2月14日に発表された1月の米消費者物価指数は前月比0.5%の上昇となり、市場予想を上回った。前年同月比では2.1%の上昇となる。これを受けて14日の米債は売られ、10年債利回り(米長期金利)は一時2.92%まで上昇した。
14日の米国株式市場は、この金利上昇を嫌気した売りが先行したものの、金利上昇を受けた金融株の買い、原油先物の上昇を受けた石油関連株の買い、さらにはアップルなどハイテク株にも買いが入ったことなどから、ダウ平均は253ドル高となり、ナスダックも130ポイントの上昇となった。
15日に米長期金利は一時2.94%まで上昇していたが、この日のダウ平均は306ドル高となり25000ドル台を回復している。
2月5日に米国株式市場で、ダウ平均は一時1597ドル安となり、取引時間中として過去最大の下げ幅となり、引け値も1175ドル安となって引け値の前日比でも過去最大の下げ幅を記録した。
5日のダウ平均の大きな下落のきっかけは米国の長期金利とされた。2月2日に発表された米雇用統計で平均時給が高い伸びとなったことから、FRBの利上げペースの加速観測が強まり、2日の米10年債利回りは一時2.85%と2014年1月以来の水準に上昇した。しかし、5日の米長期金利はダウ平均の急落で2.70%に低下しており、あくまで米長期金利はひとつのきっかけに過ぎなかったようにも思われる。
14日には消費者物価指数の上昇によって、米長期金利が5日の2.85%も大きく上回り、2.92%に上昇したにもかかわらず、米株は上昇していた。この背景のひとつとして米株の変動性指数(VIX)指数が不安心理が高い状態とされる20を下回ったことなども指摘されていた。このときの株価の急落はゴルディロックス相場(適温相場)とも呼ばれていた相場の反動が一時的に起きたとみることができよう。
米長期金利は次の節目とされる3%に接近してきた。3%あたりであれば、ゴルディロックス経済(適温経済)やFRBの金融政策の正常化により利上げに即した金利上昇ともいえる。しかし、ここからさらに金利上昇が加速されるとなれば、米国債の需給悪化や米国の財政悪化なども意識されたものとなる可能性があり、注意したい。
そして米長期金利の上昇と米株の上昇が相まっていたにもかかわらず、ドル円が107円を大きく割り込んできている。この理由の説明はなかなか難しいが、金利や景気などとは別な要因によって動いている可能性がある。そのひとつが日銀総裁・副総裁人事の不透明感ではなかったかと個人的には思っている。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年2月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。