「コンクリートから人へ」とはいうけれど - 池田信夫

2009年11月06日 22:51

池尾さんの記事へのコメントだけど、ちょっと長いので投稿します(こんな感じでゲスト投稿できるようにしました)。


おっしゃるように要素価格の均等化は、理論的には避けられないが、実証的にはそれほど見られません。これは賃金に下方硬直性があるからだと考えられます。したがって国内で雇用を創造するには、部門間の労働移動によって単純労働の賃金を下げるしかない。欧米の「サービス経済化」の実態は、そういうことだったわけです。

しかしこのような賃下げだけでは成長率は上がらないので、付加価値の高い金融やITなどの分野で成長企業が出てこなければならない。ところがこうした分野では、日本企業の国際競争力は絶望的です。先日、あるシンポジウムで佐々木俊尚氏が「もう日本のITの競争力をどうするかという時代は終わった。内外の実力の差が大きすぎるので、これからは外資の参入をいかに防ぐかだ」といっていました。

他方、人材を育てる大学の質もそれに劣らず低いので、今の大学で勉強しても(慶応以上のレベルの大学は別として)ほとんど役に立たない。定員割れになっているような多くの私立大学は、専門学校のような「実学」に徹すべきだと思います。形骸化したアカデミズムを捨て、介護などの実技と使える英語を身につけたほうがいい。

もう一つは既存の企業にないクリエイティブな能力を育てることですが、これも今の大学では無理です。理科系の学力は高いが、その技術が製造業に片寄っている。文科系の大学院は学部より入りやすいので、低偏差値大学の卒業生が就職に失敗して東大の大学院に入ったりする「学歴ロンダリング」が多い。

池尾さんの期待するような知的エリートが出てこないと日本の未来に希望はもてませんが、そういう人材を育てるしくみが今の大学にはほとんどありません。民主党の「コンクリートから人へ」というスローガンはいいけれど、具体的にどう次世代の人材を育てるのかという戦略は何もない。まず大学制度の廃止を含めた高等教育の見直しをしないと、日本の衰退は止まらないと思います。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

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