甘利明衆議院議員を委員長に、私が事務的な取りまとめ役を務めて、政策グループ志公会(麻生派)の政策提言を、所属議員との議論を踏まえて取りまとめました。安倍総理が総裁選挙への立候補を表明された翌朝、8月27日に安倍総理にこの提言を提出したところ、いろいろと報道でも取り上げていただき、また総理の演説でも我々が提言した趣旨を取り上げていただいていますので、若干日時は経過していますが、ここに報告させていただきます。
端的に言えば、この変化の早い時代にあって、変化に強い個人、企業を生み出せる政策をさらに進め、この環境に適した体制を作っていくことができるのかが重要であり、そのためには、世界におけるデータとルール、マネーの流れ(金融)の競争に勝てるように、さらにはイノベーションに重点を置いて、政策をさらに加速していく必要があるとの趣旨。その認識の下で、いかに我が国として世界のルール創りをリードする役割を果たしていくことができるのか、さらには外交にあっては、中国の脅威等を踏まえたとき、どのようにリアリズムに立脚した外交戦略を推し進めていくことができるか、という点を中心に提言したところです。
これに対し総理からは、「時代認識として変化が激しい時代、まさにゲームチェンジの時代だと考えている。その中で皆さんが指摘されたように、どのように世界のルール作りにおいて受け身ではなく主体的に関わっていけるか、先取りしていけるのか、が重要ということは全く同じ思いだ。そしてこの方向性は外交についても同様だと考えている。全体としてアベノミクスをさらにエッジを立てて進めていけという趣旨だと思うが、さらにイノベーションを加速するという方向に進んでいけるかが極めて重要だと考えており、しっかり進めていきたい。これからもしっかりと麻生派の皆さんと共に日本をこうした方向に進めていきたい」との趣旨の発言をいただきました。
志公会として、この申し入れにおけるやり取りを踏まえ、この政策提言を受け止めていただいたとの認識の下、麻生太郎会長が総裁選に臨む姿勢として、安倍総理(総裁候補)が引き続き政権を担うことを政策集団として支持する旨、決定したところです。
以下に提言の全文を掲載させていただきます。
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志公会政策提言
~「日本の底力」を解き放て~
これからの10年、世界は激動の時代を迎える。
あらゆる変化のスピード、先行きの不透明感は過去のどの時代よりも厳しく激しい。国内においても、従来の常識に囚われるのではなく、守るべきを守るために、勇気をもって自らを変革し時代に適合する、いや、一歩先を行くことが求められる。このような時代だからこそ、我々が、日本がここで勝ち切るために、政治が明確な軸を高らかに示す必要がある。今我々が成し遂げねばならないのは、真の意味での「戦後ニッポン」モデルからの脱皮であり、そのための改革である。
いまの世界においてはデータとルールを制する者が世界を制す。日本はあらゆる意味で圧倒的なイノベーション国家であるべきであり、自由で多様なオープンな国であらねばならない。そして、世界に先んじて、共通の基盤をつくる、価値を提供できるルールメーカーとなるべく、攻めの戦略を徹底するべきである。このような生態系、エコシステムこそが2030年に向けた日本の根本的な戦略であるべきだと考える。
スピード感を持った変化に強い「個人」「企業」なくして国際競争に勝つことはできない。また一歩進んで、変化を自ら起こし市場を創出し主導権を握ることができる「個人」「企業」をどのくらい生み出せるかの競争でもある。1960年代、70年代、80年代に成功したモデル、すなわち、「大企業」「長期雇用慣行と年功賃金」「画一性をもたらす教育」「おせっかいな肥大化した政府」に代表される大量生産・大量消費型社会モデルからの脱却を、多くの国は果たしつつある。我が国は今こそ、ここからの脱却、そして2030年の価値観を世界に向けて発信できる国に自らを変革していく必要がある。
同時に東アジアに地政学的に位置する日本は、安全保障・外交においてリアリズムに基づく外交を展開すべきである。そして、海洋国家日本として、開かれた自由なルールに基づく世界の実現のために、価値を共有する国々とともに価値・ルールを世界に対して発信する信頼される先端国家となるべきである。
その一方、真の保守という軸を打ち出すことも必要である。真の保守とは、額に汗して努力する人が報われる社会を大事にすることであり、誰にでもチャンスと場がある状況、すなわち真の多様性を一人ひとりが活かしていける環境を社会全体で守ることである。我々が目指すべきは、何度でも挑戦できる、「個の強さ」と可能性を活かす「自由」に立脚したダイナミックな、かつ人と人のつながりによりお互いを有機的に高めあう社会である。文化や芸術による人としての深みも忘れてはならない。フェアな競争と、強さと深みを兼ね備えた人材こそがそのカギとなる。
