ダーウィンの著した「進化論」はあまりにも有名な一冊です。生存競争、自然淘汰などが繰り返されて、「種」が進化したプロセスが書かれています。
生命力の長けた「強い種」が生き残り、ひ弱な「弱い種」が淘汰されたと誤解している人が多いようですが、ダーウィンは決してそのようなことは述べていません。
あくまで私の理解ですが、ダーウィンは「環境に適応した種」が生き残ってきたのであって、必ずしも「強い種」が生き残ってきた訳ではないと説いています。
具体例で考えてみましょう。
雪山の中に生命力旺盛な黒色の小動物と、さして強くはない白色の小動物がいたとします。
天敵である鷹や鷲から見れば、雪山の中では黒が目立つので黒の小動物が餌となって食べ尽くされます。
結果として、さして強くないけど保護色をした白い小動物の種が生き残るのです。
余談ながら、(南太平洋でしたっけ)肥満体型の人がとても多いそうです。
それは当該地域がしばしば食糧難に見舞われたため、食料の摂取効率の高い遺伝子をもった人だけが残った結果だと言われています。食料がふんだんにある現代では、摂取効率が高いと肥満なるとのことです。
企業の盛衰も、先程の雪山の小動物と同じではないかと私は考えています。
興銀、長銀、日債銀といった長信銀の役割をシンプルに考えると、企業の社債発行の代行だったのです。
今では世界的に成長した日本の重厚長大産業も、高度経済成長期には独自で社債を発行する力がありませんでした。
そこで、長信銀が金融債という債券を銀行の信用で発行し、集めた資金を企業に融資したのです。
つまり、企業は、長信銀を通して間接的に社債を発行していたということです。やがて、日本の重厚長大産業が世界的な企業に成長し、独自に社債を発行できるようになりました。
こうなると、わざわざ”利ざや”を払って長信銀を利用するより独自に社債を発行する方が企業にとって有利です。かくして、長信銀の果たす役割が激減したのです。これは、日本の大企業が独自に社債を発行するようになったという環境変化がもたらした結果です。決して、長信銀が他の銀行より体力が弱かったという訳ではありません。
同じように、IT技術の進歩とネット環境の急速な普及によって世界的に多くのネット企業が誕生しました。日本でもたくさんの大手ネット企業が成長しました。ソフトバンクや楽天のようにプロ野球の球団を持つようになった大企業もあります。
これらネット企業は、企業としての体力が優れていたというよりネットの普及という環境に適していたことが成長の主たる理由でしょう。ネット環境の普及が、成長の原動力になったのです。
先の小動物の例で考えれば、ネット企業は白色の小動物で長信銀は黒色の小動物だと考えれば分かりやすいでしょう。環境に適応した(させた)IT企業は成長し、人材や強靭性はあっても環境に適応できなかったの長信銀が消滅したのです。
現代は、AIやブロックチェーンという革新的な技術が導入されようとしています。IT革命以上の環境変化が起きるかもしれません。
新しい環境に適しているのはどのような産業で、どのような企業なのでしょう?
私は、(個人情報を含めた)大量の情報に関わる産業が有望だと思っています。
というのは、AIもブロックチェーンも、しょせんは「情報」という中身がなければただのハコモノに過ぎないからです。
もちろん、「情報をいかに取得・管理し、いかに料理するか?」が最大の課題であり、単に「情報」を蓄積しただけでは意味がないことは言うまでもありません。
編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2017年8月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。