「恐るべき女性票」ジェンダーギャップで見る近年の選挙戦

2020年11月26日 06:01

maroke/iStock

ジェンダーギャップという言葉、近年日本でも耳にするようになった。世界経済フォーラムが毎年12月に発表するジェンダーギャップ指数(GGI)を思い浮かべる人もいるだろう。

GGIは、経済、政治、教育、健康状態の4項目について男女間の格差を数値化するもので、男性を1とし、女性がどの程度それに追いついているのかを計る。1に近いほど格差が少なく、平等が達成されているということになる。

政治学では、こうした男女間の格差ではなく、政治における男女の選好の違い、なかでも投票行動における違いを表す概念として用いられる。米国ではこのジェンダーギャップ研究が盛んで、政策選好、政党や候補者の支持における性差が明らかにされてきた。たとえば、アメリカの女性は男性よりも医療や福祉、教育など社会政策に関心が高く、また民主党を支持する傾向にある。

今回の大統領選挙でも、CNNの出口調査によると、ジョー・バイデンに投票した有権者は、男性が45%であったのに対し、女性は57%と12ポイントの開きがあった。2016年のヒラリー・クリントンの場合も男性は41%、女性が54%と同様の傾向であった。

もっとも、アメリカの場合、人種による差異のほうが大きい。白人と非白人の間でバイデン支持を比較すると、バイデンに投票した白人が41%であったのに対し、非白人は71%(クリントン:白人37%、非白人74%)であった。ジェンダーと人種を組み合わせると、黒人女性の90%がバイデン、前回は94%がクリントンに投票していた。

日本でも、政党や候補者の選択にジェンダーギャップが確かにみられる。表は新聞等のウエブ上で公表されている出口調査をもとに、最近の主要な選挙における男女の投票先の違いを示したものだ。

選挙

男性 女性 調査主体
2017年総選挙で自民党に投票した有権者 39.6% 32.3% 日本経済新聞
2019年参議院議員選挙で自民党に投票した有権者 40.4% 35.5% 時事通信
2020年東京都知事選で小池百合子に投票した有権者 50%余り 60%台半ば NHK
2020年の大阪都構想で賛成票を投じた有権者 58% 41% 時事通信

都知事選も大阪住民投票も「決め手」は女性票?

表のように2つの国政選挙ではいずれも自民党に投票した女性は男性よりも明らかに少ない。では、この自民党が失った女性票はどこに行ったのか。必ずしも立憲民主党に流れているわけではないようだ。2017年の総選挙で立憲に投票した有権者は男性が14.2%、女性13.7%、一方女性票が男性票を上回ったのは公明党、共産党、社民党であった(日経出口調査)。2019年参院選でも、公明党と共産党は女性票をより多く獲得していた(時事通信出口調査)。

小池百合子氏Facebookより

今夏の都知事選は小池百合子氏の圧勝であった。NHKの出口調査は正確な数値を公表していないが、小池さんに投票した男性と女性の間には少なく見積もっても10ポイントの開きがある。

つい最近の大阪都構想の是非を問う住民投票では、女性の賛成票は男性よりも17ポイントも少なく、性差はさらに大きい。小池知事の再選と大阪都構想否決に女性票が貢献していることは疑いない。恐るべき女性票、ではないか。

政党支持を問う世論調査では、支持政党なし(無党派)が最も高い割合を示すというのが近年の傾向である。調査時期や調査主体による違いはあるものの、40%前後とみてよいだろう。

NHKの最新の世論調査では、支持政党なしは40%、それに次ぐ自民党が36.8%、連立を組む公明党が3.6%、野党はいずれも5%に満たない(立憲4.9%、共産2.3%、維新1.5%、国民0.8%、社民0.5%)。次の総選挙で自民党が安定多数を確保できるか、あるいは立憲など反自民勢力が得票を伸ばせるのか、選挙の行方は無党派の投票行動に左右されるだろう。

自民党も女性票を意識?

さて、無党派層にもジェンダーギャップはあるのか。早稲田大学の田辺俊介教授が2015年の1月から7月の期間3回に分けて実施した調査によると、支持政党なしと答えた人は男性が46%であったのに対し、女性は57.9%で、12ポイントほどの差があった。

ちなみに自民党支持者は男性33.2%、女性25.2%と、先にみた投票行動と重なる。無党派の女性票の取り込みが勝敗に及ぼす影響は決して小さくない。

自民党が最近女性を意識した政策を矢継ぎ早に打ち出し、また下村博文政調会長が10月8日の記者会見で2030年までに自民党の女性候補者を30%までに引き上げる考えを表明したのも、女性票の重要さに気づいたせいかもしれない。

しかし、世代や立場、生活環境などによって様ざまに異なる女性たちのハートを掴むのはさほど簡単ではない。女性候補者の擁立は女性の共感を得やすいが、候補者次第では外方を向かれてしまう。女性有権者の目は節穴ではない。男性以上に厳しい目で吟味するはずだ。

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法政大学法学部政治学科教授

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