<水準>と<振れ>は区別しよう--池尾和人

2009年06月14日 21:53

「ものつくり敗戦」で盛り上がりそうな雰囲気のところですが、ちょっと別の話題です(前の池田さんの記事に関しては、カルチャーを変えなくてはダメだという話だから、構造改革どころが、文化大革命が必要だということになるので、慄然とするということです)。

日本の輸出依存度は小さいのに世界金融危機の影響が大きいことを疑問とする向きが、どうも少なくないようだ。しかし、そうした疑問の背景となっている「輸出依存度が小さいと外需の変化の影響を受けにくい」というような見方は、単に「平均概念」と「限界概念」を混同しているだけのようにしか思われない。

確かに、平均値としてみた日本の輸出依存度は、G7の中ではアメリカの次に低い(2007年時点では、G7平均が22%であるのに対して、日本は16%)。しかし、外需の変化の影響を考える場合には、平均レベルではなく、その変分の大きさをみる必要がある。今回の場合であれば、2000年代の初頭に10%程だった輸出依存度が16%まで上昇して、また元に戻るような変化が生じたのだから変分の絶対値は大きい。大きい変化が生じたのだから、影響が大きいのは当たり前である。

「平均値が低いと変分が小さくなる」というような関係は元からないのに、あたかもそうであるかのような混同が少なくないのだろう。「平均概念」と「限界概念」は、経済学の初歩段階で習う区別だともいえるけれども、なかなか正確に理解し、運用することは難しい。例えば、このマンキューの記事の内容などは、プロの経済学者でもついうっかり間違ってしまいかねないと思われる。しかし、輸出依存度が平均概念だというくらいは間違えないで、<水準>と<振れ>の話は区別してほしい。

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