【映画評】ダイバージェント FINAL

渡 まち子
The Divergent Series: Allegiant [Blu-ray + DVD + Digital HD]

5つの派閥によって管理された社会がクーデターによって崩壊した近未来。シカゴの街は、新たな支配勢力によって巨大なフェンスで閉鎖されてしまう。どの派閥にも属さない異端者(ダイバージェント)のトリスは、恋人のテオら、仲間たちと共にフェンスの外の世界へ脱出することを決意。だがトリスらは、そこでダイバージェントにまつわる驚愕の真実と、ある組織が人類に対して行おうとしている恐ろしい陰謀を知ることになる…。

ベロニカ・ロスによるベストセラー小説を映画化したSFアクションシリーズの第3弾にして最終章「ダイバージェント FINAL」。人類が【無欲】【平和】【高潔】【勇敢】【博学】の5つの派閥に分類・管理される中、どの派閥にも属さない、危険な異端者(ダイバージェント)であるヒロインが、外の世界へ脱出し戦う様を描いていく。人間を何らかの基準で振り分ける傲慢、組織に属さないはみ出し者を切り捨てる非情、自分は何者かを問い続ける若者の成長、などを主要なテーマとした本シリーズの最終章は、外の世界もまた、決して安住の地ではない事実を突きつける。戦っても戦っても、他者を分類し支配しようとする人間の本質は変わらず、ヒロインの戦いに終わりはない。

遺伝子繁栄推進局という、名前からして怪しすぎる組織から母親のことや自分のことを知らされるトリスが、恋人テオの忠告に耳を貸さないことも解せないが、権力者に取り入ろうとするピーターや、トリスの兄ケイレブらの行動も、数々の修羅場をくぐってきた人間にしては浅はかで、世界をリセットさせる陰謀そのものも不完全。結局このシリーズは、トリスが覚醒する最初の部分が一番面白く、その後は息切れしてしまった感がある。これで平和になったという印象がまったくない完結編は、盛り上がりやカタルシスには欠けるのだが、人間の愚かしさがくっきりと浮き彫りになっていた。
【50点】
(原題「ALLEGIANT」)
(アメリカ/ロベルト・シュヴェンケ 監督/シェイリーン・ウッドリー、テオ・ジェームズ、オクタヴィア・スペンサー、他)
(盛り上がり度:★★☆☆☆)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年8月20日の記事を転載させていただきました(アイキャッチ画像は公式Facebookページから)。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。