通信に「ユニバーサルサービス」は不要 - 池田信夫

2010年04月25日 22:36

「光の道」をめぐる論争はツイッターでまだまだ続いていますが、地方のユーザーからは「ユニバーサルサービスはどうなるのか」という問いが多いようです。これについては、経済学の標準的な考え方は、「地域ごとのコストの差を無視して全国一律の料金やサービスを行なうべきではない」ということです。

東京都内ならFTTHの集線率が高いので、月1400円でも利益が出るでしょう。しかし例えば、さだまさし氏の詩島にも数kmの海底ケーブルで電話が引かれています。この島にも、月1400円でFTTHを引くのでしょうか?


このような全国一律料金は、都市の住民に一種の「税金」を課して地方の通信サービスの赤字を補填するものです。いま光ファイバーのない1割の不採算地域に敷設するためには、ユニバーサルサービス基金のような形で利用者に「課税」するのではなく、不採算地域の料金はコストに見合う高い料金にして、その差額を自治体が所得補償すればいいのです。このような所得補償はアメリカの一部の州で行なわれており、その場合に最低料金でサービスを行なう業者を選定するオークションも提案されています。

現在の電話回線は、電電公社の時代に採算を無視して敷設されたもので、それをすべて民間企業がFTTHに替えるのは無理です。NTTでさえ3000万世帯という目標を2000万世帯に下げ、その達成もおぼつかない。それを国策会社で強制的に光に取り替えるというソフトバンクの案は非現実的で、1社独占への逆行です。それよりも過疎地には(必要なら自治体が補助して)無線など低コストのインフラでサービスすればいい。

過疎地に光ファイバーだけ引いても、地域振興の役には立ちません。今でも9割の地域でFTTHは可能なのに、3割しか使っていないということは、残りの6割は引いても使わないということです。それより人口は地方中核都市に集中し、FTTHなどのインフラ整備も都市に集積して効率化すべきです。これからアジアとの都市間競争が始まり、日本の地方都市のライバルになるのは大連やシンガポールです。

大事なのは、地方中核都市の生活環境やインフラのコストをアジアの都市なみにして工場などの流出を防ぐことです。すでに人口の地方中核都市への集中は進んでおり、たとえば北海道では札幌の人口は増えていますが、他の都市の人口は減っています。農業が主要な産業だった時代には、全国あまねく住む必要もあったでしょうが、これからの情報社会では都市に情報を集中したほうがいい。田園地帯は、むしろリゾートとして環境を保全すべきです。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

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