日本人は会議好きである。以前勤務していた会社では、1日の6~7割は会議によって占められていた記憶がある。しかし、無駄な会議であっても、会議を開催した事実が積み重なると、「仕事をした気分になる」から不思議なものだ。非効率的な会議に出席しても成果を望めない。なにか、いい方法はないものか。
そのような時には、会議のプロに聞けば早い。沖本るり子さんは、「5分会議」を活用した、人財育成や、組織活性化の講師・コンサルタントとして活動中。TBS報道番組Nスタで“プレゼンの達人”と紹介された。近著に、『生産性アップ! 短時間で成果が上がる「ミーティング」と「会議」』(明日香出版社)がある。
「ミーティング」と「会議」の違いとは
――ミーティングや会議は、私たちの日常にあふれている。どんな組織でも、毎日のように共通して行われている。しかし、両者の違いを説明できる人は非常に少ない。
「企業では、クレーム対応会議、営業会議、商品開発会議、経営企画会議などといったさまざまな会議があります。お客様との打合せや商談もありますよね。意味合いが同じようなものが多くあります。ただ、企業によって内容や、話し合いの進め方などで、使い分けて命名しているかもしれません。」(沖本さん)
「広辞苑で調べるとミーティングは『会』『会合』『打合せ』です。会合として評議することです。何かを決めるため集まって話し合うことであると解釈できます。つまり、『ミーティング』と『会議』の違いは、決めることがあるかないかの違いなのです。」(同)
――沖本さんは、決めることがない場合は「ミーティング」、最終的に決めることがある場合を「会議」と定義する。お昼の軽い打合せを「ランチミーティング」というが、役員が集結する重要会議を「取締役ミーティング」とはいわない。言葉の違いとはいえ「ミーティング」と「会議」には明確な違いがあるようだ。
「会議では、本来、議論が活性化していれば脳が覚醒する場です。会議の時間はゆっくりとまったりとした、休息、睡眠をとる時間になる、などということはならないはずです。ところが、講演会やセミナーで『会議と聞いて連想する言葉は』と質問すると、必ず出てくるのが『一方的な話で眠い』という回答です。」(沖本さん)
「会議で眠くなるとはどういうことでしょうか?眠くなる会議でよくあるのが、資料を読み上げるという一方的な報告ばかりの会議です。しかも、参事前配布している資料を読み上げるだけなので内容は苦痛な朗読会と同じです。」(同)
眠くなる会議とはどのようなものか
――さらに、データのみの分厚い資料だとさらに苦痛が増してくる。発表者の声のトーンも一本調子で抑揚がなければ、それは子守唄になってしまう。
「私が、A4サイズの企画書を1~2枚にわかりやすくまとめてお客様に提出しようとしたところ、複数の方から『まとめずに分厚くお願いします』といわれたことがあります。そんな資料は誰も読まないと思うのですが、『分厚くあれば安心』という変な意識があるのです。これだから、資料作成ばかりに時間がとられてしまうのです。」(沖本さん)
「こんな資料の読み聞かせをする『会議』では、会議の印象が悪くなってしまうだけ。このような会は『報告会』と名称を変えましょう。会議といってはいけません。」(同)
――ほかにも、だらだらと一方的に話が長い「演説」みたいなものもある。これは会議ではなく「演説会」になる。社内に存在する会議について精査をしてはいかがだろうか。
「会議の目的は『課題解決』です。起きてしまったことを追求するのではなく、将来の課題を設定し、かつ解決策を含むからです。この『課題解決』を、自分ごととして捉えなければ、成果が高まることはありません。」(沖本さん)
「私がかつて参加していた会議で徹夜明けでも睡魔が襲ってこなかったものがあります。なぜなら、みんなの意識がしっかり自分ごとになり、白熱した議論になっていたからです。『自分ごととして捉えることができ』『脳が活性化する』『白熱する仕組み』を取り入れることができれば、眠くなることはないでしょう。」(同)
――参加意識の高い会議にするには、やり方にコツがありそうだ。あなたの会社ではどうだろうか。眠くならない「ミーティング」と「会議」を開催したいものである。
尾藤克之
コラムニスト