鎌倉に住むミステリー作家・一色正和のもとに、年若い妻・亜紀子が嫁いでくる。鎌倉は不思議な場所で、人間と、幽霊、妖怪、死神などが仲良く暮らしていた。そんなある日、亜紀子が不慮の事故で亡くなってしまうが、彼女の死を受け入れられない正和は、亜紀子の魂を取り戻すために黄泉の国へと向かうことに。そこで正和は亜紀子を連れ去った魔物たちと出会い、何とか愛する妻を取り戻そうと奮闘するが…。
人と人ならざるものが同居する不思議な場所・鎌倉を舞台に一組の夫婦の愛の物語を描くファンタジー「DESTINY 鎌倉ものがたり」。原作は「三丁目の夕日」と並ぶ西岸良平氏のベストセラー漫画で、映画「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズの山崎貴監督がメガホンを取っている。犯罪研究や心霊捜査にも通じている主人公・一色は、作家活動の傍ら、鎌倉署の捜査にも協力し怪事件を解決したりしている。何千年も昔から妖気が溜りに溜まっていろいろな怪奇現象が起こる鎌倉は、魔界や黄泉の国の間で、生者と死者の思いが交錯する場所。映画前半は、鎌倉ビギナーの亜紀子の目を通して、不思議スポット・鎌倉での一色夫妻の暮らしぶりが描かれる。
死んだ妻を探して黄泉の国へ…というのは、まるでギリシャ神話のオルフェウスのよう。ミステリー作家・一色は、竪琴こそ弾かないが、魔物から妻を取り戻すべく、アクション全開だ。後半は、ちっとも暗くない黄泉の国を舞台に大冒険…という展開なのだが、前半のほのぼのとした日常描写と、後半のファンタジーがどうもしっくりこない。別々の2本の映画ならきっとより深く描けただろうに…と思うが、不思議な鎌倉が架け橋になって、虚と実をつないでいるということだろう。「千と千尋の神隠し」を思わせる黄泉の国のビジュアルは、精緻に作り込まれていて素晴らしく、さすがはVFXの使い手・山崎貴監督だ。「ALWAYS」組の俳優たちが多く出演し、安定の上手さを見せるが、死神の安藤サクラと貧乏神の田中泯の“神様演技”が意外性があって、物語の上でも、いいアクセントになっている。何度生まれ変わってもやっぱり二人は結ばれる。見終われば、壮大なラブ・ストーリーだったが、レトロ・モダンなファンタジーとして楽しんでもらいたい作品だ。
【65点】
(原題「DESTINY 鎌倉ものがたり」)
(日本/山崎貴監督/堺雅人、高畑充希、堤真一、他)
(レトロ度:★★★★☆)
この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年12月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。