ゴールデンウィークにネットを見ていて気になったのは、ハフィントンポストの「ワタミ、49億円の赤字 不振の業界にスタバが追い打ちをかける可能性も」という記事でした。
大手居酒屋チェーンのワタミが5月2日に2014年3月期の連結決算を下方修正し、従来の12億円の黒字予想から、49.1億円の赤字になるとし発表しました。赤字の原因は、外食事業の既存店売上高が、前年比で93.1%と大きな落ち込みを記録したことが原因だと分析しているそうです。
一方のコーヒーチェーンのスターバックスは、新業態として、アメリカ国内において午後4時からビールやワインなどのを販売する店舗を、本格展開と報じられました。実は日本でもインスパイアードという店舗でアルコール販売を始めています。
居酒屋チェーンの不振はワタミに限ったことではなく、他の大手チェーンも同様の傾向にあるようです。これは、居酒屋でお酒を飲むというライフスタイルが変わってきていることが主因に見えます。
私のようなバブル世代は、社会人になったら、グループで集まってアルコールを飲むのが当たり前でしたが、最近はお酒を飲まない人も増えているそうです。彼らは居酒屋に行っても、ウーロン茶やコーラのようなソフトドリンクしか飲むものがありません。
しかも、2時間以上席に拘束され、途中で帰りにくい雰囲気の居酒屋での飲み会というのは、人気が無くなっているのです。
カフェのような場所にカジュアルに集まって、コーヒーを飲む人もいれば、ワインやビールを楽しむ人もいる。好きな時にジョインして、次の予定があれば途中で帰っても構わない。そんな、多様性に対応できるフレキシブルなお店の方が時代のトレンドに合っています。
これからも居酒屋でお酒を飲む人はいると思いますが、本当にお酒と酒のツマミを愛する人たちが集まるマニアックな場所しか生き残れないような気がします。そのためには、お酒や料理にこだわる必要があり、大手のチェーンの低価格戦略は、市場のニーズにミスマッチだと言えるのです。
無理やりこの2つの事実を記事に盛り込んでいるハフィントンポストですが、スタバがアルコールを販売することと、ワタミの不振には因果関係はありません。ただ、記事をキャッチーに魅せるのが目的にしか見えない、ミスリーディングな見出しと言えます。
スタバがビールやワインを出さなくても、大人数でビールやチューハイを2時間飲み放題といったサービスを大手居酒屋チェーンが続ける限り、利用者はこれからもどんどん減っていく。不振の原因はライバルの出現ではなく、顧客ニーズの変化なのです。
編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2014年5月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。