安倍首相は憲法改正に熱心だがなかなか道は険しい。しかし、「もとより戦後70年、わが国が堅持した平和主義の基本理念は今後も変わることはないが、憲法にわが国の独立と平和を守る自衛隊を明記し、違憲論争に終止符を打つことは今を生きる私たちの責務だ」と首相がいうのはもっともだ。
そこで、安倍首相がいうような通常国会で一気に是非を問うというのは難しいというなら、このような妥協案はどうだろうか。公明党や健全野党が軸になって進めて欲しいものだ。
第一は、こんどの通常国会では採決はしないという条件で、とりあえず、具体的な改正案を俎上に上げて議論だけすることだ。
第二は、憲法改正はとりあえず見送るが、そのかわりに、国会決議で、自衛隊や安保は違憲ではないということと、具体的にどうすべきかという決議をすることだ。そして、それに基づいて、教科書など教育現場で自衛隊合憲を前提とした教育をすること、地方自治体が自衛隊の活動に協力すること、天皇陛下が観閲を行い、皇族が短期でも入隊するなど国家元首にふさわしい関わりをすることなどなどしてはどうだ。
なお、3月の自民党大会では党憲法改正推進本部がまとめた「自衛隊の9条への明記」「教育の無償化・充実」「緊急事態対応」「参議院の合区解消」の4項目の改憲条文のイメージ案が報告されている。
また、石破茂氏は憲法改正についても、「国民投票で51:49は避けるべき。6割7割賛成をいただきたい。国会で2/3を取っただけではダメ」といっているが、これも、おかしな発言だ。
現在の憲法の最大の欠点は硬性憲法すぎることだ。それはある世代の意見をのちの世代に押しつけることになっている。その厳しすぎる規定をさらに勝手な忖度で厳しくするのはなんの正義もない。
国民投票で否決されるリスクを避けたいという党派的な思惑なら理解できるが、それならそういえばよい。その場合でも、「だいたい、確実に勝てるという見通しがないと」とかいうに留まるべきで、国民の3分の2ほどが投票で賛成しないといけない」というのはまったくどうかしている。それは、国民の意思が否定されるということで、民主主義とはもはやいえない。