SNSプロバイダによるメッセージの削除は許されるか

Facebookが「困難な問題(Hard Questions):ヘイトスピーチ オンライン上のグローバルコミュニティにおいて、誰が何をヘイトスピーチと判断するのか」をリリースした。リンクは日本語だが、同一内容の英文は7月27日に公開されている。

それによると、人種・民族・国籍・宗教・性的志向・性別と性自認・深刻な障害や病気を理由に人々を直接的に攻撃することをヘイトスピーチと定義し、月に約288,000件をFacebook上から削除してきたそうだ。

このリリースは削除の問題点も列挙している。単純に特定の単語を削除するのではなく文脈や意図も判断しなければならないこと、それでも誤って削除する場合があると例示し、継続的な改善の重要性を訴えている。オンラインで大きな影響力を持つFacebookが直面している問題について素直に考え方を表明し、議論を待つ姿勢を示した点は評価できる。

一方、公正取引委員会は6月に「データと競争政策に関する検討会」報告書を公表した。大量のデータが一部の事業者に集中し、競争が制限され、消費者の利益が損なわれるおそれがある場合は独占禁止法による迅速な対応が必要であると、報告書は主張する。

公正取引委員会の報告書はデータ集中の経済的課題について検討したもので、ヘイトスピーチは視野に入っていない。しかし、大量にメッセージが集中するSNS事業者が独自基準でヘイトスピーチを認定して削除するのも、言論の自由という国民の利益を損なう恐れがある。

Facebookには、どのようなメッセージをどういう理由で削除したか、より詳細な情報の公開を求めたい。同時に、ヘイトスピーチ削除の妥当性について改めて国会で議論してはどうだろうか。2016年に「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」が成立施行され、一年がたった。法律の効果と課題を再検討するのは価値あることだ。