官僚会見禁止が意味するもの - 岡田克敏

2009年09月25日 13:34

 この問題については、既に北村隆司氏が9月23日に「次官会見の廃止歓迎」という記事をお書きになっています。官僚とマスコミとのなれあい関係など、マスコミのもつ数々の問題についてはご指摘の通りだと思います。ただ官僚会見廃止については別の面もあると考えます。


 『鳩山新政権の発足を受け首相官邸は16日、報道機関への対応について、〈1〉各省庁の見解を表明する記者会見は、閣僚など政治家が行い、官僚は行わない〈2〉次官らの定例記者会見は行わない――との内容の指針をまとめ、各省庁に通知した。
 指針は、閣僚が適切と判断した場合には、官僚による記者会見もあり得るとしているが、「国民の知る権利」を制限するものとして論議を呼びそうだ』(09年9月17日 読売新聞より)

 つまり鳩山新内閣は官僚の会見禁止を決めたわけで、情報はすべて政府というフィルターを通して発表することを意図したものと考えられます。これはどう見ても政府による情報統制であり、不都合なものは隠蔽するという大本営発表を思わせるものです。産経社説は「民主主義社会の根幹である言論報道の自由に反すると指摘せざるを得ない」としています。

 官僚主導から政治主導への転換は本来の方向であり歓迎したいのですが、たとえそれに役立つとしても官僚の口を封じる情報統制という手段は時代の流れに逆行するものであり、民主党の体質に強い疑問を感じます。

 さらに意外であったのはこの官僚の会見禁止という新政権の方針に対するマスコミの反応です。情報統制という重大な危険性を孕む政府の方針に対して、思ったほどの反応はありませんでした。一部を除く新聞は社説で取りあげたものの、記事としての扱いは芸能人の覚せい剤所持事件よりはるかに小さいものでした。

 日経は先行した岡田克也氏の発言を受けて15日の社説に、読売と産経は18日の社説で反対意見を述べ、毎日は19日になってから同様に取りあげました。朝日は社説で取りあげることはありませんでした。NHKの反応も鈍く、ようやく25日になって「おはようコラム」で取りあげました。

 官僚の会見禁止が実現すればマスコミは有力な情報ルートを失います。当然、官僚に質問して情報を引き出す機会もなくなります。その結果、国民が知り得る情報は政府によって管理された情報が中心になります。そうなればマスコミは報道の役割を十分果たせなくなる可能性があります。

 今回、二つの問題が明らかになったと思います。官僚の会見禁止は民主党幹部が十分検討した上の決定だと推定できますから、それは民主党の体質の反映と考えられます。批判を封じ、国民の耳目を塞ぐという不透明な方向への無頓着さ、「知らしむべからず、寄らしむべし(*1)」といった強権的な手法が打ち出されたことに不安を覚えます。

 もうひとつは既に述べたようにマスコミの見識の問題です。情報統制に対する反応の鈍感さ、必要な情報を国民に知らせるという自らの役割に対する職業意識の低さであります。情報統制に対してより強いメッセージを発しなかった事実は今後に影響を与えないかと懸念します。

 余談になりますが、各紙の社説では日経と産経が手厳しい内容で、読売がそれに次ぎ、毎日も穏やかながら批判しています。しかし朝日新聞は批判なしです。民主党に対する批判のレベルは同党に対するスタンスと強い関係があるようです。

 たとえ仲良しの政党でも権力を握る与党となれば、情実を排して厳しく監視するのがマスコミの役割の筈です。こんなところで「友愛」精神を発揮していただくのは大変困ります。これでは不偏不党の看板が泣きはしませぬか。

(*1)論語の「民は之に由らしむべし之を知らしめるべからず」の略で、民に理由を理解させるのは難しいので黙って従わせよ、という意味だそうですが、為政者は信頼を得るようにせよ、という解釈もあるようです。

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