教師に6年制は必要だろうか? 井上晃宏

井上 晃宏

 教職免許状の取得に大学院修士卒を義務づける方針だという。
http://www.asahi.com/edu/news/TKY200911210182.html
同時に、現在は2週間でしかない教育実習期間を延長することも検討されている。
 この改革は、薬学部6年制の出来の悪いパロディである。結果は以下のようになった。

 薬学部では、修業年数が延びた途端に人気が落ちた前例がある。薬剤師の資格取得にかかる年数が延びたのに伴い、06年度の入学者から6年制を導入したが、その初年度の入試の志願者は国公私立合わせて約10万1千人。前年から一気に3割強、5万人近く減った。その後も不振は続き、今春の志願者は約8万8千人に。私大では4割が定員割れになっている。

 教育年限は、直接の学費や失われる所得(機会費用)も含めて、資格取得のコストなのだから、待遇を改善しないままで費用を増やせば、質は落ちるに決まっている。
 この10年間で、以下のような職業の教育年限が延長された。
・美容師、理容師 専門学校の年限が1年から2年に、入学資格が高卒以上となった
・薬剤師 薬学部の教育年限が4年から6年になった
・看護師 准看学校はまだ廃止されていないが、正看学校は軒並み4年制大学に昇格した
・法曹 法科大学院卒が義務付けられた
 果たして、有資格者の能力は向上したのだろうか。むしろ、資格取得費用が増加した分だけ、資格取得者の資質が低下しただけではないのか。
 また、「入口」を狭くするだけで、すでに資格を取得した人の再評価は一切問題になっていない。
 資格制度の運用にあたっては、養成学校や業界団体の利害が主に考慮され、消費者のニーズは考慮されない。彼らにとっては、資格取得は難しく、ハードルは高い方が望ましい。消費者の利益代表を、何らかの形で制度改革論議に参加させる必要があると思われる。

コメント

  1. lumberman より:

    教師資格が大学院修士卒必須なんて論外だと思います。

    私は化学科卒で、電気の事はまったく素人ですが、いまは電子部品業界で、それなりにやってます。電子部品といっても、電気だけの知識じゃだめで、物理、化学、機械、電気の専門家を集める必要があるからなんですが。

    資格を厳しくしたところで、現場はそれを望んでいるのか疑問に感じます。おバカ学校であれば、努力と根性で生徒をその気にさせる教師が必要で、そういう人を教師として採用すればいい話です。最低限のことは身につけてる意味で、大学卒が必須とかではなく、門を広く、資格を取得したものとすればいい話です。

    結局のところ、少子で学校経営が危ういので、生徒を無理やり増やそうという教育関係者の陰謀でしょう。こんなのが教育者だから日本は危うくなる。困ったもんだ。

  2. eco_and_sport より:

    これまで井上晃宏氏が書かれた記事の視座に共感することが多い。

    ITの発展により、管理の制約が変わった(単位当たり、より多くを管理できるようになった)にもかかわらず、それがなかなか実社会に応用されずにいる。

    制約に応じて、あるべき姿は、全体は質を個に転化せずに、より多くの量を管理すべきである。個は量より質を高めるべきである。改悪だと思う。

  3. bobby2009 より:

    >美容師、理容師 専門学校の年限が1年から2年に、入学資格が高卒以上となった

    美容師、理容師の資格制度は不要です。ゆえに専門学校も不要です。髪の毛を切る仕事を、学校で学ぶ必要はありません。私が居住した香港、中国、フィリピンでは理容師は、新人君は職場で仕事を覚えていました。

    【規制緩和案 理容師の免許制撤廃】
    http://bobby.hkisl.net/mutteraway/?p=1665

    ついでですが、理容師と美容師の区別にも合理性がありません。男女、どちらの髪の毛も切れるようにするべきでしょう。

    【規制緩和で経済振興 理美容師の区別撤廃】
    http://bobby.hkisl.net/mutteraway/?p=1667

  4. Piichan より:

    モラトリアムのいきついた先が専門職における修士必須化の流れのような気がします。

    もし、ベーシックインカムが導入されれば、運営の細部まで国の監督をうける学校(いわゆる1条校)は、義務教育学校と大学だけで十分になるとおもいます。ベーシックインカムのおかげで子供の養育にお金がかからなくなり、学習の形態を柔軟にできるかもしれません。

  5. 海馬1/2 より:

    各種学校専門学校専修学校が不要とは思わない。
    理不尽な徒弟制度と組合による開業規制(暖簾分け)以外の道
    として、公的資格の獲得があるのは良いことだと思う。
     現実問題として、低学歴で専門課程に進む者はドロップアウト
    だから、見た目が悪いヤンキーか不思議ちゃんであるので、
    「学校」の態をとる経営には影響があるのでしょう。
     職業訓練とニート収容という若衆宿的役割を認めるべき。
    若衆宿・ニート収容でいえば、高等教育の長期化も同じこと、
    じっさい、新卒で就職できなければ留年するというjないですか。 

  6. sakagami1220 より:

    時間と金をかけれる人間が、有利になるような方向にルールを変えていくのは間違ってると思う。皆がみんな時間とお金を無駄にかけれる訳ではない。
    飛び級制度とか、単位を土日や平日の夜でも取れるようにするとか、いろいろな立場と環境にいる人でも進学して学べるようにルールを改革するのならともかく、意味もなく修業年数を増やすなんて言語道断だと思う。

  7. takarayui より:

    学生、生徒が減って、修業年数が延びる。
    これも少子化の影響なのでしょうか。

    普通に考えると、教員の数が変わらずに
    学生、生徒が減るなら、教育の質は向上するはずです。
    しかしそれだと授業料をアップするか、教員の給料を
    カットしないといけないってことかな?