すでに報道されているように、第4世代移動通信システム(4G)用の周波数の割り当てについて総務省の電波監理審議会の結果がでました。
今回の応募には、4つの事業者(NTTドコモ、KDDI株式会社/沖縄セルラー電話、ソフトバンク株式会社、楽天モバイルネットワーク株式会社)が手を挙げていましたが、「3.4ギガヘルツ帯」にはドコモとソフトバンクが、「1.7ギガヘルツ帯」には、KDDI/沖縄セルラーと楽天が、それぞれ割り当てられる予定です。
これにより、楽天は、大手キャリアの電波を借りている既存のMVNO事業に加え、自前のネットワークを持つMNOとして正式に来年スタートを目指すことになります。
楽天は携帯電話でも新機軸を打ち出すか?
「第4のキャリア」を目指す楽天の新規参入をめぐっては、三木谷浩史社長が昨年末に参入の意思を表明してから、注目が集まる一方で、疑問視する意見もたびたび報じられていました。
携帯電話市場は、巨額の設備投資を必要とすることが主たる理由です。そうした中で、楽天は2月下旬に総務省に電波割当てを申請。基地局の整備に6000億円を投資し、約10年後をめどに1,000万人のユーザー獲得を目指すプランを提出しました。
今回の募集案件では、携帯市場の活性化を促す意味で、新規事業参入に加点する方式をとったこともあり、楽天参入を確実視する見方が報じられていました。
しかし公共性の高い通信インフラを担う以上、携帯電話事業への参入は、設備投資を行うだけの経営体力、質の高いサービスを安定的に供給できるか持続可能性なども問われます。電波監理審議会が公正かつ適正に審査を行い、今回の結果となったことはお伝えしておきたいと思います。
携帯業界の新規参入は、イー・モバイル(のちにソフトバンクが買収)以来11年ぶりのことです。楽天は、これまで銀行や証券、旅行、プロ野球など、さまざまな業界でネットを駆使し、新機軸を打ち出してきました。
適正な競争による料金引き下げへの期待も報じられていますが、既存のキャリアにはないアイデアがあるのかも消費者の関心を集めそうです。総務省に電波割当てを申請してからも、基地局の整備に東京電力の鉄塔などの設備を活用し、初期投資を抑えながらネットワークを広げる構想を発表しました。
楽天は、国民の財産である電波を活用し、公共的なサービスの担い手としての使命を果たしつつ、楽天ポイントを活用した同社の「経済圏」にモバイル事業をどう活用するのか、引き続き注目していきたいと思います。
電波を有効利用して民間のチャレンジを後押し
さて、携帯電話市場への新規参入の話題に終始しがちですが、もうひとつ、今回のニュースを考える上で重要な視点があります。それは、国民の資産である電波を有効利用することで、民間のチャレンジを後押しし、結果として経済成長を目指すというモデルを形づくることです。
今回の割当て対象となった「1.7ギガヘルツ帯」と「3.4ギガヘルツ帯」は、防衛省や放送局が使用してきたところを整理し、民間に開放した経緯があります。その結果として今回4社で約1兆円の新たな設備投資が行われます。
電波は限りある社会インフラなので有効に利用していかなければなりません。
昨年5月、自民党の行政改革推進本部で『公共用周波数の民間開放に関する緊急提言』を政府に提出した際にもブログで書きましたが、2010年から2016年だけで通信量は20倍に増加し、今後の自動運転、ドローンなどIoTの普及、さらに2020年オリンピックパラリンピックを見据えると、電波の不足が予想されます。
アメリカやイギリスなどのように、公共用の周波数を効率化・再編し、民間に割り当てることで「Society 5.0」の時代に対応していくことが行政側にも求められています。
今年1月の訪米で、PSーLTE(公共安全LTE)システムの日本での導入可能性についても検討してきましたが、楽天による携帯市場への参入のニュースを機に、携帯やインターネットなど日々の生活で当たり前に使っているサービスを支えている、電波の有効利用について関心をもっていただけると、改革に取り組んでいるものとして嬉しいです。
引き続き民間のチャレンジを後押しするフェアな電波制度にむけて改革に取り組んでいきたいと思います。
編集部より:この記事は、総務政務官、衆議院議員の小林史明氏(広島7区、自由民主党)のオフィシャルブログ 2018年4月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は小林ふみあきオフィシャルブログをご覧ください。