今後の経済政策において教訓となるケインズの指摘  -前田拓生

2009年12月22日 15:12

昨日の白川日銀総裁のお話は非常に真摯な受け応えで好感の持てるものでした。日本経済の現状分析、日銀の置かれている立場(状況)、世界的な動向についてなど、今、どうなっていて「だから日銀がこのように行動した」などが良く説明されていると思いました。


まぁ、「今後」となると全てを煙に巻いたような話になっているので、「・・・で、どうするの?」という感じは受けますが、逆に言えば、それが今の日銀の行える政策の限界ということなのでしょう。つまり、もし、不測の事態になれば「非伝統的な金融政策」で対処することも否定しないものの、当面、日銀が行うべきことはなく、政府が行うべきということなのだということなのでしょう。

この点、私もそう思います。金融システムというのは、そもそも「インフラ」であり、「ある(存在している)」ということが必要ですが(つまり、「必要条件」)、「だから」といって、それがいくら立派であっても経済活動(実体経済)が動かなければ、金融システムだけで経済を良くすることはできないものです。すでに現状下で日銀は「できること」をすべて行っているので、後は、前向きの資金需要を作り出すように政府が何とかすべきということになります。

そこで「金融政策担当者が(財政政策に対して)言及するのは僭越ですが」というように前置きしながら、「経済(を成長させる)」という意味で重要なこととして話したのが、以下の3つです。

1.経済活動を自由に行えるようにする規制改革
2.人材や資金が動きやすくする労働・資本市場の改革
3.構造調整を支援するセーフティネットの整備

これを日本の経済“成長”のためということで「1.」「2.」を強力に進めれば「独占などの問題」や「貧富の差の拡大」など(市場の失敗)が起こるのでしょうね。だから「3.」が必要という感じになりそうです。総裁は「金融政策担当の責任者」であり、政府の政策を云々するつもりはなく、単に持論を述べられただけということなので、批判をするつもりはありません。

しかし、この3つが「経済“成長”」にとって重要であるとしても、これでは地方経済の活性化にはつながらず、外需頼みの脆弱な経済構造からは脱却ができないように感じます。人材や技術・おカネは都市や海外に流れ、空洞化してしまった地方ではやはり補助金頼りから脱却できないようになってしまいます(「政府の失敗」など)。

「経済成長を促す」という意味では仕方ないのですが、“成長”ということよりも「経済を安定的に持続させる」という考えをもっと真剣に考えるべきではないでしょうか。この点、ケインズは「わが孫たちの経済的可能性」で私たちに問いかけ、懸念もしています。

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目的をもって金儲けに奮闘している人たちがわれわれ一同を道連れに、経済的な豊かな山ふところまで導いてくれるかもしれない。しかしこの豊かな時代が到来したときに、その豊かさを享受することができるのは、活力を維持することができて、生活術そのものをより完璧なものに洗練し、生活手段のために自らを売り渡すことのないような国民であろう。

しかし余暇の時代。豊かな時代を、不安感を抱くことなしに期待できるというような国もなければ国民もないと、私は考えている。
(ケインズ全集 第9巻 pp328-329)
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