きのうの記事に反響が大きいので、経緯を補足しておく。チェルノブイリ事故については、ちょうど先週のGEPRで紹介したので、読んでほしい。
「たかじんのそこまで言って委員会」が収録されたのは28日だが、そのときスタジオでプロデューサーに「あの5万5000人という数字はおかしいから、調べたほうがいい」と言った。その後スタッフから電話がかかってきたとき質問したら「ネットで調べたら5万5000という数字はある」というので、28日の夜にプロデューサーに次のようなメールを出した。
竹田の「55000人」はこれですね。
チェルノブイリ原発事故処理、旧ソ連で5万5千人死亡(2000.4.27朝日新聞)
チェルノブイリ原子力発電所の事故からちょうど十四年がたった二十六日、ロシアのショイグ副首相は事故処理にあたった旧ソ連の約八十六万人の作業員のうち、放射線障害などでこれまでに五万五千人が死亡したことを明らかにした。これは「延べ86万人の作業員のうち、15年間に55000人が死んだ」つまり15人に1人が死んだという当たり前の話。ロシア政府の正式の報告書は、国連の報告書と同じく59人です。これが日本政府も引用している世界の定説。
返事がないので同じメールをプロダクションにも出したが、何も返事のないまま「5万5000人」が放送された。バラエティ番組だから1回ぐらい言わせるのは演出上しょうがないが、竹田恒泰が私の話をさえぎって叫ぶ場面が何回もくり返され、あたかも私の引用した国連報告書と同格のデータであるかのように見える。
しかし上の記事でもわかるように、これは単に作業員のうち何人が死んだかを述べているだけで、「放射線障害などで」というのも朝日新聞の付け加えた話だ。作業員の死因について、ロシア政府の公式発表はない。
チェルノブイリの教訓は、このようにメディアが誇大に伝える恐怖が人々を混乱に陥れ、大きなストレスを与え、コミュニティを破壊したことだ。私は「そこまで言って委員会」でもそれを説明したが、読売テレビにとっては、放射線についての正しい知識を広めるより、視聴率のほうが大事なのだろう。
慰安婦問題では、朝日新聞が嘘つきで「そこまで言って委員会」は本当のことをいっていたから、多少は乱暴な演出も許された。しかし今回は竹田が嘘つきであり、彼の話がデマであることを事前に知りながら放送した読売テレビも共犯である。