8月に中米のエル・サルバドルが台湾と国交の断絶を決め、中国と国交の樹立をした。これによって、中米8カ国(グアテマラ、ベリーズ、ホンジュラス、エル・サルバドル、ニカラグア、コスタリカ、パナマ、ドミニカ共和国)は台湾と中国による勢力が二分したことになる。
台湾と国交を持つグアテマラ、ベリーズ、ホンジュラス、ニカラグアと中国と国交を持つエル・サルバドル、コスタリカ、パナマ、ドミニカ共和国と勢力が二分したのである。2007年にコスタリカが台湾から中国に移るまで、この8か国は全て台湾と国交を結んでいた。
コスタリカが台湾との60年の外交関係に終止符を打って中国と国交を結んだ理由は当時のアリアス大統領が指摘しているが、それは政治イデオロギーからではなく、現実主義の観点からより規模の大きな経済の発展を望んだからである。
その後、中国は台湾の前に近隣諸国の切り崩しにかかったのである。先ず、2017年にパナマそして2018年には先ずドミニカ共和国、その後エル・サルバドルとの国交を開設したのである。
そして次に征服を目指しているのがグアテマラだとされている。それを裏付けるかのように、米国のマルコ・ルビオ上院議員が8月30日のツイートで、グアテマラのジミー・モラレス大統領に台湾から中国に移るようにプレッシャーがかかっていると訴えたことが、現地紙『PRENSA LIBRE』を始め数紙が報じたのである。
同上院議員によると、モラレス大統領にプレッシャーを掛けているのは大統領と近い間柄にある複数の人物だというのである。
ルビオがそれを今回ツイートで訴えたのも、先月8月に起きたエル・サルバドルが台湾と断交して中国と国交を結んだのと同じようなことが起きないようにするためだとしている。
それに対して、モラレス大統領の報道官アルフレド・ブリトは、そのようなプレシャーの存在を否定。そして、「台湾とは政治的、経済的、外交的に良好な関係を維持している」と確言した。
更に、ルビオはエル・サルバドルは近く米国からの支援を失うことを表明し、グアテマラ政府はエル・サルバドルが歩んだ道を辿る考えがないことをルビオに確約したという。
ルビオも含め多くの関係者が懸念しているのは、中米統合機構(SICA)に先述した8か国が加盟しているが、この機構の中で中国と国交がある4か国を介して<中国がこの機構の中で影響力を発揮>して台湾と国交を結んでいる他の4か国を支配しようとする動きを見せるかもしれないということなのである。
8月にエル・サルバドル、ホンジュラス、グアテマラを歴訪した米国のウイル・ハード下院議員は、この地域における中国は進出しても雇用は生まないことを強調しながらも、中国が交渉力において支配するようになっていることを指摘している。また、米国と共通の目標を持たない政治を行おうとしている場合は、大使レベルでその為の資金支援を打ち切ることができるような権限が付与されているようにすることが必要だとしている。また移民問題についてトランプ大統領の家族を引き離そうとする方針もこの地域との関係悪化を生んでいるとしている。
一方の台湾は中米諸国に高度のテクノロジーなど質の高い支援を提供できることを強調している。また、台湾は中米統合機構に協力して1992年から120以上のプロジェクトに協力しているとしている。
また、フエゴ山の噴火では被災者に10万ドル(1100万円)の義援金を提供している。今年2月には台湾から輸入業者そして3月には輸出業者がグアテマラを訪問して貿易取引の伸展に努めてている。
モラレス大統領の任期は残り30カ月であるが、ここに来て米国からも信頼を失うような出来事が起きている。モラレス大統領の弟サムエル・エボラルド・モラレスと彼の息子のひとりホセ・マヌエル・モラレスが関与してモラレス大統領の選挙資金に不正があったとしてこの二人に対し取り調べが行われた。モラレス大統領もこれに関与しているとして彼を取り調べできるように国連直属の「免責に対する国際委員会(CICIG)」は大統領から不逮捕特権を解除することを要請している。
これには議会の承認が必要であるが、モラレス大統領はCICIGの行動を牽制すべく、2020年1月まで契約しているCICIGとの契約を更新をしないと発表したのである。それが意味するものは、今後のグアテマラでの司法国家としての国際的信頼を失うことを意味するのである。
CICIGはスウェーデンを始め米国、カナダ、ドイツ、イタリア、スペイン、フランス、スイス、英国が資金援助をしている。
ところが、マルコ・ルビオ上院議員が主導して米国はこの支援金600万ドル(6億6000万円)を凍結させていたが、最近解除したばかりであった。凍結させた理由は、グアテマラに在住しているロシア人家族への判決にロシアがCICIGに偽造証拠を提供して干渉していたという情報を米国が掴んだからであった。グアテマラの司法体制の独立を擁護する米国はロシアの干渉を容認できなかったからである。その後、それが解明されて米国はCICIGへの同支援金の凍結を解除したばかりであった。
そこに、今度はモラレス大統領がCICIGとの契約を更新しないと発表したのである。グアテマラでの司法制度の確立を支援し、またモラレス大統領を支持して来たルビオ上院議員にとってモラレス大統領の今回の決断は容易には受け入れられないところである。