えは自ずと明らかだ。

今後の鍵を握る「鉄の女」

なにより、上述した3日間で、読売初報から「安倍氏周辺」情報、「秘書の虚偽報告」シナリオの浮上まで一気に爆進するという、実にスピーディーな展開だ。もしこれが偶然の産物だとしたら奇跡としかいえないし、情報面の危機管理が徹頭徹尾なされているのであれば、実に「鮮やか」といえる。

そして、ここまでどの記者クラブメディアもなぜか言及していないが、大物政治家が絡む事件である以上、捜査の指揮権を持つ法相の存在も、今後の展開を占う上で重要なカギだ。

上川陽子法相(官邸サイト)

さすが、週刊文春はきょう発売号で示唆する記事を載せているが、いまの法相は上川陽子氏だ。安倍政権で2度の法相起用に続き、菅政権で3度目の就任というスペシャリスト。成人年齢引き下げなどの民法の大改正を成立させるなど実務に強いだけでなく、オウム真理教事件で教祖以下、13人の死刑執行を断行し、サッチャーばりの豪胆さを見せつけた。

検察、官邸としては、前述の前田氏も言うように民意をにらみながら、落とし所としての「秘書の虚偽報告」シナリオに落ち着かせたいであろう。そして、「扇の要」たる法相には「鉄の女」上川氏が君臨する以上、この事件を「シナリオ」通りに遂行するべく入念に進めていくのではないか。

左派野党や朝日新聞、望月衣塑子氏といった面々は、絶好機とみて張り切っているが、「安倍憎し」で党派性を剥き出しに追及をし、世論を感情的に煽ろうとするだけでは、せいぜい解散時期を遅らせるくらいで、また、ぬか喜びに終わりそうな気がするが、果たして。

【おしらせ】きょう発売の「月刊Hanada」1月号で筆者の新連載「ファクトチェック最前線」が始まります。

月刊Hanada2021年1月号
飛鳥新社
2020-11-26
アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!

過去の記事

ページの先頭に戻る↑