ナチス・ドイツのアイロニーはいろいろあるんだが、強制収容所の門に掲げられていた「Arbeit macht frei(労働すれば自由になる)」はあまりにも醜悪な例として有名です。これは19世紀のアンチ・マルキストでドイツ・ザクセンの政治経済学者ハインリッヒ・ベータ(Heinrich Beta)の著作の一節とされ、また当時のドイツでは「なになにから自由になる」というフレーズがはやっていたようで、あちこちで同じような文句が散見されるそうです。
なぜか、ナチス・ドイツはこの「Arbeit macht frei」という言葉が好きで、鉄で文字を作って溶接したアーチをアウシュヴィッツやグロースローゼン、ダッハウ、ゲシュタポの刑務所などの強制収容所の門の上に高々と掲げました。こうした劣悪な環境で働けば死に到ることは必至なわけで、この「自由」とはいったい何を意味するのか、あまり深読みしなくてもわかる。また、アウシュヴィッツの文字は「arbeit」の「b」が逆さまになっていて、これを作らされたユダヤ人の錠前屋が意図的なメッセージを込めてワザと逆さまにした、と言われています。
ナチス・ドイツの強制収容所は、戦後に「負の遺産」記念館として残されているものも多いんだが、21世紀に入ってご多分に漏れず戦時中の記憶が薄れてきたせいか、ネオ・ナチや観光客らの手によって記念館の遺物が盗まれるようになります。ポーランドのアウシュヴィッツでも2009年に「Arbeit macht frei」の鉄製アーチが盗まれ、偽のコピーとスリ換えられる、という事件が起きました。
表題の記事では、11月2日にダッハウの強制収容所記念館のメインゲートの鉄格子戸に溶接されていた「Arbeit macht frei」の部分が盗まれた、と書いています。ドイツ南部にあるダッハウの強制収容所は、1933年に政治犯を収容する目的でナチによって設置されました。1945年に解放されるまでの12年間に20万人以上が収容され、4万人以上が殺されたらしい。盗まれたのは、横が190センチで縦が39センチほどの鉄製の文字列で、犯人は今のところ捕まっていないようです。
バイエルンにあるダッハウ強制収容所のメインゲートと盗難に遭った「Arbeit macht frei」。
RT
Nazi ‘Arbeit macht frei’ sign stolen from Dachau concentration camp
Research partnership is key to biodiversity conservation
PHYS.ORG
研究者や研究機関などの強固な協力関係は、生物多様性を保つためのキーワードになる、という記事です。「蛸壺化」とか「象牙の塔」などと言われるように、研究者や科学者、学者というのは唯我独尊なところがあり、そうでなければ独創的な成果など得られないんだが、反面、ありとあらゆる情報をヒントにして自らが立てた仮説に向かってアプローチしていくことも必要です。学会や研究者仲間、研究室の部下などとコミュニケーションする能力がなければ、なかなか研究も前進しないでしょう。さらに、この記事で書いている生物多様性というようなテーマは、単独の研究ジャンルだけでは全体像をつかむことさえ不可能。というわけで、みんなで協力し合ってやっていこうよ、という話になるようです。
This Chart Shows How The US Military Is Responsible For Almost All The Technology In Your iPhone
BUSINESS INSIDER
青色LEDを発明して今では米国カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授になった中村修二さんは、研究費の多くを米軍関係の予算から得ている、と言っていました。この記事のチャートにも出てくる「DARPA(Defense Advanced Research Projects Agency、国防高等研究計画局)」もそうした関連機関の一つだそうです。そういえば、当方は東京で中村さんを取材した折、NASAの技官を紹介されたことがあるんだが、彼女も予算を下す職務の人間でした。この記事では、たとえば、あなたのiPhoneの中にある技術の多くは米国防総省の予算、つまり税金で開発されたものだ、と書いている。中村さんは、軍事用と民生品の境界は限りなくあいまい、と言っていたんだが、我々の身の回りにある科学技術で軍事用とで開発されていないものは珍しいかもしれません。
エクレストン、F1救済にはトップチームの犠牲が必要
ESPN F1
F1でスポットではない初の黒人レーサーの出現は、2007年のルイス・ハミルトン(マクラーレン・メルセデス)まで待たなければなりませんでした。有色人種のレーサーは「名誉白人」の日本人など、数えるほどしかいない。もともとF1に代表される自動車レースは、ヨーロッパ貴族の道楽というわけで、かなり閉鎖的な世界です。そんなわけで世界の経済の趨勢や力学が変わってくれば、当然の如くF1はアンシャンレジームの遺物となる。まあ、ハミルトンも黒人と白人のハーフなんだが。相も変わらず、この記事ではF1内部が「金の配分」で揉めている、と書いている。ヨーロッパ貴族は吝嗇だし金にこだわる。だからこそ、市民革命後も生きながらえてこれたわけです。
国会図書館、著作権切れ書籍をオンデマンド製本 Amazonで購入可能に
ITmediaニュース
これは便利です。デジタルアーカイブにあるとはいえ、やはり紙の本で読みたい、という願望はあります。しかも安価です。インプレスってやりますな。これ、利用するしかないでしょう。
紙面イメージ:上『三陸沖強震及津浪報告』、下『都会で流行の家庭美容美顔術』インプレスR&Dのプレスリリースより。
アゴラ編集部:石田 雅彦