公益財団法人 東日本不動産流通機構が運営するWEBサイト「REINS TOWER」によると、東京都区部の中古マンションの1平米あたりの成約価格(平均)は、2018年7月期~9月期で766,200円と好調を保っている。リーマンショック前の2007年度の1平米あたりの成約価格(平均)が592,200円なので、東京都区部の中古マンション価格はかなりの値上がりが続いているといってもいいだろう。
このような状況のなか、複数の経済誌や多くのエコノミストたちは、不動産相場の行き先をアナウンスすることに躍起である。
そのなかでも、「いま買うべきではない」というアナウンスに見かける意見の多くには、「消費税増税後の景気動向を見極めるべき」だとか、「2020年までは待つべき」などの意見や、なかには「次の不況期には価格が下がるのでそれまで待つべき」という意見まである。
不動産を「住まい」として購入する場合に、「不況が来てから家を買え」とか「不況が買い時だ」などといわれても、投資家以外は戸惑うばかりである。
ただ、不動産の買い時については様々な意見があっていい。
人それぞれの立場や用途などによってその買い時は変化するし、将来の不動産相場を確実に予想することなど誰にも出来はしないのだ。
しかし、経済を筆頭とした様々な価値観がグローバル化し、今後はさらに「都市間競争力」の重要性が高まっていくといわれるなか、その都市の不動産がグローバルな目線で「高いのか安いのか」を知ることは、その都市にヒト・モノ・カネ・情報を集める「磁力」があるかどうかを知る指標となるだけではなく、その都市の「将来の不動産相場動向」を予想するうえでも大事な指標となるだろう。
都市の磁力を測る指標として毎年公表されている「世界の都市総合力ランキング」が、今年も10月18日に公表された。これは、一般財団法人森記念財団 都市戦略研究所(所長:竹中平蔵)が2008年より調査・発表しているもので、世界の主要44都市を対象にしたものだが、このなかで東京は3年連続で3位を保っている。
このランキングではロンドンが7年連続で1位、2位がニューヨーク、4位にはパリと続く。この4都市の不動産相場を一義的に同列で比較することは出来ないが、各都市の不動産相場を少しだけ紹介したい。
公益社団法人 日本不動産鑑定士協会連合会が2013年12月に公表した「世界地価等調査結果」によると、東京の集合住宅(マンション)の価格指数を100とした場合、ニューヨークの住宅価格指数は520.9であり、ロンドン300.8、パリは373.1である。(※OECD購買力平価換算)
これをみれば、為替や調査誤差を考慮しても世界の都市力総合ランキングベスト4都市のなかで東京の住宅価格(マンション)がかなり「低い」ことが分かるだろう。
だからといって、筆者は東京の不動産が「安い」というつもりはない。
不動産に限らずその「モノ」が高いか安いかは、その時々の社会情勢や経済情勢を踏まえた「国や地域の主観的な価値観」がその価格に反映するものだからだ。その証左として記憶に新しいのは、日本ではバブル崩壊後しばらくの間、利回りが10%を超える収益物件が市場に溢れていたことが挙げられる。もちろん今となっては考えられない状況だ。
ただ、日本国内において東京の不動産をどう評価しようとも、都市間競争力の重要性が増すなかにおいて、世界中の人たちはグローバルな視点で東京の不動産を評価していることだけは覚えておきたい。