昨日内閣府から発表された今年7~9月期のGDP速報値は、物価変動の影響を除いた実質値で前期比0.2%減、年率換算だと0.8%減と、二期連続のマイナスとなりました(名目GDP成長率は0.0%で横ばい)。
企業の設備投資と個人消費の回復が遅いのが主な理由。その原因として、中国経済の減速や賃金の伸び悩みがあげられています。
今回の四半期別GDP速報は、アベノミクス「新三本の矢」が掲げられてから初めてのものですが、先行きが暗いものになってしまいました。数値目標として掲げたGDP600兆円は「毎年3%以上の成長が続けば」と前置きが付けられていますが、夢のまた夢という感じがしてしまいます。
しかし、安倍総理が具体的な成長率に言及しているのは、根拠があるからとも言われています。2016年末に予定している推計方法の見直しです。これにより3%半ば前後のGDP増加が見込めるとされています(すでに国連の新基準に移行しているアメリカでは02~12年の値が3.0~3.6%増えました)。
そもそも、推計方法の見直しで表向きの数字が改善しても・・・という議論は置いておいたとしても、日本においては約1.5%程度の押し上げ効果しかなく、名目3%成長の想定はいずれにせよ無理だとの指摘もあります。
やはり、抜本的な成長戦略がないと高成長の実現は不可能です。目標達成のためには、毎年10兆円超の設備投資増と3%程度の賃上げはどうしても必要となってきます。
設備投資を増やすには「将来に渡って日本の景気がよくなる」か「投資をしたらお得」というマインドを経営者に持ってもらうしかありません。そして、今のような状況では前者は難しいので、後者を喚起する必要があります。
「お得」を感じてもらうにはインセンティブを出す必要があります。
そこで、このタイミングでもう一度提案したいのが「自由償却制度」です。
これは税制上の償却期間を事業者が自由に決められる制度で、現在利益を出している企業が投資をする場合は「一括償却」も可能にする仕組みです。
ここ1,2年、多くの大手企業は過去最高益を出しています。一括償却ができるのであれば、それを活用したいと思う経営者は多いはずです。翌年から経常利益が大幅に改善されるという説明が説得力をもってなされることによって、株価にもプラスに働きます。
自由償却税制が実現できれば、設備投資が今後数年間、大幅に伸びるのは間違いありません。そして、その多くが生産「量」を増やすためだけのものではなく、生産性を高めたり、環境も含め、次世代の技術革新につながるものになるはずです。
昨日、甘利大臣が補正予算について言及しました。
国会も開催されない中では、どのようなものを考えているのかを確認することもできませんし、提言もなかなかできません。
TPPに絡んで小泉さんが部会長を務める農林部会も注目されているところですが、今までのような「バラマキ」(特に参院選の直前ですので)にならないよう、注視していく必要があります。
過去のやり方、選挙に勝つためのやり方を変えて、ドラスティックなことにチャレンジしないと日本はずるずる沈みゆくだけです。
編集部より:この記事は、タリーズコーヒージャパン創業者、参議院議員の松田公太氏(日本を元気にする会代表)のオフィシャルブログ 2015年11月17日の記事を転載させていただきました(画像はアゴラ編集部)。オリジナル原稿をお読みになりたい方は松田公太オフィシャルブログをご覧ください。