「重ね言葉」とは
近年、「重ね言葉」を使っている人が多くて気になります。たとえば、手紙で「お体をご自愛ください」と書くのは間違いです。「ご自愛」とは、自分自身の体を大切にすることを呼びかける表現なので、「お体」の後に続けると、繰り返しの「重ね言葉」になります。正しくは「ご自愛ください」、これだけで十分なのです。
その他にも、「今の現状を述べると」、「返事を返す」、などの言葉を使っている方を多く見受けます。もちろんこれも間違いです。現状という言葉にはすでに「今」という意味がありますので、「今の」という語は不要、そして返事を返す、についても返事の中に返すという意味がすでにありますので、これも返事をするだけで十分なのです。
以下もありがちな「重ね言葉」です。うっかり使わないよう注意してください。
<あとで後悔する>
後悔は先にはできません。必ず後にするものなので、「後悔する」のみで構いません。
<一番最後に持ってくる>
最後には「物事のいちばん後、または後ろ」という意味があります。一番が不要です。
<違和感を感じる>
違和感とは「心理的にしっくりこない感覚、不自然なさま」という意味です。違和感の後に言葉をつなげるなら、「違和感を覚える」が正しい使い方になります。
気をつけたい重ねる言葉
● 馬から落馬する → 落馬する
● 内定が決まる → 内定する
● 過半数を超える → 過半数を占める
● 元日の朝 →元旦に
● 色が変色する → 変色する
● 日を追うごとに → 日を追って、日ごとに
● 日本に来日 → 来日
● はっきり断言する → 断言
● すべてを一任する → 一任
読点を正しく打つ
読点の役割は読み違いを防ぎ、理解を早める手助けをすること。打ちすぎると流れが悪くなり、読みにくく、うっとうしくなるので、わかりやすさと読みやすさの両方から考えるべきです。また、読点の打ち方で、文章の意味が変わることがあります。
A.妻は、嬉しそうに笑う彼を見つめた。
B.妻は嬉しそうに、笑う彼を見つめた。
Aでは、嬉しそうに笑っているのは彼です。Bでは、笑っている彼を妻が嬉しそうに見つめている風景になります。また、読点の打ち方で主体が変わってきます。以下は例文ですが、使いかたを覚えているとバリエーションが広がります。
<主語の後に打つ>
彼女は、駅前にあるベーカリーで働いている。
<接続詞の後に打つ>
そして、兄は出発した。
<接続助詞の後に打つ>
薬を飲んだが、よくならなかった。
<独立語の後に打つ>
はい、こちらから連絡します。
<時や場面が変わるところに打つ>
彼が帰宅したとき、家には誰もいなかった。
<同じ役割の動詞や形容詞が続くときに打つ>
静かで、明るい別荘ですね。
<「」の代わりに打つ>
きっと帰ってくる、と彼は言った。
<ひらがなや漢字が続く場合に打つ>
そろそろ、そうじをしよう。
参考書籍
『あなたの文章が劇的に変わる5つの方法』(三笠書房)
尾藤克之
コラムニスト