「強くなければ生きていけない、やさしくなければ生きている資格がない」。国も同様である。自助・自立・自律を原則とし、自由競争により一人ひとりが持てる力を充分に発揮できる日本を実現するとともに、すべての人に居場所と力を発揮できる場所があり、何度でも挑戦できる懐の深い日本。それが我々が理想とする日本である。
志公会は、時代を先導する政策集団として、日本の底力を信じ、誰にでもチャンスがある開かれた活力みなぎる日本を実現すべく、以下を提言する。
1. 地球大の視点を持った未来志向の構造改革
-労働改革(脱年功賃金、流動性、多様性(女性・障がい者・高齢者・外国人))
~何度でもチャレンジできるオープンで自由な競争社会~
-真の民間が主導する成長実現のための新陳代謝
-イノベーションを連続的に発生させるシステムづくり
2. 国際競争に打ち勝つための基盤強化
-知財・IT技術等の技術・人的基盤及び国の司令塔機能強化
-国際標準・規格・ルールづくり
~データとルールを制する者が世界を制する~
3. 外交安保戦略・新“自由と繁栄の弧”(リアリズムと価値観外交)
-東アジア西太平洋における日米同盟を基軸にしたリアリズム外交
-「ルールに基づく自由で開かれたインド・太平洋」の加速
– TPP、FTAAP、日EU等、開かれた自由貿易システム・ルールの構築
-朝鮮半島問題・台湾海峡問題・一帯一路問題・東シナ海及び南シナ海・サイバー等の問題への対応
4. グローバルな課題でのリーダーシップ
-気候変動、SDGs等の地球規模の課題における国際ルールづくり
-資本市場・国際税制・長期リスク評価(非財務・ESG)
~カネのグローバルな流れを引き寄せる国際金融戦略~
-保健・医療・福祉に関し、比較優位性のある分野での国際ルールづくり
5. 変化に強い機動的な政府(官と民のあり方)
-官の役割の再定義
~真の司令塔としての政府実現のための「選択と集中」~
〜大胆な民間資金活用による社会保障、社会資本整備への転換により将来の国民負担を抑制~
~多様な主体が担う新時代の行政(Small Government Big Society)~
-イノベーションを生み出す官のエコシステム
(予算→減税、国際ルール、ハードロー/ソフトロー)
-依存でなく経営する地方自治
-将来的な税源移譲及び地方交付税等、国目線の財源調整システムの見直し。
-広域・基礎自治体のあり方
-地域の強みを活かしたテクノロジーへの投資、稼げる農業モデルなど地域の経営資源を伸ばす自治体経営
6. 災害対策
- 被害を最小限に抑える自然災害対策でくらしを守る
~ハード、ソフトの有機的連携~
- 災害対応緊急体制の効率性を上げるための恒常的見直し
- 地震や津波、豪雨災害等の新常態に対応したスマートインフラ
- 国民負担でなく民間資金でインフラ整備できる枠組みの構築
7. 現実的な中長期エネルギー戦略
3E+Sの考え方の下で、20年後を見据えたエネルギーミックスの構築
-洋上風力・地熱を中心とした再生可能エネルギー導入を加速
-原子力発電に関しては、安全性を確認したものの再稼働と老朽施設のリプレースを検討
-化石燃料については、石炭発電は原則フェードアウトし、天然ガスを中心に高効率化を推進。その際コストの観点からハブの創設等を検討
8. 真に豊かな人づくり
-全世代を通じた教育
-幼児教育からリカレント教育まで、政策の中での位置づけを明確化
-大学改革:教育、研究双方の拠点となるための改革加速。
~高等教育とともに大学起点のイノベーション加速。運営→経営~
-こども子育てへの優先投資
-寿命と健康寿命を近づけることで、QOLを上げ「生涯現役」を実現
-文化・芸術、ソフトパワー
~感性、倫理、情を含めた立体的な人づくり~
9. 次の30年を見据えた地域のあり方
-「東京か地方か」でなく、「東京も地方も」
~強み、特色を生かした「違い」で選ばれるまちへ~
- 被害を最小限に抑える自然災害対策でくらしを守る
~ハード、ソフトの有機的連携~
10. 世界中から人を惹きつける日本に
– インバウンドの加速
観光・文化資源の戦略的活用及び体制強化も含めた環境整備
高付加価値戦略の徹底
→ビジネス、スポーツ、アート、エンタメ、食、医療、旅館
– ビジネス拠点、医療拠点、金融ハブ機能の強化によりアジアのセンターを奪還
11.現実的な憲法改正の早期実現
- 2019年夏の参議院選挙までに憲法改正の国民投票を実施する。そのための環境整備を全力で進める。
志公会、常に国民とともに。
「やれることは全てやる」。そして日本の輝く未来へ
編集部より:この記事は、自由民主党青年局長、衆議院議員の鈴木馨祐氏(神奈川7区)のブログ2018年9月9日の投稿を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「政治家 鈴木けいすけの国政日々雑感」をご覧ください。