遠いどこかの森にある村では、小さな青い妖精スマーフたちが幸せに暮らしていた。スマーフ村で唯一の女の子スマーフェットは、ある日、禁断の森で不思議なスマーフと出会い、その子が落とした帽子から、失われた村が存在することを知る。だが、意地悪な魔法使いガーガメルにその帽子を奪われ、失われた村の存在を知られてしまう。このままでは、禁断の森に住むふしぎなスマーフたちに危険が及んでしまう。スマーフェットは、新しい仲間たちを救うため、仲間たちと一緒に禁断の森へ旅に出る…。
ベルギーの漫画家ペヨが生み出した青い妖精スマーフたちの活躍を描くアニメシーズの最新作「スマーフ スマーフェットと秘密の大冒険」。スマーフ村唯一の女の子スマーフェットが新しい仲間たちを悪い魔法使いガーガメルの悪だくみから救うため、大冒険を繰り広げる。前2作はラージャ・ゴスネルが監督していたが、今回は「シュレック」などのケリー・アズベリー監督へとバトンタッチ。以前は実写とCGの融合だったが、今回はフルCGのアニメーションとなった。宿敵ガーガメルも実写ではなくアニメなので、動きはますます自由になっている。禁断の森のファンタジックな色彩や、不思議な形状の激流の川を下るシークエンスは、ワクワクさせられた。
本作のテーマはアイデンティティーの確立だろう。スマーフェットは、村で唯一の女の子であること、生まれながらのスマーフではないことが、彼女に疎外感を与えている。他者と違うことが異端ではなく個性であるとのメッセージと共に、生みの親(ガーガメル:悪)と育ての親(パパスマーフ:善)という隠れたテーマも見え隠れしたりする。物語はスマーフェットが冒険を通して、自分自身を肯定していくテッパンのストーリーだ。だが違和感がどうしてもぬぐえない。本作の主なターゲットである幼年期の子どもたちに対して、アイデンティティーについて論じるのは少し早い。それはティーンエイジャーにこそふさわしいテーマだが、それにしては本作はあまりにもお子様向けだ。カラフルでにぎやかなスマーフの世界観は味わえるが、メッセージが伝わりにくいアニメ作品になってしまったのが惜しい。
【50点】
(原題「SMURFS: THE LOST VILLAGE」)
(アメリカ/ケリー・アズベリー監督/(声)デミ・ロヴァート、レイン・ウィルソン、ジョー・マンガニエロ、他)
(カラフル度:★★★★★)
この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年10月19日の記事を転載させていただきました(アイキャッチ画像は公式Twitterから)。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。