「トップ・ガン」、「愛と青春の旅立ち」などのアメリカ映画を観ていると、米国での軍人のステータスがいかに高いかを痛感させられます。
確か、「トップ・ガン」では、空軍の操縦士になれなくて婚約者に去られた男性がいたと記憶しています。
妻としては夫が安全な仕事の方がいいんじゃないか…と当時思った記憶があります。
ローマ帝国が盤石の軍事力を誇ったのは、ローマの軍隊が常に訓練を重ね、戦闘能力が高かったからだそうです。戦争が頻発して死の危険に直面する軍人をどうやって集めたかというと、軍人の待遇を良くしたからだそうです。社会的ステータスもさることながら(昇給付きの)定額の給与ももらえたので、若者は農村で生活するより軍人に憧れました。
それに比べ、日本の自衛隊員や犯罪捜査に携わる警察官、災害に最前線で立ち向かう消防士などは、あまりにも劣遇され過ぎていると感じます。
戦闘行為こそ現在はありませんが、対外的緊張の最前線で働き、災害時には命懸けで人命救助にあたる自衛隊員たち。大災害に立ち向かう消防士たち。極悪な犯罪者を(何日間も家を空けて)追い続ける警察の捜査員たち…彼ら彼女らの社会的ステータスをもっと上げるべきではないでしょうか?
多くの親たちは、わが子に大企業に就職してほしいと願っているようです。
社名の前に、三菱とか三井とかいう金看板があれば世間体もよく社会的ステータスがあり、結婚相手にも恵まれます。
野村投信で働いていた時、出世競争に敗れた次長が、「残りの人生を自分らしく生きたいとも思うけど、不動産屋に行っても車のディーラーに行っても”野村の看板”が威力を発揮することを考えると…思い切れないなあ」と、しみじみと語っていました。
その“野村の看板”を外して脱サラした私は、職安に行っては(訊ねもしないのに)怪しげなお兄さんから失業手当の申請書の書き方と上手な利用方法を教えられ、巡回に来たお巡りさんには「司法試験受験してるの~。落ちても絶望しないようにね。警察官募集中だからいつでもおいで」と慰められ、アパートを借りるのにも苦労しました。
最近とみに思うのですが、日本では最前線で頑張っている人々に対する敬意が払われていないのではないでしょうか?
自衛官や警察官、消防士だけでなく、宅配便の配達員さん、介護士さん、看護師さん…等々、最前線の人たちが劣遇され、上の方でどっかり座って暇を持て余している人たちが厚遇されています。
新卒一括採用という制度が、このようなアンバランスの大きな原因になっていることは間違いないでしょう。
終身雇用と相まって(職場が潰れない限り)、大企業や大組織に入ってしまえば、たとえ出世競争に敗れて出向・転籍となっても、最低でも最前線で働く人たちを束ねる地位が約束されます。
防衛省でも警察でも、キャリアで入れば最前線で働き続ける人たちを後ろから指揮する立場に立てます。
「大企業を辞めて起業する」などと言うと、反対する両親が多いと思います。
両親が息子の会社の連帯保証人になった挙句、家族全員自己破産という例は世の中にたくさんありますから。
日本での起業率が極めて低いのには、このような背景があるのです。
現在の閉そく状態を打開するには、人材の流動性を高めるしかありません。解雇規制の緩和・撤廃はそのための有効な手段です。
また、成功した起業人や起業中の人たちへの(税制や子育てへの)優遇措置を充実させれば、新規起業が増えると考えます。
大企業に入って「じっと我慢している人」が一番得をする社会って…やはりおかしいと思いませんか?
編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2018年2月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。