新聞を読まない方が増えている、ということなので、六法全書などは見たこともない、という方が多いだろうが、日本国憲法には日本語のものと英語のものがある、ということをご存知の方はどの程度おられるだろうか。
最近どうなっているか知らないが、私が普段使っていた三省堂の模範六法には日本語の日本国憲法の後ろに英文の憲法が掲載されていた。他の法律には英文がないのに、なぜ憲法には英文が載っているのだろう、などと漠然と思っていた。
ところで、日本の憲法が一部ではマッカーサー憲法などと称されていた、ということはご存知だろうか。
マッカーサーの指示を受けて大日本国憲法の改正作業が始められ、さらにまかーさーの指示を受けてGHQ民生局に所属するアメリカの軍人が8日間で英文の憲法草案を書き上げた、などという歴史的事実を踏まえれば、日本の憲法がなぜマッカーサー憲法と呼ばれたか、ということを了解されるはずである。
GHQから交付された英文の憲法草案を日本政府側で日本語に翻訳し、逐一GHQの承認を得ながら適宜修文し、内閣の日本国憲法草案にして国会に提出した、という事実がある。
日本の国会で審議し、大日本国憲法の定める憲法改正の手続きに則って公布、施行に至っているから日本国憲法は純正な日本の憲法だ、と主張される方もおられるかも知れないが、憲法制定の当時、日本は連合国の占領下に置かれており、GHQの承認なくしては如何なる法律や政令の制定も出来る状況にはなかった。
憲法も然り。
法律の公布の際には官報に掲載されることはご存知の方が多いだろうが、当時の日本には英文の官報もあった。
新しく制定された日本国憲法は、日本文の官報と英文の官報の双方に掲載された。
内閣が国会に提出した日本国憲法案(ただし、当時の正式名称は未確認。念のため)について、当時の衆議院と貴族院とでそれぞれ審議をし、それぞれの院の審議の過程で若干の修正をして可決成立したのが現在の日本国憲法だが、その修正についてはその都度GHQの承認を得ていた。
当時のGHQの上層部の人たちがどの程度日本語に習熟していたのか分からないが、GHQの指示も承認も、すべて英語でなされていたはずである。
日本国憲法の制定過程を検証してみると、日本国憲法の正文は日本語の憲法だけなのか、という疑問が湧いてくる。
ちなみに、私は、日本語の日本国憲法も英文官報に掲載されていた英語の憲法も日本国憲法の正文だと言わざるを得ないのではないか、と考えている。
アメリカの政治家の中には、日本の憲法はアメリカが書いた、と考えている人がそれなりにいるようである。
ブッシュ大統領(親ブッシュか子ブッシュかは、未確認)は大統領に就任する前の選挙運動中に、日本の憲法はアメリカが書いた、と講演の中で述べたことがあるそうだ。
当時の日本の新聞はそういうことは報道していなかったようだが、アメリカの政治家の中には現在でもそういう認識の人が結構いるようだ、ということぐらいは承知されていた方がいいのではなかろうか。
草の根改憲運動なり草の根立憲主義の可能性について意見を聞きたい
憲法について熱く語れる人を、一人でも増やしたいと思っている。
まあ、大事なものは失って初めてその価値を知る、というところがあるから、今の時点で憲法を熱く語れる人はほんの一握り、ということかも知れないが、何はともあれ、皆さんの憲法に懸ける熱い想いをトコトン語っていただきたい。
日本の憲法の成立過程について深い知識をお持ちの方は、そんな当たり前のことを、などと仰りたいようだが、世間には新聞も読まない、読書もしない、世の中のことには殆ど関心がない、という方が結構おられるようである。
まずは、基礎的な事実を踏まえながら、少しづつ認識を深めていく必要があるだろうと思っている。
そんなことは知っている、などと言われないで、まずはご自分の熱い思いを語っていただきたい。
ここは知識の多寡を競う場ではなく、互いの知見を交換し共有する場だ、ぐらいに受け取っていただければ幸いだ。
蒙を啓く、という言葉がある。
ご自分が最高の知恵者、知識者だという思いを持たれているのだろうが、最高の知恵者、知識者であっても文殊には勝てない。
三人寄れば文殊の知恵、と言う。
幸い私のブログの読者には、ご自分の得意な分野では文殊を凌ぐ知恵の持ち主の方がおられるようだ。
その文殊を凌ぐ知恵を、凡人の私たちにお裾分けしていただきたい。
私のブログは、そのためにコメント欄をオープンにしてある。
なお、私が今考えているのは、草の根からの改憲運動は成立するだろうか、ということである。
立憲民主党の標榜される草の根立憲主義にも関心がある。
私が出来ることは、あくまでも皆さんの考える材料の提供だけ。
知恵を絞られるのは、皆さんである。
よろしく。
編集部より:この記事は、弁護士・元衆議院議員、早川忠孝氏のブログ 2018年1月29日の記事をまとめて転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は早川氏の公式ブログ「早川忠孝の一念発起・日々新たに」をご覧ください。