8月30日の欧米市場はリスク回避のような動きとなっていた。これはトランプ米大統領が中国からの輸入品2000億ドル相当への関税を来週に公聴会が終了し次第、発動したい考えだと伝えられ、これを受けて米中貿易摩擦の激化懸念が再び強まったこともある。
それだけではなく、新興国通貨下落によるリスク回避の動きでもあった。
アルゼンチン中央銀行は30日、主要政策金利を45%から60%に引き上げた。31%を超えているインフレ率を制御すると同時に、自国通貨の一段の下落に歯止めをかけたい考えだが、大幅な利上げにもかかわらずアルゼンチンペソはこの日の取引で、終値ベースで最安値を更新した(ロイター)。
トルコの通貨リラの急落に端を発した「トルコショック」が他の新興国にも影響を与え、新興国の通貨安が加速している。ブラジルやインドの通貨も過去最安値の水準に下落しており、通貨安に伴う輸入物価の上昇を受けて、新興国の債券も売られ、利回りが上昇している。
30日の米国株式市場は下落していたものの、ここにきてナスダックやS&P500が過去最高値を更新するなどしており、いまのところ金融市場でのリスク回避の動きは一時的なものに止まっている。31日は新興国通貨の下げが一服しており、過度な警戒感は後退したようにもみえるが、油断は許さない状況となりつつある。
新興国の債務の大きさなども気掛かり材料となっている。トルコの対外債務の約20兆円が1年以内に返済期限という米銀試算も報じられている(ロイター)。
米国株式市場の地合いに変化が生じるようなことがあると、新興国リスクが大きく表面化してくる可能性もありうる。これが世界的な危機となることは、いまのところ考えづらいものの、まったく無視できる状況でもない。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年9月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。