日本の「国家破産」は起こるか - 池田信夫

2009年10月04日 14:49

Barron’sの「日本政府が債務不履行に陥る可能性がある」という記事が反響を呼んでいますが、この内容は既知の話です。最近のOECDの対日審査報告書も、日本の財政赤字に警鐘を鳴らしています。「日本政府は金融資産も多いので、純債務は大したことない」という人もいますが、下のグラフ(右側)でもわかるように、政府の純債務は来年にはGDPの100%を超えます。それでも10年物国債の金利が1.3%程度というのは、デフレを勘案しても異常に低い。


これはOECDも指摘するように、日本が貯蓄過剰でリスク態度が保守的な上に、不況で国内に有力な投資先がないという幸運(?)に支えられています。しかし高齢化にともなって家計貯蓄率は急速に下がり、最近はほとんどゼロに近づいています。大部分の資産を国債に投資している郵貯銀行や邦銀も、高利回りを求められるようになれば、国債の残高を減らすかもしれない。

では、Barron’sのいうように日本政府が債務不履行に陥るかといえば、その可能性はゼロと断言していいでしょう。国債の保有者の94%は日本国民であり、個人金融資産は1500兆円あります。いざとなれば増税すればよいので、ロシアやメキシコのように国家全体のバランスシートが赤字になっている国とは違います。

とはいえ、IMFの報告によれば、財政赤字を維持可能にするにはプライマリーバランスの赤字を半減させる必要があり、この控えめな目標を実現するだけでも2014年までにGDP比14.3%の債務削減が必要になります。これを消費税(税率1%でGDP比0.4%)だけでまかなうとすると、約35%増税して消費税率を40%にしなければならない。消費税を2%上げただけで内閣の倒れた日本では不可能でしょう。「隠れ財政赤字」といわれる年金債務も500兆円以上あり、これを加えると個人金融資産はすべて国家に没収されることになります。

つまりバランスシートから見ると、政府債務の履行は算術的には可能ですが、政治的には不可能に近い。政治的に可能なのは、インフレです。国債を日銀に引き受けさせて通貨を増発し、3%のインフレを5年間続ければ、実質的な債務は15%減る計算です。国債の日銀引き受けは財政法で禁じられているが、国会決議があれば可能です。もちろんこれも政治的には非常に危険で、日銀は強く抵抗するだろうし、内閣が倒れる可能性もあります。

現在の政府債務が維持可能ではないことは専門家の一致した意見なので、問題はいかにして低いコストで財政赤字を削減するかです。この点で民主党政権が「無駄の削減」を掲げているのは結構なことですが、これも子ども手当などのバラマキ福祉で相殺されるのでは何の意味もない。

今のところ日本経済でインフレを心配する状況にはありませんが、世界的な財政赤字の膨張で長期金利は上がり始めており、投資家が国債を投げ売りし始めたら価格が暴落し、それが実物資産などへの逃避を呼んでハイパーインフレになるリスクもあります(これは政府債務を減らす上では望ましいのですが)。政府は、現在の国債金利が維持不可能な「バブル」であることを銘記して、政府債務を削減する長期計画を立てる必要があります。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 青山学院大学非常勤講師 学術博士(慶應義塾大学)

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